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変形性膝関節症の予防を考える上ではmodifiable factorに注目せよ!
理学療法士が変形性膝関節症の進行予防を目的としてさまざまな運動療法や物理療法を行う機会は多いと思います.
変形性膝関節症も末期まで進行してしまうと,保存療法では症状の寛解は困難なことが多く,最終的には人工膝関節全置換術をはじめとする手術療法の適応となります.
われわれ理学療法士としてはできるだけ変形性膝関節症の発症を予防する視点が重要となります.
変形性膝関節症の進行予防を考える上では,どのような要因が変形性膝関節症の発症と関連するのかを把握しておくことが重要です.
また変形性膝関節症の発症に影響を与える要因の中には,変化させることが難しい要因と理学療法介入や生活習慣の改善によって変化させることが可能な要因(modifiable factor)に分類されます.
例えば年齢が変形性膝関節症の発症と関連するといったことが明らかになったとしても,われわれはドラえもんではありませんので対象者の年齢を若くすることはできません.
そういった意味で理学療法介入や生活指導で変化させることが可能な要因に着目することは予防を考える上で非常に重要であると考えられます.
今回ご紹介する論文では変形性膝関節症の発症に関連するmodifiable factorを明らかにすることを研究目的としております.
今回ご紹介する論文
Maturitas. 2019 Oct;128:53-59. doi: 10.1016/j.maturitas.2019.06.013. Epub 2019 Jul 25.
Modifiable factors associated with symptomatic knee osteoarthritis: The Murakami cohort study.
Takiguchi R, Komatsu R, Kitamura K, Watanabe Y, Takahashi A, Kobayashi R
今回ご紹介する論文は2019年10月に掲載された新しい論文です.
本邦で行われた研究です.
研究の目的
Modifiable risk factors for knee osteoarthritis (OA) have not been studied in detail. This study aimed to determine lifestyle-related modifiable factors of symptomatic knee osteoarthritis in an East Asian population.
これまで変形性膝関節症例のmodifiable factorについては詳細には明らかにされておりませんでした.
この研究では東アジアに居住する住民を対象として,変形性膝関節症の発症と関連する要因の中でも,生活習慣に関連するmodifiable factorを明らかにすることを目的としております.
研究デザイン
This 5-year cohort study involved 11,091 individuals (age range 40-72 years) living in the Murakami region of Niigata, Japan, who did not have a history of knee OA. At baseline, information on sociodemographic characteristics, body size, lifestyle, and living condition was obtained using a self-administered questionnaire.
研究デザインは5年間にわたるコホート研究となっております.
対象は新潟県に在住する住民のうち変形性膝関節症の既往の無い11,091例(40~72歳)となっております.
ベースラインにおいて社会的・人工統計学的特性,身体計測,生活習慣,生活状況を自己式の調査票を用いて調査しております.
主要アウトカム測定
Incident symptomatic knee OA observed at hospitals and orthopaedic clinics in the five years to 2016. Clinical grades of knee OA were based on the Kellgren-Lawrence scale. P for trend was assessed to examine linear associations between predictors and the outcome in multiple logistic regression analysis.
変形性膝関節症発症については病院または整形外科クリニックにて診断が行われております.
変形性膝関節症発症の評価にはKellgren-Lawrence分類が用いられております.
最終的に変形性膝関節症発症に関連する要因をロジスティック回帰分析を用いて抽出しております.
研究の結果
The mean age of participants was 58.1 (SD 9.3) years. The number of cases of grade 2 or more incident knee OA was 429. In men, older age (P for trend < 0.0001), higher BMI (P for trend < 0.0001), higher METs score (P for trend = 0.0150), less smoking (P for trend = 0.0249), and lower green tea consumption (P for trend = 0.0437) were associated with incident knee OA. In women, older age (P for trend < 0.0001), higher BMI (P for trend < 0.0001), and alcohol consumption (P = 0.0153) were associated with incident knee OA.
対象者の平均年齢は59.1歳でありました.
グレード2以上の変形性膝関節症を発症した症例は429例でありました.
男性においては,高齢,BMI高値,MET高い,非喫煙,緑茶の摂取量が少ないといった要因が変形性膝関節症の発症と関連しておりました.
女性においては,高齢,BMI高値,アルコール摂取量が多いといった要因が変形性膝関節症の発症と関連しておりました.
研究の結論
Several lifestyle-related factors were found to be associated with incident knee OA and exhibited sex-dependent differences. In particular, higher consumption of green tea was associated with a lower incidence of knee OA in men.
性別によって異なる変形性膝関節症発症に関連する生活習慣に関連した要因が明らかとなりました.
男性においては緑茶の摂取が変形性膝関節症発症と関連しておりました.
今回は,変形性膝関節症の発症に関連するmodifiable factorを明らかにした研究をご紹介させていただきました.
特に男性においては緑茶の摂取によって変形性膝関節症発症を予防できるというのは興味深いですね.
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