第7回日本運動器理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介 足関節関連2

足関節周囲外傷
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目次

 第7回日本運動器理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介

 足関節関連2 

一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,昨年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

令和元年10月4-6日に岡山県で第7回日本運動器理学療法士学会が開催されます.

今回はこの第7回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から足関節関連の面白そうな研究をいくつかご紹介いたします.

selective focus photography of people sitting on chairs while writing on notebooks

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 関節外果骨折術後における足部周囲軟部組織の柔軟性と 

 足関節底屈ROMの関係性―超音波エコーを用いて― 

 研究の背景・目的 

足関節外果骨折の術後は,創部周囲の腫脹・癒着により足関節の底屈制限が生じやすいといった特徴があります.

超音波エコー(US)を用いた研究により,足関節外果骨折術後の足部後面筋の柔軟性は低下しており,背屈制限因子となることが明らかにされております.

しかし,底屈制限についての報告は不十分です.

この研究では,足関節外果骨折術後の距骨滑車前方に広がるPretelar Fat Pad(PFP)の柔軟性をUSを用いて測定し,足関節底屈ROMとの関係性を報告することを目的としております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

対象は,足関節外果骨折術後15例(男性8例,女性7例,平均年齢61.3歳)とし,健側と患側のPFPを,US(Aixplorer,コニカミノルタ社製)を用いて評価しております.

背臥位足関節中間位と底屈40°で,PFPの厚みを計測し,その変化量を算出しております.

また,ゴニオメーターを用いて足関節底屈ROMを測定しております.

検討項目は,PFPの厚みの変化量とし,健側と患側で比較検討しております.

また,PFPの変化量と足関節底屈ROMの相関を求めております.

なお検査測定は,十分練習を行った同一者が施行しております.

統計処理は対応のあるウィルコクソン検定,ピアソン相関係数を用い,有意水準を5%未満としております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

PFPの厚みの変化量は,健側が0.67cm,患側が0.15cmとなっております.

患側が健側に比べ有意に低値を示しております(p<0.05).

PFPの厚みの変化量と足関節底屈ROMとの相関は,r=0.58と正の相関が認められております(p<0.05).

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

この研究の結果,足関節中間位から底屈40°のPFP変化量は健側と比べて患側が有意に低下しており,足関節底屈ROMに正の相関がありました.

これはPFPの柔軟性低下に伴い足関節底屈ROMが制限されることを示唆している.

今後は,PFPの柔軟性改善により,底屈ROMが改善するかを検討していく予定である.

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

底屈可動域って無視されがちですが,正座や走行動作を獲得するためには必須となります.

またPFPは背屈可動域とも関連することが多い組織ですので,PFPに着目した介入の重要性が改めて理解できる内容ではないかと思います.

 

 

 

 

 

 

 

 足関節背屈運動時の足関節後面皮膚の伸張性について 

 

 研究の背景・目的 

足部疾患患者において,手術侵襲や固定による背屈制限を多く経験します.

これまでに,皮膚伸張性の影響については,膝関節での報告(和田,2012)やラットを用いて行われた,背屈ROM制限は皮膚切開で10%改善するといった報告があります(岡本,2014).

しかしながら,足関節後面皮膚の伸張性を調査した報告は見当たりません.

この本研究は,足関節背屈における足関節後面皮膚の伸張性について検討することを目的としております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

整形外科・神経学的に問題がない健常者(当院職員男女各15名,年齢28.16±3.84歳)の右足関節後面皮膚を4区画に分け各背屈角度で皮膚伸張距離を計測しております.

区画決定は,最初に足関節0°で,アキレス伳中央線と内外果中央線の交点をマークし,内外果-アキレス伳交点とした.次に,踵骨隆起下端部をマークし,内外果-アキレス伳交点との中点をマークしております.

中点によって得られた1/2の距離を基準距離としております.

最後に,内外果-アキレス伳交点から,アキレス伳中央線に沿い,基準距離と同じ長さを,近位へ2点マークしております.

5点から得られた4区画を,近位からアキレス伳近位部(近位部),アキレス伳中間部(中間部),アキレス伳遠位部(遠位部),踵骨部としております.

測定は,腹臥位,膝屈曲30°で,背屈10°,20°,最大背屈位における4区画の距離(mm)をメジャーで測定した.得られた距離から,伸張差{(求める背屈角度での距離)-(求める背屈角度-10°での距離)}を求め,伸張率(伸張差/基準距離×100)を算出(和田,2012)し,伸張性の指標としております.

各角度(0-10°,10-20°,20°-最大,以下数値省略)における区画間と各区画における角度間の比較を一元配置分散分析後,多重比較検定で行っております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

各角度における区画間の比較では,20-最大において,中間部で他区画と比較し有意に高い伸張率でありました(p<0.01).

各区画における角度間の比較では,中間部,遠位部,踵骨部において20°-最大で0-10°と比較し,高い伸張率でありました(p<0.01).

近位部においては,両比較で伸張率に有意差はありませんでした.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

20°-最大で,中間部は他区画に比べ伸張性が高いことが示唆されております.

この研究における,中間部下部区画の遠位部は,皮膚が集約し,伸張されやすい部位と述べられております(福井,2010).

また,上部区画の近位部は,本研究で伸長性が低いことが示唆された.さらに,皮膚が伸張されにくい部分は,他部位が補うように動くと報告されております(Rolf.I,1978).

これらから,皮膚集約がある遠位部が背屈20°までに伸張され,それ以降,伸張性が低い近位部を固定源とし,遠位部の伸張を補うように中間部が伸張されたことが考えられます.

本研究の結果から,20°以降の背屈獲得を目指す際,中間部と他部位との伸張性の違いを考慮した評価が有効になることが示唆された.

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

関節可動域を獲得する上では皮膚の柔軟性は重要ですが,この研究の素晴らしいのは皮膚を区画で分類してどこの皮膚の伸張性が必要かを明らかにした点です.

理学療法士が足関節可動域獲得を目的として皮膚に介入する上で参考になる研究ですね.

 

今回はこの第7回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から面白そうな研究をいくつかご紹介いたしました.

学会に参加される方は学会までに抄録をしっかり読み込んで参加したいですね.

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