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真夏の屋外歩行練習どうしてますか?
屋外歩行練習は理学療法士・作業療法士が行うことの多い練習の1つですが,真夏の日差しの中で屋外歩行練習を実施すべきかどうかは非常に悩ましいところです.
特に昨今の暑さは非常に厳しいことが多く,練習中の熱中症発症の可能性も気になります.
ただ当然ながら退院すれば,屋外を歩行する必要があるクライアントも多いと思いますので,まったく実践しないわけにもいきません.
今回は理学療法士の視点で真夏の屋外歩行練習について考えてみたいと思います.
屋外歩行練習の重要性
理学療法士・作業療法士が勤務する病院や介護施設内というのはほとんどがバリアフリーに整えられており,安全を重視するうえでは最適な環境です.
しかしながら自宅退院を考える上では,フラットな環境ばかりではなく,屋外も含めた環境で歩行練習を行っておく必要があります.
そのため屋内である程度歩行ができるようになれば,難易度の高い環境として屋外歩行練習を取り入れるといったことが多いと思います.
残念ながらいくら屋内での歩行練習を繰り返しても,屋外での歩行の感覚が磨かれるということは少ないでしょう.
見た目は屋外のアスファルトでも,細かい凹凸やわずかな傾斜がありますので,屋内で歩行練習を行うよりは難易度は格段に高くなります.
バランス能力や筋力が低下しているクライアントにとっては大きな障害となります.
また実際に屋外歩行を行うことで,新たな課題が見つかることもあります.
歩行スピードが遅すぎて横断歩道を渡れなかったり,グレーチングに杖先がはまって移動に支障が出たりと,今後のリハビリプランの見直しが必要な場合も少なくありません.
さらにクライアントにとっては,外の環境に触れることが大きな刺激につながります.
受傷から数カ月を病院内で生活されているクライアントにとっては屋外へ出られたという経験は大きな自信になります.
また屋外で歩行練習を行うことで,退院後の生活を身近に感じられれば,その後のリハビリ意欲も高まります.
このようにたかが屋外歩行練習,されど屋外歩行練習なわけです.
もちろんただただ付き添って屋外を歩いているだけでは,理学療法士の専門性は発揮されませんので,もちろんそこには専門職の視点での評価が必要ですが…
夏の屋外歩行練習におけるリスクを考える
夏の屋外歩行練習ではさまざまなリスクが伴います.
屋外を歩行することによる精神的緊張に加えて,熱中症や脱水を引き起こしやすいので注意が必要です.
また屋外ならではの刺激として,日光がまぶしいといった点も挙げられます.
特に入院後数カ月を屋内で過ごしていると瞳孔の機能も低下し,光をうまく調整できない方も多くいらっしゃいます.
さらに向かい風や追い風が強かったりと,転倒危険が高くなるということを認識しておく必要があるでしょう.
多くの問題を前にして,ついつい涼しい屋内で不整地を設定すればよいのではないかと考えがちですが,理学療法士・作業療法士や施設の都合で屋外歩行という貴重な機会を奪うのはナンセンスです.
夏だからこそ貴重な屋外歩行
上述した屋外歩行練習の重要性を考慮すると,真夏だからといって屋外歩行練習を行わないというのは間違いです.
屋外歩行練習が必要なタイミングがたまたま真夏だったというだけです.
クライアントにとっては,必要な練習であることは間違いありません.
ただし夏場の屋外歩行には,より慎重な対応が求められます.
患者さんの体調や,外の環境,実施時刻などをしっかりチェックする必要があります.
場合によっては屋外歩行練習を中断し,リスクを回避する判断力も必要です.
なるべく日陰の場所を歩行したり,病院や施設側で屋外歩行練習用に帽子を用意したりといった対策が必要です.
特に脱水や熱中症には注意が必要ですので,屋外歩行練習前に血圧を測定し,血圧が低い場合には,屋外歩行練習を取りやめる判断も必要でしょう.
さらに屋外歩行練習前後で十分に水分を摂取していただくことも重要です.
今回は理学療法士の視点で真夏の屋外歩行練習について考えてみました.
社会復帰や在宅復帰を目的とした屋外歩行練習に季節は関係ありません.
なぜなら退院後は暑くても寒くてもクライアントは外出する必要がありますので,体を慣らしておくことも重要です.
特に夏の暑さと日差しはリスクの高いものですが,そうした環境要因も含め,屋外歩行を行うことに意義があるわけです.
理学療法士・作業療法士はクライアントの体調を十分に評価した上で,屋外歩行練習を楽しんでいただけるような環境を作ってあげる必要があるでしょうね.
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