第7回日本運動器理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介 変形性膝関節症関連

変形性膝関節症
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目次

 第7回日本運動器理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介 

 変形性膝関節症関連 

 

一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,昨年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

令和元年10月4-6日に岡山県で第7回日本運動器理学療法士学会が開催されます.

今回はこの第7回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から変形性膝関節症関連の面白そうな研究をいくつかご紹介いたします.

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 変形性膝関節症患者の機能障害には筋量低下よりも 

 筋の質的低下が影響する;ながはまスタディ 

 研究の背景・目的 

変形性膝関節症(膝OA)患者における大腿部の筋量低下は,機能障害や疼痛増悪に関連します.

また膝OA患者の筋内脂肪浸潤といった筋の質的低下が筋力低下に影響することが報告されておりますが,機能障害との関係は十分に検討されておりません.

この研究の目的は,膝OA患者の機能障害と筋の量的・質的低下との関連を明らかにすることとされております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

ながはま0次予防コホートに参加した60歳以上の地域在住中高齢者のうち,膝関節X線画像よりKellgren/Lawrence(K/L)グレード2以上として両側膝OAの診断を受けた者を対象としております.

関節リウマチや脳血管疾患,慢性閉塞性肺疾患,慢性腎臓疾患を除外し,最終的に787人(年齢69.6±5.3歳,女性647名;82.2%)を分析対象としております.

患者立脚型機能評価尺度Knee Society Score(KSS)2011日本語版を使用し,機能スコアを測定しております.

機能スコアは,生活機能や身体活動を中心とした質問項目で構成され(100点満点),高得点であるほど膝機能が良いことを意味するものです.

また,多周波体組成分析装置(InBody社製)を用いて生体電気インピーダンスを計測しております.

下肢筋量は,両下肢の平均値を身長の二乗で除して算出しております.

筋質の指標となるECW/ICWインデックス(cm/Ω)は,5kHzと250kHzのインピーダンス値より先行研究に準じて算出しております.

ECW/ICWインデックスは高値を示す程,筋内に占める非収縮組織割合の増加を意味し,筋の質的低下を反映します.

さらに,膝痛および違和感の全くない者を無症候性膝OA,膝痛のある者を症候性膝OAとして二値化しております.

なお,膝OA重症度分類は,両側ともにK/Lグレード2を軽度,片側K/Lグレード2かつ他方がK/Lグレード3または4を中程度,両側ともにK/Lグレード3以上を重度として定義しております.

KSSスコアを従属変数,下肢筋量,ECW/ICWインデックスを独立変数,症状の有無,重症度,年齢,性別,BMI,腹囲,糖尿病・骨粗鬆症・腰痛・運動習慣・喫煙・飲酒歴の有無を調整変数として重回帰分析を行っております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

KSS機能スコアは平均82.3±17.4点,下肢筋量2.4±0.3kg/m2,ECW/ICWインデックスは5.2±0.8cm/Ω,無症候性膝OA77.9%,重症度分類は軽度68.5%・中程度11.4%・重度20.1%でありました.

重回帰分析の結果,ECW/ICWインデックスはKSS機能スコアと有意に関連したが(β=-0.24,p<0.001),下肢筋量は有意な関連を認めておりません(β=0.05,p=0.28).

また,症状の有無,重症度分類の他,年齢,BMI,運動習慣・腰痛の有無がKSS機能スコアに有意に関連しているといった結果でありました.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

膝OA患者の機能障害は,筋量低下ではなく,筋の質的低下が影響することが明らかとなっております.

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

筋の量よりも筋の質が変形性膝関節症例の機能障害と関連しているといった結果であります.

量よりも質ということになると思いますが,問題はこういった筋の質を一般臨床でどのように評価するかということだと思います.

またこの研究で言うところの質を改善させるための運動療法に関しても今後報告が待たれますね.

 

 

 

 

 

 

 

 

 変形性膝関節症患者の歩行中の両下肢間協調性について 

 ―Phase coordination indexを用いて― 

 研究の背景・目的 

変形性膝関節症(膝OA)により転倒リスクが健常高齢者の約1.5倍程度に増加することが報告されております.

転倒の原因の一つとして歩行の動的安定性の低下が示唆されており,この動的安定性に関して,歩行中の両側下肢間の動きの関連性により評価される,両下肢間協調性が重要な規定因子として示されております.

しかし,これまでに膝OA患者の両下肢間協調性についての検討はされておりません.

この研究は膝OA患者と健常高齢者の両下肢間協調性を比較することで,膝OAによる両下肢間協調性への影響を検討することを目的としております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

対象は大阪急性期・総合医療センターに人工膝関節全置換術目的で入院した,膝OA患者(膝OA群)56名と身体機能測定会に参加した,地域在住健常高齢者(健常群)12名となっております.

選択条件は,30m以上の独歩が見守りあるいは自立にて可能なものとし,健常群は65歳以上のものとなっております.

健常群では整形外科疾患を持つものは除外しております.

基本属性として,年齢,BMIを計測しております.

歩行機能として,直線平地歩行時の快適歩行速度と両下肢間協調性の指標であるPhase coordination index(PCI)を計測しております.

PCIは下位項目である一歩時間の対称性(φABS)とその対称性の歩行周期ごとの変動性(φCV)を総合した指標であり,値が大きいほど両下肢間協調性が低下していることを示します.

