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第6回日本予防理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介③
一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,昨年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.
令和元年10月19-20日に広島県で第6回日本予防理学療法士学会が開催されます.
今回はこの第6回日本予防理学療法士学会の一般演題の中から面白そうな研究をいくつかご紹介いたします.
地域在住高齢者における早朝のラジオ体操実施の安全性外傷,
疼痛の発生状況に着目した検討
研究の目的
高齢期の運動器に関わる身体的な特性として,骨密度の低下,関節の変形や,骨の変性等の骨格に関連する変化,筋量や筋力,バランス能力の低下,柔軟性の低下等,機能的な変化が挙げられる.
また,身体機能にはサーカディアンリズムがあるとされ,筋力,バランス能力,柔軟性も早朝の記録が低値であると報告されており,身体機能のピークはおおむね,日中から午後にかけてであることが示されている.
このことから,早朝の運動実施は,運動器の機能という観点からも外傷や疼痛発生等のリスクが潜在している可能性が考えられた.
しかし,早朝の体操実施による外傷及び疼痛の発生状況を調査し,安全性に言及した研究はない.
本研究は,早朝の体操実施の安全性を検討することを目的とし,ラジオ体操実施に起因する外傷および疼痛の発生状況に着目した調査を実施した.
研究の方法
対象は,神奈川県内R公園でのラジオ体操会会員から募集し,質問紙調査に参加した地域在住高齢者116名(男性:57名,女性:59名,平均年齢:76.2±5.2歳)とした.
対象者には面接調査及び質問紙調査を実施した.
調査項目は性別,年齢,身長,体重などの基本情報,現病歴,既往歴,体操に起因する外傷や疼痛発生の既往の有無,既往の内容,症状の治癒期間,疼痛の有無と部位,ラジオ体操の動作での無理をしない運動項目の有無と実施を避けている運動項目の有無を聴取した.
統計解析では,参加者における体操に起因する外傷や疼痛の発生状況について確認した上で,疼痛の有無と体操内容・量などの自己調整の有無についてχ2検定を行った.
なお,有意水準は5%未満とした.
研究の結果
対象者のラジオ体操実施期間の中央値は84.5ヶ月(1ヶ月-248ヶ月)であった.
体操に起因する外傷及び疼痛が発生したと回答した者は1名(0.9%)であった.
また,疼痛を有しているものは39名(33.6%),疼痛なしの者は77名(66.4%)であった.
疼痛の有無と体操内容・量などの自己調整の有無のχ2検定の結果,疼痛の有無と体操内容・量などの自己調整実施の有無の割合に有意差は確認されなかった.
研究の結論
ラジオ体操に起因する外傷,疼痛の発生率は極めて低値であり,ラジオ体操は,早朝の実施であっても比較的安全に実施が可能であり,疼痛の有無に関わらず,体操内容・量などの自己調整をしながら参加可能な体操であることが推察された.
感想
確かにラジオ体操ってなんで朝やるんだろうといった疑問はありました.
ただ今回の結果から考えると,早朝のラジオ体操の実施は安全だということがわかりました.
ラジオ体操の魅力というのは何より日本人ならば誰もが実践できるといった点ですよね.
早朝の通いの場としてラジオ体操が行われている地域も増えてきておりますし,理学療法士のラジオ体操について改めて考えてみる価値がありそうですね.
住民主体の介護予防事業を展開するための介護予防サポーターの養成に
関する研究 介護予防サポーターの活動意欲に影響を与える要因の検討
研究の目的
介護予防の担い手として地域住民に対し養成事業を展開しているが,自主グループの成立・活動には至らないなどの課題が先行研究において報告されている.
A市においても介護予防サポーター養成講座(以下,養成講座)が開催されているが,同様の課題を認めている.
そこで,今後の養成講座における対象者リクルートや適切な地域支援方法の開発を目的として,介護予防サポーター活動の意欲別における特性および影響を与える要因について検討した.
研究の方法
平成28~29年度の養成講座修了者344名を対象に,自記式質問紙にて郵送調査した.
分析対象者は190名であった.
介護予防サポーターの活動意欲について「既に活動している:既活動群(60名)」,「活動してみたい:積極群(61名)」,「活動したくない:非積極群(42名)」の3群に分類し,基本属性,背景的特性,介護予防サポーター関連項目,社会活動関連項目を比較した.
さらに従属変数を意欲変化(非積極群/積極群)および行動変化(積極群/既活動群)としたロジスティック回帰分析を行った.
研究の結果
既活動群は日頃の社会活動性が高く,個人のネットワークを有していた.
積極群では,非積極群と比較し講座満足感は高かったが,居住地域の公民館などの活用は既活動群と比較して活用している割合が低かった.
非積極群では,社会活動や養成講座に対する関心が低く,個人的ネットワークや他者との関わりも少なかった.
研究の結論
活動意欲の違いにより,社会活動性や養成講座に対する態度,個人ネットワークの有無,他者との関わりは異なる特性を認めた.
介護予防サポーターの意欲変化に対する講座を展開するためには,趣味・スポーツなどの活動を促し,既活動群との交流や体験型研修などの実践的講座を行うことで,意欲が促進される可能性が示唆された.
互助活動の側面である行動変化に対しては、既活動群との交流により社会的役割の重要性や仲間の存在を認識することで,社会貢献性を賦活し行動変化へつながる可能性が示唆された.
感想
理学療法士もまた通いの場などの介護予防事業の中で積極的な高齢者をいかにサポーターとして養成するかといった視点は非常に重要です.
そういった意味ではこういった研究結果を生かして,高齢者の中からどういった方にサポーターとして活躍していただくかというのは非常に重要だと思います.
今回はこの第6回日本予防理学療法士学会の一般演題の中から面白そうな研究をいくつかご紹介いたしました.
学会に参加される方は学会までに抄録をしっかり読み込んで参加したいですね.
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