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SpO2 98%以上で問題無いと考えるのは非常に危険
経皮的酸素飽和度SpO2は理学療法士・作業療法士がリスク管理を目的として行う評価の代表的なものです.
血圧なんかもそうですが,このSpO2の本質を正しく理解していない理学療法士・作業療法士が多いのも実際です.
今回はSpO2 98%であれば問題無いといった解釈が非常に短絡的であり,非常に危険であるといったお話です.
SpO2とSaO2の違い
まずは基本的なところですが,動脈血酸素飽和度にはSpO2とSaO2の2つの表記があります.
SpO2にしてもSaO2にしても,血液の中でヘモグロビンが酸素と結合している割合をパーセンテージ化して示したものです.
まずSaO2というのは,動脈血ガス分析値から計算で求めたり,COオキシメーターで直接測定されたものです.
一方でSpO2は,理学療法士・作業療法士が使用することの多いパルスオキシメーターで測定したものになります.
SpO2はパルスオキシメーターを使って計測しているわけですが,脈拍による透過光の変化を指先の毛細血管でみたものになります.
非常に簡単な測定方法のため,臨床現場ではかなり重宝されておりますが,SaO2に比較すれば正確性を欠いた指標であることは間違いありません.
末梢循環障害がある場合や,爪の部分の汚れなどによっても影響を受けてしまいます.
もちろんネイルなんかをしているとうまく測定できませんし,太陽の光の下で測定をするとパルスオキシメーターから発光される赤色光と赤外光に干渉してしまいますので,日陰で測定することが必須となります.
SpO2の目標値は?
まずSpO2というのは酸素化が不良になったことを判断できる指標です.
パルスオキシメーターでは高酸素血症については評価ができません.
高酸素血症を考慮する必要があるのは,酸素を吸入しているクライアントです.
ただ考えてみると酸素吸入をしているクライアントこそ,パルスオキシメーターを使用して酸素飽和度を測定することが多いと思います.
酸素療法では,PaO2を60mmHg以上であるSpO2を90パーセント以上が目標とされることが多いです.
98%以上ではないのです.
実はSpO2が98%以上ということは,PaO2でいうと150〜500Torrとかなりの幅があるのです.
つまりSpO2が98%以上の際には,酸素分圧が丁度良い100Torrの場合もあれば,高酸素状態である500Torrの場合もあるということです.
高酸素状態が続くと酸素中毒により肺傷害に陥る可能性考えられます四,CO2ナルコーシスからアシドーシスになる可能性もあります.
したがってパルスオキシメーターが示すSpO2のみで判断をするのではなく,その他の自覚症状,呼吸数,呼吸パターン,意識状態,循環動態等を総合的に見ながら判断を行う必要があります.
可能であれば定期的に動脈血ガス分析でSaO2を測定することが望ましいわけです.
SpO2だけでなく呼吸状態の観察が重要
ではわれわれ理学療法士・作業療法士はどうすればよいのかという話になりますが,呼吸状態をしっかりと観察することが重要です.
呼吸の評価を行う場合には,まずパルスオキシメーターを用いてSpO2を測定することが多いと思いますが,パルスオキシメーターでSpO2が95%以上であっても,安心はできません.
血中酸素濃度を維持するためには,人間はまず呼吸数を多くして代償します.
当然ながら呼吸数が40回でSpO2を維持している場合と呼吸数が20回でSpO2を維持しているのでは雲泥の差です.
呼吸数で代償された血中酸素濃度を見逃しかねません.
SpO2が低下してくるのは,呼吸数で代償できなくなってからです.
そのためまずは呼吸数をチェックして,代償的にSpO2を維持しているか,正常な呼吸数でもSpO2を維持できているのかを確認しましょう.
今回はSpO2 98%であれば問題無いといった解釈が非常に短絡的であり危険だといったことを述べさせていただきました.
理学療法士・作業療法士が適切なリスク管理を行うには,パルスオキシメーターの数値だけに頼らずに,しっかりと呼吸状態を観察することが重要です.
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