歩行中の両下腿角速度波形から歩行周期を特定し,PCIを算出しております.

統計解析にはR commander2.5-1を使用し,膝OA群と健常群の基本属性および歩行速度,PCIと下位項目であるφABS,φCVの比較にt検定を用いております.

有意水準は5%としております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

対象者の基本属性は,年齢が膝OA群75.8±7.3歳,健常群71.9±5.0歳,BMIが膝OA群26.8±4.0kg/m2,健常群22.2±2.3kg/m2であり,BMIのみ有意差が認められております(p<0.01).

歩行速度は膝OA群0.95±0.25m/s,健常群1.48±0.21m/sと膝OA群で有意に低い値を示しております(p<0.01).

さらに,PCIは膝OA群6.55±3.05%,健常群2.99±0.84%と膝OA群で有意に高い値を示しております(p<0.01).

また,φABSとφCVに関しても,φABSは膝OA群6.78±4.44%,健常群2.81±0.84%(p<0.01),φCVは膝OA群2.78±1.13%,健常群1.43±0.51%(p<0.01)とどちらも膝OA群で有意に高い値を示しております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

この研究では膝OA患者と健常高齢者の両下肢間協調性を比較することで,膝OAによる両下肢間協調性への影響を検討しております.

その結果,膝OAにより歩行速度だけでなく,歩行中の両下肢間の対称性およびその変動性がどちらも低下することで,両下肢間協調性が低下することが明らかとなっております.

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

理学療法士が変形性膝関節症例に関わる上で,対称性・変動性といったところに着目する必要があるということを示唆させる内容ですね.

これまで変形性膝関節症例に対しては関節モーメントをアウトカムとした研究が多く行われてきましたが,新たな視点としてこういった対称性・変動性についても学習を深めていく必要がありそうですね.

 

 

 

 

 

 

 

 変形性膝関節症患者における圧痛と歩行時痛,階段昇降時痛との関連 

研究の目的

変形性膝関節症(以下膝OA)の主症状は膝関節痛であり,疼痛は日常生活動作能力の低下を招きます.

そのため,疼痛検査は重要であり,中でも圧痛部位の評価は簡便に行うことができます.

膝OA患者の圧痛は,関節面に限らず,軟部組織にも分布することが多いですが,各部位の圧痛閾値や,圧痛と動作時痛の関連は十分に明らかにされておりません.

この研究では軟部組織を主とした部位の圧痛有訴割合およびその閾値を調査する事と,歩行時痛,階段昇降時痛に関連する因子を明らかにする事を目的としております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

対象はKellgren-Lawrence(以下KL)分類GradeII以上の膝OA患者42名(GradeII:19名,GradeIII:13名,GradeIV:11名;年齢71.4±5.9歳,BMI24.1±3.8kg/m2)としております.

圧痛閾値の評価は,手動の圧痛計FPメーターを使用し,上限閾値を6kgとして,膝蓋骨上縁,下縁,外縁,内縁,腸脛靱帯,鵞足の圧痛閾値を各2回計測し,平均値を解析に用いております.

測定した閾値は7段階で点数化(圧痛点数)を行い,0kg以上1kg未満を6点,以降1kg毎に1点ずつ減点し,6kg以上であれば0点と規定しております.

歩行時痛,階段昇降時痛はnumerical rating scaleを用いて評価しております.

また,膝関節の構造学的指標として軟骨厚,半月板突出量を超音波診断装置で測定しております.

統計解析には統計ソフトSPSSを使用し,各部位の圧痛点数をKruskal-Wallis検定後に,Bonferroniの補正によるWilcoxonの符号付順位検定を用いて比較を行っております.

さらに従属変数を歩行時痛または階段昇降時痛,独立変数を年齢,BMI,軟骨厚,半月板突出量,KL分類,圧痛点数としてステップワイズ法による重回帰分析を行っております.

有意水準は5%未満としております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

各部位の圧痛点数が1点以上の割合および中央値は,膝蓋骨上縁74%;3点,下縁56%;1点,外縁78%;3点,内縁84%;3点,腸脛靱帯88%;3点,鵞足94%;5点であり,膝蓋骨下縁の圧痛点数が他部位と比較し有意に低く,鵞足の圧痛点数は他の部位と比較し有意に高い結果でありました.

重回帰分析の結果,歩行時痛,階段昇降時痛には膝蓋骨上縁の圧痛点数のみ(β=0.344,p<0.05;β=0.489,p<0.01)が有意な項目として抽出されております.

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

膝OA患者の圧痛閾値が最も低い部位は鵞足であった.また,膝蓋骨上縁の圧痛は,歩行時痛,階段昇降時痛を反映する一つの指標となる.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

圧痛の評価というのは理学療法士が疼痛評価を行う上で行うことが多い評価の1つですが,過去にここまで定量的に圧痛が評価された研究というのは少ないので非常に参考になる研究だと思います.

また鵞足部の圧痛域値が低いといった点も非常に興味深いですし,PF関節痛を考える上でも膝蓋骨上縁の圧痛と階段昇降時の疼痛との関連はうなづけるところです.

 

今回はこの第7回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から面白そうな研究をいくつかご紹介いたしました.

学会に参加される方は学会までに抄録をしっかり読み込んで参加したいですね.

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