理学療法士の視点で鵞足由来の疼痛について考える

変形性膝関節症
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 理学療法士の視点で鵞足由来の疼痛について考える 

変形性膝関節症をはじめとする膝関節周囲の疾患では,鵞足部に疼痛を訴えるクライアントが少なくありません.

しかしながら脛骨大腿関節内側コンパートメント由来の疼痛であると判断され,見逃されることが多いのも鵞足由来の疼痛の特徴です.

今回は理学療法士の視点で鵞足由来の疼痛について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 

 

 鵞足とは? 

鵞足は縫工筋,薄筋,半腱様筋の付着部腱があたかも鵞のような形態をしていることから呼称され,前方から縫工筋・薄筋・半腱様筋の順に配列しております.

縫工筋は,前方から扇状に拡がるように存在し,薄筋や半腱様筋も腱自体は細いのですが,停止部では扇状に拡がりながら付着しているのが特徴的です.

後内側には下腿筋膜が腓腹筋の内側頭を覆う形で存在しますが,この部位と付着している薄筋・半腱様筋は下腿筋膜の緊張に影響を受けやすいといった特徴があります.

そのため足関節を背屈させることで,下腿筋膜を遠位に牽引すると,薄筋や半腱様筋も同時に伸張されることとなります.

 

 

 

 

 

 

 縫工筋と伏在神経の関係 

大腿遠位部を走行する縫工筋のすぐ深層には伏在神経が位置します.

そのため何らかの原因で縫工筋に短縮や滑走障害が生じると,伏在神経に圧刺激が加わることになりますので,伏在神経性の疼痛が出現してしまいます.

伏在神経の支配領域は,膝から下腿にかけての内側面であり,この領域に疼痛やしびれ認める場合には,伏在神経性の疼痛を疑う必要があります.

縫工筋の伸張性や滑走性が向上すれば,伏在神経への刺激が緩和され,伏在神経性疼痛に改善が得られることが多いです.

縫工筋はその解剖学的な形態から収縮やストレッチングするのがやや煩雑であり,的確にイメージした上で治療を実施しないと,適切な効果が得られません.

 

 

 

 

 

 

 薄筋・半腱様筋の解剖学的特性 

薄筋と半腱様筋腱は,大腿遠位部では筋肉から腱に移行し,下腿近位部では扇状に拡がる腱膜状の組織です.

圧痛所見は薄筋腱の方に多くみられ,脛骨近位内側穎部に好発します.

一方で半腱様筋腱は薄筋と並走しておりますが,圧痛が出現しにくいといった点も特徴的です

内側側副靱帯の表層と内側側副靭帯には,滑液包(葦足包)が介在し,鵞足腱の滑走刺激を緩衝します.

しかしながら歩行やランニング動作などで刺激が繰り返されると,鵞足包炎を引き起こすこととなります.

また薄筋腱と半腱様筋腱は,腓腹筋内側頭を被覆する筋膜に付着部があり,外傷などでこれらの腱と筋膜とが癒着すると,滑走性が阻害される可能性があります.

そのため薄筋腱や半腱様筋腱障害に対しては、それぞれの筋の伸張テストを足関節底屈位と背屈位で比較する必要があります.

足関節背屈位で陽性となった場合は筋膜との癒着が疑われます.

 

 

 

 

 

 

 鵞足炎の発生機序 

鵞足炎は膝関節の屈曲と伸展が繰り返されることによって,表層の鵞足と深層の内側側副靭帯が擦れることによって起こります.

摩擦を緩和するために鵞足と内側側副靭帯の間には滑液包が存在しており,正常であれば炎症を起こすことはほとんどありません.

しかし脛骨が外旋または前方突出しているヒトでは鵞足が引き伸ばされるため,内側側副靱帯との摩擦力が増加して損傷する可能性が高いです.

よって鵞足炎は膝関節に回旋が加わった状態で屈伸が繰り返される運動で発生しやすいわけです.

 

 

 

 

 

 

 

 鵞足腱のスナッピング症候群 

もう1つ知っておきたいのが鵞足腱のスナッピング症候群です.

鶯足腱は下腿部では棚状形態をし,脛骨内側顎からMCLの表層にかけて走行します.

また鵞足腱は,膝関節屈曲すると後方へ,伸展すると前方へ滑走し,鵞足腱とMCLとの摩擦を緩衝するために滑液包が存在します.

しかし鵞足構成筋の短縮や組織間の癒着を認める場合には,この部位で滑走が起こらないためスナッピングが引き起こされ疼痛の原因となります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 鵞足部の疼痛の原因組織を鑑別する 

上述のように鵞足は3つの筋肉で構成されておりますので,具体的にどの筋肉が疼痛の主因となっているかを鑑別する必要があります.

一番多いのは薄筋腱が炎症を起こしているケースですので,まずは薄筋から圧痛や伸張痛の有無を確認すると効率的です.

薄筋の作用は,①股関節の屈曲・内転,②膝関節の屈曲,③下腿の内旋ですので,基本的にはこの反対方向に動かすことで腱を伸張することができます.

鵞足滑液包や内側側副靱帯に炎症が起きている可能性もありますので,鵞足構成筋以外の組織についても合わせて調べておくと良いでしょう.

同様に半腱様筋であれば①股関節伸展,②膝関節屈曲,③下腿内旋作用がありますので,この反対方向に動かすことで筋の伸張痛を確認します.

縫工筋も同様に作用と反対方向に伸張を加えて伸張痛を確認すると良いでしょう.

 

 

 

 

 

 

 

 

 鵞足炎に対する理学療法の考え方 

鵞足炎を起こすクライアントの多くは脛骨外旋症候群を有しており,その原因には①股関節内旋(外旋制限),②足部外反,③膝関節屈曲が挙げられます.

 

 

①股関節内旋(外旋制限)

立脚初期に大腿骨が過度に内旋してしまうケースでは,脛骨との捻れ(脛骨外旋)が生じやすくなります.

大腿骨の内旋が強すぎると膝関節の過伸展と合わせて「見かけ上のO脚」を呈しますが,大腿骨を外旋させるとO脚が消失することが特徴です.

このような場合には,股関節外旋のストレッチングに加えて,膝蓋骨を正面に向けるような姿勢修正が有効です.

 

 

②足部外反

立脚後期に足部外反(扁平足)が生じる場合にも,下腿が外旋してしまいます.

理学療法では足部内反運動を実施したり,足底板を利用することで足部外反を改善させるアプローチが有効です.

 

 

③膝関節屈曲

膝関節に伸展制限(屈曲拘縮)が起きると,歩行時に膝をロッキングできずに回旋が生じることとなります.

伸展制限を改善することが鵞足部のストレスを減少させることに繋がります.

 

 

 

今回は理学療法士の視点で鵞足由来の疼痛について考えました.

変形性膝関節症例をはじめとして鵞足炎を合併するクライアントは多いので,原因を考えた上で適切な対処を行いたいものです.

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