新たな理学療法士の職域拡大？地域包括支援センターへの理学療法士配置，介護予防事業運営

　新たな理学療法士の職域拡大？地域包括支援センターへの

　理学療法士配置，介護予防事業運営　

2019年10月21日に日本理学療法士協会から，一般介護予防事業等の推進方策に関する提案がなされました．

この中で現状の一般介護予防事業運営の問題点が整理されるとともに，地域包括支援センターへの理学療法士の配置，介護予防事業運営会社からの理学療法士の派遣が提案されました．

この提案は今後の理学療法士の職域を考える上でも非常に重要な意味を持つ提案だと思います．

今回は日本理学療法士協会から提案された一般介護予防事業等の推進方策に関する提案について考えてみたいと思います．

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

　一般介護予防事業等における理学療法士の活動実績　

まずこの提案の中で，一般介護予防事業等で活動している全国の理学療法士の実績が明らかにされております．

日本理学療法士協会では，2014年から都道府県士会における一般介護予防事業の普及啓発に資する取り組みが推進されております．

皆様が所属する各都道府県士会でも派遣事業が行われていると思います．

介護予防事業への理学療法士の参画は，2018年度調査では1,198 市区町村，2019年度調査では1,318 市区町村で，120 市区町村増加していると報告されております．

 

また地域ケア会議への理学療法士の参画についても，2018年度調査では919 市区町村，2019年度調査では1,187 市区町村で268 市区町村増加していると報告されております．

 

このように少しずつではありますが，各市町村で介護予防事業や地域ケア会議への参加が増加しており，組織的に日本理学療法士協会・都道府県理学療法士会が行っている派遣事業は順調に進んでいるようにも思えます．

しかしながら実はここには大きな課題があります．

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

　一般介護予防事業に理学療法士が参画する際の課題　

これまで日本理学療法士協会では，全国で約2万人の推進リーダーを育成し派遣体制を整えてきました．

推進リーダーというのは一定の研修を受講した理学療法士に与えられる資格ですが，各市町村から事業依頼を受けた都道府県士会はこの推進リーダーを取得している理学療法士を各市町村へ派遣するということになります．

2万人というと全会員の1割をこえる数ですので，かなり増えたなといった印象を持つ一方で，実際にはリーダー資格を取得しながらも所属施設の許可が下りない場合には個人の意欲に関わらず参加が難しいなどの課題があるのが現状です．

理学療法士というのは時間単位で仕事をしていることが多いので，例えば医療機関であれば，3時間の介護予防事業に出務すれば単純に9単位分（13,500～22,500円）の単位が取得できなくなるため所属施設からすると大きなマイナスになってしまいます．

そのため出務を許されない理学療法士も少なくないようです．

そのため休日に介護予防事業に出務したり，出務した際に得られた手当が所属施設に支払われるといったケースも少なくありません．

さらにサービス事業や一般介護予防事業がそれぞれ単独で実施されているため，リハビリ専門職の効果的・効率的な関与が実施しづらいといった課題もありました．

 

 

 

 

 

 

 

 

 

　日本理学療法士協会からの新たな提案　

今回の日本理学療法士協会からなされた提案は大きく2点です．

・地域包括支援センターに理学療法士等のリハビリ専門職を配置

・地域リハビリテーション活動支援事業等をリハビリ専門職を配置している事業所等に委託することを推進し，リハビリ専門職の評価・予後予測能力を活かして，支援が必要な者を把握し，通いの場への参加を含めた必要な支援に繋げる取組等をさらに強化してはどうか．

 

この提案がそのまま採用されるとは考えにくいですが，仮に地域包括支援センターへの理学療法士の配置が実現すれば，大きな職域拡大になることには間違いありません．

また地域リハビリテーション活動支援事業が委託事業になれば，これは1つのビジネスになりますので，こういった事業を行う理学療法士が増えるのではないかと考えられます．

 

今回は日本理学療法士協会から提案された一般介護予防事業等の推進方策に関する提案について考えてみました．

新たな職域拡大の可能性のある提案ですので，この件については今後も注目しておく必要がありそうですね．