テープで手術の傷口を縫合できる?

人工膝関節全置換術
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目次

 テープで手術の傷口を縫合できる? 

整形外科手術の技術も年々進歩しております.

私が理学療法士として入職した当時は創部を糸で縫って術後10日~14日を目安に抜糸をするというのが一般的でした.

それから数年してホッチキスによる縫合という時代もありましたね.

ホッチキスで縫合するなんてとても痛そうだなといった印象を持っておりましたが,ここ数年は吸収糸による創部の縫合が一般的となっており,いわゆる抜糸というのは少なくなっております.

今回は針や糸を使用することなく,テープで手術の傷口を縫合ができる日が来るかもといったお話です.

flat lay photography of three white yarn balls

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回ご紹介する論文 

Dry double-sided tape for adhesion of wet tissues and devices

Hyunwoo Yuk, Claudia E. Varela, Christoph S. Nabzdyk, Xinyu Mao, Robert F. Padera, Ellen T. Roche &Xuanhe Zhao

Nature volume 575, pages169–174(2019)

今回ご紹介する論文は2019年に報告された新しい論文です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回ご紹介した論文の主旨 

今回ご紹介する論文は,米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学・土木環境工学准教授のXuanhe Zhao氏による論文です.

この論文では,創部の縫合処置に用いる医療用両面テープを開発し,動物実験でテープを貼ると傷口の組織が数秒で接着するという有望な結果が得られたと報告しております.

掲載された雑誌が天下のNatureですから,非常に話題となっております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 創部の針と糸による縫合 

世界で行われる外科手術は年間2億3000万件以上に上り,その多くでは傷口を縫合糸で縫い合わせる処置が施されます.

近年用いられることが増えている,吸収糸であっても,針と糸を用いて縫合していることになりますので,組織にストレスが加わりますし,感染症や疼痛,瘢痕の原因となることがあります.

実際に理学療法を行っていても,創部の瘢痕化により皮膚や皮下組織の伸張性および滑走性が低下し,関節可動域制限が生じる症例というのは非常に多いと思います.

このテープによる縫合というのは,縫合糸とは根本的に異なりますので,感染症や疼痛,瘢痕が生じにくいわけです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どんなテープが使用されているの? 

このテープの特徴ですが,両面テープとなっております.

生体高分子(ゼラチンまたはキトサン)とポリアクリル酸から構成されており,クモが濡れた状態の獲物を捕らえるのに用いる粘着性物質に着想を得て開発されております.

この研究の中では,マウス・ラット・ブタの組織を使った実験を行った結果,傷口に両面テープを貼ってから5秒以内に肺や腸などの組織はしっかりと接着することが明らかにされております.

外科用縫合糸は,一部の組織の縫合には適さず,患者によっては合併症を引き起こすこともありますので,この縫合糸が縫合糸に代用される日が来るかもしれません.

またこの両面テープの特徴は組織が接着するまでの時間です,5秒と非常に短時間で接着しますので,手術中の使用にも非常に有益であると考えられます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 臨床応用は? 

実際のところは臨床応用はまだまだ先になると思われます.

今後も動物実験を繰り返し,テープの可能性を探っていく必要があります.

その上で基礎研究によって合併症の有無等を確認した上で,ヒトに対する臨床試験を経て臨床応用ということになりますのでまだまだ先が長い話ではあります.

 

今回は針や糸を使用することなく,テープで手術の傷口を縫合ができる日が来るかもといった論文をご紹介させていただきました.

整形外科手術後のリハビリテーションに携わるわれわれ理学療法士・作業療法士としても,今後の両面テープによる接着研究から目が離せませんね.

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