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離床時における理学療法士・作業療法士の天敵である点滴
こんなことってありませんか?
理学療法士・作業療法士がクライアントの離床をしようと訪室するとたくさん点滴のルートがついていてため息…
特に内科系の疾患や脳血管障害の急性期においては輸液(シリンジ)ポンプ等を使用して24時間点滴をされている方も少なくありませんので,点滴が終わったら理学療法・作業療法を行うということが難しいことも多いと思います.
またなんとなく点滴をされているクライアントって,本当に離床しても大丈夫なのだろうかと不安になってしまいますよね
こんな場合でも,点滴が入っている際にどのような点に注意して離床をしていけばよいのかといった知識があれば,不安に感じることもありません.
今回は点滴中のクライアントの離床を図る上で,理学療法士・作業療法士が注意すべき点について考えてみたいと思います.
理学療法士・作業療法士もおさえておきたい点滴の基礎知識
点滴の取り扱い方を知るためには,まず器具の名称から理解しておく必要があります.
最初にチェックしておきたいのが,薬剤が含まれる輸液ボトルです.
投与される薬剤の種類によって,形状はさまざまですが,輸液ボトルからつながっているチューブをたどっていくと,滴下数の確認に使用する小さな筒,点滴筒(チャンバー),があり,すぐ下にはクレンメ(クランプともいいます)と呼ばれる,滴下速度を調整する装置につながっているのがわかると思います.
場合によっては三方活栓と呼ばれる薬剤の流路を調整する装置や,一定の速度で薬剤を持続投与するシリンジポンプが取り付けてある場合もあります.
まずはどのような装置が使用されているかを確認してみるとよいです.
理学療法士・作業療法士も知っておきたい点滴ライン
点滴ラインには以下の4種類があります.
- 末梢静脈カテーテル(Vライン)
- 末梢動脈カテーテル(Aライン)
- 中心静脈カテーテル(CVライン)
- 肺動脈カテーテル(S-Gライン)
この4種類の点的ラインの中でも,使用頻度が非常に高いのが,末梢静脈と中心静脈カテーテルです.
末梢静脈カテーテルは,末梢静脈へ注射針を刺入して薬剤を投与する一般的な方法です.
高低差を利用して薬剤を投与しておりますので,輸液ボトルの高さで滴下速度が変わります.
したがって離床を図って坐位や立位を取る際には,滴下速度に変化が無いかどうかを確認しておく必要があります.
輸液ボトルよりもクライアントの心臓に相当する高さが高くなると,血液が逆流してしまうこともありますので,注意が必要です.
末梢静脈カテーテルは,薬剤や輸液・輸血の投与,末梢静脈栄養の投与時に使用されることが多いです.
中心静脈カテーテルは,鎖骨下・内頸静脈からが多く,緊急時には大腿静脈が選択される場合もあります.
昇圧・降圧剤など身体に影響の大きい薬剤で使われることが多く,そのほか高カロリー輸液,血管炎をきたしやすい薬剤の投与でも使用されます.
濃度が濃い薬剤の場合には,末梢静脈への投与では問題があるわけですね.
離床の際に必要なライン管理
末梢・中心静脈カテーテルを使用しているクライアントを対象に,理学療法・作業療法を行う場合には,理学療法士・作業療法士がリハビリ前後で必ず確認したいポイントがあります.
離床の際には,離床前後で刺入部の発赤や疼痛の有無,点滴の滴下速度を確認するようにしましょう.
離床の前後で刺入部の熱感・腫脹・発赤・疼痛の有無
関節運動等によって点滴の針先が血管外へ移動してしまうと腫張・発赤・疼痛の原因となります.
末梢静脈カテーテルの場合には,血管トラブルが非常に多いので必ずリハビリ前後で確認をしておく必要があります.
点滴の滴下速度の確認
上述したように姿勢を変換すると滴下速度が変化します.
臥位から坐位・立位へ姿勢を変換すると点滴の滴下速度は遅くなりますし,坐位・立位から臥位へ姿勢を変換すると点滴の滴下速度は速くなります.
特に,坐位や立位に姿勢を変換する際には,末梢静脈圧を超える滴下の落差が確保できているかが重要となります.
一般的には心臓から27㎝以上の落差を確保することが重要となります.
したがって姿勢を変換する際には,滴下速度の変化に着目した上で,クレンメを使用して滴下速度を調整することが重要となります.
離床における注意点
実際の離床の際には、以下の点に注意しましょう.
末梢静脈カテーテルの離床における注意点として,離床範囲を考慮したラインの長さはあるかを確認することが重要です.
ラインの長さが不十分であれば姿勢変換時にラインが切れてしまう可能性があります.
また理学療法士・作業療法士にとって重要なのが,関節運動により刺入部の位置に影響がないかを確認しておきましょう.
さらに筋収縮により血液の逆流は起きていないかを確認しておくことも重要です.
筋収縮によって点滴が滴下しない状態になっていないかどうかを必ず確認しておきましょう.
さらに中心静脈カテーテルでは,上述した注意点に加えて留置される場所ごとに以下のようなこと点に注意が必要です.
- 内頸静脈:体位変換時,頸部の下に敷かれることによるライン屈曲の可能性あり
- 鎖骨下静脈:挿入側上腕の外転運動時,カテーテルが前後する可能性あり
- 大腿静脈:長時間の座位によりカテーテルの屈曲をきたし閉塞する可能性あり
いずれにしても離床時に少しでも異常を感じたら,速やかに看護師に報告することが重要です.
今回は点滴中のクライアントの離床を図る上で,理学療法士・作業療法士が注意すべき点について考えてみたいと思います.
理学療法士・作業療法士がリハビリを行う上では,起き上がりや立ち上がりといった姿勢変換を行う機会が非常に多いと思います.
寝返りや起き上がり,端坐位などの姿勢変換時には,点滴が阻害因子となることは非常に多いです.
扱い方や注意点を理解した上で,安全に離床を図れるように努めたいものです.
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