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理学療法士の雇用も減る?病床削減に向けた新たな展開
以前から厚生労働省の地域医療構想の中では現状の病床数の削減というのがうたわれております.
これだけ社会保障費が国の財政を圧迫している状況ですので考えてみれば当然かもしれません.
ただ考えてみると病床数が削減されれば,それだけ医療機関において理学療法士の対象とするクライアントの数が減ってしまうことになりますので,理学療法士の仕事も減ってしまい,雇用も減ってしまう可能性が考えられます.
今回は先日国が提示した病床削減に向けた新たな方針についてご紹介させていただきます.
病床削減に向けた新たな展開
2020年度の予算編成に向けて,2019年12月17日に加藤勝信厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣が折衝を行いました.
この中で,医療法上の病床について稼働病床数ベースで1割以上の削減を行った病院に対し「将来,当該病床を稼働させていれば得られたであろう利益」の補助を全額国費で行うことが発表されました.
これによって全国での病床数削減を狙う政策誘導です.
このために国費84億円が2020年度予算に計上される予定となっております.
病床数の削減
以前から国の掲げる地域医療構想の実現に向けて病院の機能分化(高度急性期・急性期・回復期・慢性期等)や病床数の削減が目標として挙げられておりましたが,なかなか前向きに進んでないといった実情もありました.
特に病床削減に関する基金は「国費3分の2」「都道府県3分の1」という財源構成となっており,例えば「病床を削減をしたいがそれには3億円が必要である」という医療機関があった場合には,単純に都道府県が1億円を負担する形になりますので,都道府県の財政状況によっては「基金の活用」を勧められないケースがあったわけです.
こういった問題を解決するために,「病床数の削減」に着目した補助を全額国費で実施することが必要(都道府県の財政状況等によらず補助が行われる)と考え,2020年度予算に84億円を計上することとしたものです.
具体的にはどのくらいの補助になるのか?
具体的には,医療法上の病床(急性期病床に限らず)について稼働病床数ベースで1割以上の削減を行った病院に対し,「将来,当該病床を稼働させていれば得られたであろう利益」(逸失利益)を補助するものです.
逸失利益が補助されますので,ベッドを多く削減すれば,その分補助される金額も大きくなります.
現状では以下の3パターンが想定されております.
①個々の病院でベッド数を1割以上削減した場合(300床の病院が270床以下に病床削減する場合)
②複数の病院が合併し,ベッド数を1割以上削減した場合(200床の病院と300床の病院が合併し,450床以下の病院とする)
③重点地域(国が医療提供体制の再編に向けた直接の指導を行う地域)においてベッド数を1割以上削減した場合(重点地域に存在する100床の病院が90床以下に病床削減する)
気になるのは補助率はどの程度になるのかといった点です.
逸失利益というのは一つのキーワードにはなっておりますが,すべてが補助されるのか一部にとどまるのか,逸失利益をどう把握するのか,稼働病床をどう定義するのかなど不明な点がまだまだ多い状況です.
ちなみに医療法上の病院病床から介護医療院への転換は補助の対象外となるようです.
また最も大きなポイントは,この補助は2020年度限りとなり,2021年度以降は「消費税財源を用いた病床ダウンサイジングを支援する新たな仕組み」が創設される見込みです.
理学療法士にとっては
国費を利用した病床削減に手挙げをするかどうかについては,現状では地域の状況をふまえながら各医療機関にゆだねられているところでありますが,理学療法士にとっても所属する医療機関がどういった対応をするのかの情報を得ておいた方がよさそうですね.
先日の424病院の発表といい,今回の病床削減といい,本当に医療機関に就職すれば理学療法士は安泰だといったような時代は終わりましたね.
こういった国の方針を考慮した上で,自身のキャリアを考える必要がありますね.
今回は先日国が提示した病床削減に向けた新たな方針についてご紹介させていただきました.
2020年度までにこの病床削減に関する話題にも注目しておく必要がありそうですね.
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