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セクハラとパワハラ・アカハラでは判断基準が異なる?
先日首都大学東京の教授が学生にハラスメント行為を行ったとして職務停止となったことをご紹介させていただきました.
ハラスメントは社会的にも大きな問題となっており,テレビのニュースでもハラスメントが取り上げられない日は無いくらいハラスメント関連の事件が増えております.
臨床実習においても,以前からハラスメントによる問題が指摘されており,今回の臨床実習指導者講習会でもハラスメントに関して2時間30分にわたる講義・演習時間が設けられております.
今回は理学療法士・作業療法士も無視できない臨床実習におけるハラスメント問題に関しての判断基準について考えてみたいと思います.
ハラスメントと臨床実習生の権利意識
当然ながら臨床実習においてハラスメントはあってはならないものです.
臨床実習生というのは実習環境という普段とは全く異なる環境の中で実習を送っておりますので,非常にストレスフルな状態にあります.
したがって冗談と思って指導者である理学療法士・作業療法士が口にした内容がハラスメントにあたる場合もあるわけです.
一方でハラスメントがあまりにも強調されてしまうと,指導者である理学療法士・作業療法士は何も指導できなくなるといったような声も聞かれます.
最近では臨床実習生の権利意識も非常に高くなっており,ハラスメントという言葉を盾に,指導者に対して「それは●●ハラですよ」と指摘する学生すら出てきているようです.
臨床実習においては理学療法士・作業療法士は実習生に対して「良いものは良い悪いものは悪い」ときちんと伝達する必要があります.
われわれ理学療法士・作業療法士は実習生が成長できるように指導を行っていく必要があるわけです.
ここで重要となるのがハラスメントの基準を指導者である理学療法士・作業療法士が知っておくことです.
セクハラとパワハラ・アカハラでは判断基準が異なる
私も臨床実習指導者講習会を受講するまではハラスメントの判断基準について大きな誤解をしておりました.
実はセクハラとパワハラ・アカハラでは判断基準が異なるのです.
またアカデミックハラスメントとパワーハラスメントは類似したような概念ですが元をたどると提唱したところがちがったりします.
アカハラはNPOのNAAHがパワハラは厚生労働省が提唱した概念なのです.
臨床実習生に対する調査によるとセクハラよりもアカハラやパワハラが圧倒的に多いことも明らかにされております.
実際に厚生労働省が理学療法士・作業療法士学校要請施設カリキュラム等改善検討会で報告した資料によると実習指導者からハラスメントと思われる言動を受けたことがあると回答した実習生は20%程度もあり,理学療法士・作業療法士の実習においてもハラスメントが非常に多いことがわかります.
セクシャルハラスメントの判断基準
セクシャルハラスメントというのは性的な言動により相手に苦痛や不利益を与えることを指しますが,判断基準としては受け手が不快に思うかどうかが重要視されます.
したがってセクシャルハラスメントの場合には,臨床実習生が不快感を抱いたり,嫌だという感情をもてばそれだけでハラスメントになってしまうわけです.
全く同じ発言であっても,臨床実習生が指導者Aの発言に対しては不快感を持つことはなく,指導者Bの発言に対しては不快感をもつということだってあるわけです.
この場合には同じ発言をしたにもかかわらず,指導者Aはセクシャルハラスメントを行ったことにはならない一方で,指導者Bはセクシャルハラスメントを行ったことになってしまいます.
もちろん普段からの指導者である理学療法士・作業療法士と臨床実習生の信頼関係が重要であるわけですが,まだ信頼関係が構築されていない実習初期にはちょっとした発言がセクシャルハラスメントになってしまう可能性が高いと考えられます.
パワーハラスメント・アカデミックハラスメントの判断基準
パワーハラスメントとは職務遂行上の有意な立場を利用した不当な言動によって相手に苦痛や不利益を与えることと定義されます.
またアカデミック・ハラスメントとは教育または研究上の有意な立場を利用した不当な言動により相手に苦痛や不利益を与えることと定義されます.
臨床実習ではこの両方のハラスメントが起こり得ると考えられます.
パワーハラスメント・アカデミックハラスメントの場合にはセクシャルハラスメントとは基準が異なります.
パワーハラスメント・アカデミックハラスメントの場合には判断基準として客観的な判断が重要視されます.
当事者による判断ではなく第3者がみたときにハラスメントに当たるかどうかといった判断がなされるわけです.
つまりパワーハラスメント・アカデミックハラスメントの場合には,指導者Aと指導者Bの間で発言した内容や臨床実習生対して行った行為が同様の発言・行為であれば,ある程度同じ判断が下されることになります.
今回は理学療法士・作業療法士も無視できない臨床実習におけるハラスメント問題に関しての判断基準について考えてみました.
ハラスメントについて考慮する必要があるのは何も臨床実習に限ったことではありません.
職場での新人教育などの際にも注意が必要です.
またパワーハラスメント・アカデミックハラスメントというと上司や先輩から後輩へといった構図を思い浮かべられる方も多いと思いますが,後輩から上司・先輩へといったこともあり得るわけです.
自分には関係ないと考えず,自分の発言や行為がハラスメントになっていないかを考えながら仕事をしていく必要があるでしょう.
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