第6回日本予防理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介②

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 第6回日本予防理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介② 

 

一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,昨年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

令和元年10月19-20日に広島県で第6回日本予防理学療法士学会が開催されます.

今回はこの第6回日本予防理学療法士学会の一般演題の中から面白そうな研究をいくつかご紹介いたします.

 

 

 

 

 

 

 

 

 理学療法士を主体とした大腿骨近位部骨折に対する骨折連鎖予防 

 研究の目的 

大腿骨近位部骨折は日常生活動作だけでなく健康寿命にも大きな影響を及ぼす.

高齢者で転倒によって生じる大腿骨近位部骨折は骨粗鬆症性骨折であり,一度骨折を起こすと次の骨折を起こしやすくなるため,一次骨折予防と同様に二次骨折予防も重要である.

この研究者は急性期病院であり,年間200例を超える大腿骨近位部骨折症例が入院されるが,骨粗鬆症に対して十分な評価と治療が行われていなかった.

そこで,次の骨折を予防する目的として,骨粗鬆症マネージャーの資格を有する理学療法士(以下,骨マネ)と担当理学療法士(以下,担当PT)が主体となって活動しているため,その内容を実績も含め紹介する.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

対象は2017年6月から2018年12月までに当院に入院された大腿骨近位部骨折症例281例(平均年齢83.2歳)とした.除外症例は,既往症や合併症により理学療法の施行に影響が生じたもの,高エネルギー外傷例とした.

活動内容は,骨マネは対象者のリストアップを行い,転倒・骨折リスク評価を担当PTと分担して実施した.

また担当PTは入院直後の術前から理学療法を開始し,同時に骨粗鬆症や次の骨折を予防する必要性の説明を小冊子を用いて本人または家族に実施した.

さらに,転院症例に対しては評価結果を地域連携パスに入力し情報提供を行った.リストアップされた対象者の情報はすべて自作のデータベースに登録し,骨マネが管理することとした.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

当院入院期間は平均24.8日(術前6.1日,術後18.6日)であり,転倒・骨折リスク評価は全例に実施できた.

説明の実施率は71.4%であり,未実施の原因は認知機能が低下しており本人に説明できず,また家族面会ができなかったことが最も多かった.

術前より理学療法が開始できたのは91.1%であり,64.6%がリハビリ病院に転院となったため全例において情報提供を実施した.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

骨粗鬆症による骨折連鎖を予防するには比較的早期に評価と説明を実施し,治療を始めることが重要である.

実施にメディカルスタッフの役割は大きく,当院では理学療法士が主体となって短い入院期間の中で活動が実施できている.

その実現には活動の効率化を図ることは必至であり,あくまでも通常業務の中で活動できるように配慮することで活動の定着化が図れている.

しかし,説明が未実施の症例がいることや長期的なフォローができないなど課題は多く残されており,今後は地域連携を図りながら骨折連鎖の予防に努めたいと考える.

 

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

こういった取り組みは非常に大切ですね.

骨粗鬆症マネージャーを取得した理学療法士がどのような活動をされているのかが気になっておりましたが,やはり業務の範囲内でいかに二次骨折予防に介入するかといったところがポイントだと思います.

特に回復期リハのような包括診療制度では骨粗鬆症の治療は病院の持ち出しとなるため,せっかく急性期病院で骨疽症治療が開始されたとしても,回復期リハビリ病院では敬遠されがちです.

診療報酬上で二次骨折予防が評価される時代が来ると良いですね.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リュックサックの重心高が歩行時の体幹姿勢に及ぼす影響 

 

 研究の目的 

リュックサックは効率性のよい運搬方法として,日常生活において頻繁に利用されている.

一方で,持ち歩く荷物の重量と筋骨格系症状や姿勢との関係性が指摘されており,学童では体重の10%以下を推奨する報告がある.リュックサック使用時の歩行姿勢には,重量に加えて荷物の重心位置が影響すると推察される.

それらの変化が歩行メカニクスにもたらす影響を明らかにすることは,リュックサック使用者に適切なアドバイスを提供するため,また日常的に多くの荷物を持ち歩く子どもの筋骨格系症状予防において重要な課題と考える.

そこで本研究は,異なる重心高のリュックサックを背負って歩行した際の体幹運動に与える影響および歩行パラメータの変化を検討することを目的とした.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

対象は健常成人男性7名(年齢21.9±1.3歳,身長169.7±6.0cm,体重62.8±7.8kg)とした.

計測には三次元動作解析装置KINEMETRIX,床反力計PRO-VEC5.0(共にエムピージャパン株式会社製)を使用し,反射マーカーを身体右側6ヵ所(肩峰,大転子,膝裂隙,下腿外側,踵骨後面,第5中足骨頭)に貼付した.リュックサックは荷物の高さを調節できる背負子を作成し,荷物としてバーベルウェイト15kgを使用した.

課題動作は6mの歩行路の自由歩行とし,荷物なし(CP),ウェイトの位置が床から身長の60%(LP),80%(HP)の高さの3条件を設定した.

解析項目は,歩行速度,歩幅,歩行周期,マーカー座標から矢状面上の1歩行周期中の体幹伸展・屈曲角度および運動範囲,床反力データから鉛直・前後方向成分についてピーク値と力積を算出した.

統計学的解析ではFriedman検定を行い,有意水準5%未満とした.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

歩行速度,歩幅,歩行周期には群間での有意差は認めなかった.

歩行中の矢状面における体幹の運動範囲はCP,LP,HPでそれぞれ8.8±2.7°,6.2±1.6°,8.2±2.1°となり,LPとHP間に有意差を認めた.

体幹運動は各群で同様なパターンを示し,初期接地から荷重応答期に最大伸展し,その後の体重移動に伴って屈曲した.

そして立脚後期に最大屈曲し,その後伸展に転じた.

体幹の最大伸展角度はCP,LP,HPでそれぞれ7.4±2.0°,-4.2±2.6°,-0.8±3.1°であり,各群間に有意差を認めた.最大屈曲角度はCP,LP,HPでそれぞれ1.5±1.7°,10.4±2.4°,9.0±2.9°であり,CPとLP,CPとHPに有意差を認めた.床反力パラメータは荷物重心の違いによる有意差は認めなかった.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

リュックサックの重心位置が低い場合は,歩行周期を通して過度な体幹前傾を強いることになり,歩行メカニクスに及ぼす影響が大きくなることが示唆された.

リュックサックを背負う際には,通常歩行に近い体幹姿勢となるよう荷物の重心位置を高くすることが望ましい

しかし,本研究では荷物重心の違いによる歩行速度や歩幅,歩行周期や推進力への影響は小さく,使用頻度や使用時間の違いによる変化には言及できない.

 

 

 

 

 

 

 感想 

理学療法士が高齢者にリュックサックの使用を勧める機会は少なくないと思います.

こういった結果を踏まえると,リュックサックの適切な高さまで合わせて指導をしておきたいところですね.

 

今回はこの第6回日本予防理学療法士学会の一般演題の中から面白そうな研究をいくつかご紹介いたしました.

学会に参加される方は学会までに抄録をしっかり読み込んで参加したいですね.

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