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現状の美味しすぎる地域包括ケア病床制度にメスが入れられる?
地域包括ケア病床といえば1日当たりの入院料が25,000円をこえるところも多く,多くの急性期医療機関が地域包括ケア病棟入院料を算定しております.
一般的に多い形式としてはDPCにおける入院料が地域包括ケア病棟の入院料を下回った段階で,自院の一般病床から地域包括ケア病床へクライアントを転棟させるといったやり方です.
経営面を考えると美味しすぎた地域包括ケア病床ですが,来年度の診療報酬改定でこの地域包括ケア病床にもメスが入れられようとしております.
今回は来年度の診療報酬改定で地域包括ケア病棟がどのように変わるのかについて考えてみたいと思います.
自院の一般病床からの転棟が多すぎる
2019年12月6日に行われた第439回中央社会保険医療協議会総会では,200床以上病院の地域包括ケア病棟における「自院の一般病棟からの転棟割合」が異常に高いことが指摘されております.
厚生労働省の特別調査によると,63.8%の病院では地域包括ケア病棟を「自院の急性期病棟からの転棟先」として活用している状況であります.
また地域包括ケア病棟入棟患者の100%が「自院の急性期病棟からの転棟患者」という病棟が相当程度あることも明らかにされております.
そのため,来年度の診療報酬改定では,200床以上の病院に設置した地域包括ケア病棟では,自院の一般病棟からの転棟割合に制限(上限)を設ける案が浮上しております.
上限を超過した場合には,超過分の転棟患者は特別入院基本料(5,000円程度)を算定することになり,経営的に大きなダメージとなります.
こういった制度を新設して,在宅や他の医療機関といった自院の一般病棟外から地域包括ケア病棟への転棟を促す政策誘導が行われそうです.
DPC病棟から地域包括ケア病棟への転棟
DPC病棟から地域包括ケア病棟への転棟とDPC点数と地域包括ケア病棟入院料点数との関係を見ると,DPC点数<地域包括ケア病棟入院医療管理料となった時点で,DPC病棟から地域包括ケア病棟への転棟が集中していることも明らかにされております.
DPCの点数<地域包括ケア病棟入院料となったタイミングでの転棟が極めて多いわけです.
クライアントの病状に応じて転棟させているというよりは,経営的な視点で入院料が高くなるようにベッドコントロールをしているということが明らかにされたわけです.
クライアントが回復し転棟できるようになったタイミングと点数の高低が入れ替わるタイミングが完全に一致するというのは考えにくいので,DPCよりも地域包括ケア病棟の点数が高くなったタイミングで,クライアントの状態と関係なく転棟させている可能性があると,中医協でも議論が行われております.
地域包括ケア病棟の旨味
地域包括ケア病棟の活用は急性期医療機関にとっては本当に都合のよいものでした.
一般病棟では急性期一般1(旧7対1)の重症患者割合(重症度,医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合,看護必要度Iでは30%以上)を満たすために,一部の病棟を地域包括ケア病棟に転換し,看護必要度を満たさなくなった患者を地域包括ケア病棟へ転棟させる」といった方法で,看護必要度の基準を満たしつつ,DPCよりも高い入院料を取得できるといった,旨味ばかりの病棟制度でした.
来年度の診療報酬改定
まだ今後協議が勧められる予定ではありますが,来年度の診療報酬改定では何かしらの形で地域包括ケア病棟にメスが入れられることには間違いありません.
現在のところ,自院からの地域包括ケア病棟への転棟に関して制限を設ける医療機関を,200床以上の医療機関とするか,400床以上の医療機関とするかについては協議が進められております.
またDPC病棟から地域包括ケア病棟へ転棟した場合にも,地域包括ケア病棟の入院料ではなく,DPC点数の算定を継続するといった案も出されております.
さらに地域包括ケア病棟の1つの機能として掲げられている,自宅等からの入院患者受け入れ割合,自宅等からの緊急入院患者数,在宅医療等の提供実績なども地域包括ケア病棟の評価に含められる可能性が高いです.
今回は来年度の診療報酬改定で地域包括ケア病棟がどのように変わるのかについて考えてみました.
地域包括ケア病棟で勤務する理学療法士・作業療法士の方も多いと思いますので,今後の動きに注目しておく必要がありそうですね.
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