理学療法士からみた膝蓋大腿関節痛を有するクライアントのバイオメカニクス

変形性膝関節症
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 理学療法士からみた膝蓋大腿関節痛を有する症例のバイオメカニクス 

本邦では膝痛と言えば変形性膝関節症例における膝関節内側の疼痛を想起される方が多いと思いますが,欧米ではAKP(Anterior Knee Pain)と呼ばれる膝関節前面の疼痛を訴えるクライアントが少なくありません.

これは本邦における高齢者の膝関節に内反アライメントの者が多いといったところに起因するものですが,海外ではAKPに対する論文報告というのは非常に多いです.

本邦でも若年者を中心に膝関節前面の疼痛を訴えられる症例は少なくありません.

今回はこのAKP(膝関節前面の疼痛)の原因となることが多い膝蓋大腿関節痛について理学療法士の視点で考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 膝蓋大腿関節痛を有するクライアントの身体的特徴 

膝蓋大腿関節痛を有するクライアントの身体的特徴についても多くの方向で明らかにされております.

膝蓋大腿関節痛を有するクライアントは健常者と比較して立位時の足部外反角度が増加していることや,通常歩行やランニング時の足部外反角速度が増加していること,内側縦アーチが低下していることが報告されております.

また膝蓋大腿関節痛に関連する疫学研究によると膝蓋大腿関節痛の発症と舟状骨沈降度(Navicular Drop,舟状骨結節が荷重によって低下するときの移動距離)あるいは偏平足との関連が報告されており,通常歩行時に膝蓋大腿関節痛を訴えるクライアントの方が初期接地期における後足内側部の接触面積が増加することが明らかにされております.

さらに膝蓋大腿関節痛を訴えるクライアントの方が股関節内転角度や膝関節外転(外反)角度が大きいことが報告されております.

加えて膝蓋大腿関節痛を訴えるクライアントは健常者よりもQアングルが大きいという報告も多くみられます.

近年の報告では,膝蓋大腿関節痛発症の原因として下股関節の筋力低下が示されております.

特に股関節外転筋力,股関節外旋筋力の低下によってknee inを制御することが不可能となり膝蓋大腿関節への力学的ストレスが増加するというメカニズムが最も広く認知されております.

 

 

 

 

 膝蓋大腿関節痛に対するバイオメカニクス的アプローチ 

膝蓋大腿関節痛は膝蓋大腿関節の解剖学的構造の変化や大腿四頭筋による伸展機構の不全,筋のアンバランス,靭帯による制限の異常などにより起こるものとされている.

このなかで理学療法によってアプローチが可能なのは筋のアンバランスです.

特に内側広筋斜頭(VMO)と外側広筋(VL)は膝蓋骨のアライメントに影響する筋であり,これらの筋力や活動パターンの変化が膝蓋骨のアライメントを変化させます.

すなわち内側広筋斜頭は,膝蓋骨を内側に引き,外側広筋は外側に引く作用があり,内側広筋斜頭の萎縮などにより外側広筋が内側広筋斜頭よりも強いといった大腿四頭筋の不均衡が起こると,膝蓋骨の安定性の減少につながり,さらには膝蓋骨の外側変位による膝蓋大腿関節の痛みを引き起こします.

このような症例に対しては内側広筋斜頭のみを選択的にトレーニングすることが重要となります.

 

 

 

 内側広筋斜頭/外側広筋比の重要性 

内側広筋斜頭の筋力が増強されたとしても外側広筋が同様に強化されてしまうと,外側変位というアライメントの不良が改善されません.

このような内側広筋斜頭の選択的トレーニングとして,股関節内転が内側広筋斜頭の筋活動を増加させるとした報告は古くから多くの報告があります.

ただし外側広筋と比較して内側広筋斜頭の筋活動を大きくするような選択的トレーニングが可能かどうかは意見が分かれるところです.

内転動作が内側広筋斜頭を促通する理論的根拠としては,内側広筋斜頭が大内転筋に起始していることにより大内転筋の収縮が内側広筋斜頭を伸張し,そのために内側広筋斜頭の活動性が上がるとしたものや,股内転に力を入れることにより内側側副靭帯や関節包にストレスを与え,それが内側広筋斜頭や内側ハムストリングスの活動を上げるとしたものがあります.

これらの仮説に基づき,実際に内側広筋斜頭/外側広筋比を求めたものとして,OKCにおいては股関節内転トレーニングが内側広筋斜頭に対して効果的であることが明らかにされておりますが,下肢伸展挙上に股関節内転を加えても内側広筋斜頭/外側広筋比に変化はなかったとされております.

OKCで内側広筋斜頭/外側広筋比を調べた報告によると,股関節内転だけでは内側広筋斜頭/外側広筋比は増加せず,股関節伸展と内転動作を組み合わせることによって増加するとされております.

CKCに関する報告では,股関節の内転の効果をCKCとOKCにおいて比較し,CKCのほうが内側広筋斜頭/外側広筋比が大きくなるとされております.

このように内側広筋斜頭/外側広筋比に関する多くの報告はありますが,内側広筋斜頭を選択的にトレーニングできるかどうかに関しては,結論は出ていない状況です.

さらに内側広筋斜頭の選択的トレーニングを示した報告のすべては健常者のものであり,クライアントにおいて効果を示したものは少ない状況です.

 

 

 

 

 股関節・足関節周囲筋のトレーニングが有用 

過去には内側広筋斜頭に対する選択的トレーニングが盛んに行われていたわけですが,明確な効果が現れていないため最近では股関節や足部へのアプローチに関する報告が増えてきております

現在推奨されている治療法の一つとしては,股関節外転筋トレーニングが挙げられます.

つまりknee inとなると,Qアングルが増加し,膝蓋骨を外側に引くベクトルが大きくなるため,内側広筋斜頭と外側広筋のアンバランスを改善するのではなく,knee inを減少させるアプローチとして股関節外転筋や外旋筋の筋力トレーニングを行うことが推奨されております

また足部と膝のアライメントが強く関係するため,足部アライメントの変化による下肢キネマテイクスへの影響を検討する研究も近年多数報告されております.

 

 

 

 

 臨床での応用について 

膝蓋大腿関節痛の症状改善のため,後足部の内反を促すインソール(内側ウエッジ)の使用が有効な介入方法として報告されております.

一方で,内反作用を有さないインソールを入れても疼痛が軽減するという先行研究もあるため,足部の外反制限による治療効果ではなく,単なるインソールの衝撃吸収作用による介入効果ではないかといった見解もあります.

 

 

 

今回はこのAKP(膝関節前面の疼痛)の原因となることが多い膝蓋大腿関節痛について理学療法士の視点で考えてみました.

内側広筋斜頭/外側広筋比に着目したトレーニングと合わせて,股関節・足関節といった隣接関節に対するアプローチが非常に重要となります.

膝関節だけでなく,股関節・足関節にも着目した上でアプローチを行うことが重要です.

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