糖尿病は運動器疾患?

足関節周囲外傷
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 糖尿病は運動器疾患? 

糖尿病足病変は糖尿病神経障害・糖尿病網膜症・糖尿病腎症とならび糖尿病患者の日常生活を大きく制限する,重大な合併症のひとつです.

病変が潰瘍から切断にまで進行すれば,クライアントのQOLは著しく制限されるばかりか,ときに数回に及ぶ潰瘍形成・切断により生命予後すら危ぶまれます.

足病変の原因としては,糖尿病性末梢神経障害による重度の感覚異常や靴擦れ,皮膚の肥厚や腓砥,爪病変などの外的要因が挙げられます.

中でも足指および足関節の関節可動域制限は,靴の内部で皮膚への過剰な摩擦を生じさせ,靴擦れの直接の原因となるだけでなく,歩行中,足底への異常な圧荷重を生じ,これも腓砥などの原因となります.

糖尿病患者の関節可動域制限は,足病変の重要なリスクファクターとなりますが,実態は十分に明らかにされておりません.

 

通常フットケアは予防的な側面から,足病変予防の患者教育や定期的な足の観察爪や皮膚に対するスキンケアなどが行われますが,これまでは足・足指の関節可動域制限に対する観察や処置はあまり注目されておりませんでした

今回ご紹介する研究では,糖尿病患者の足・足指関節可動域制限に関する実態調査を行い,糖尿病のフットケアに理学療法士が参加する際の,フットケア(理学療法)の内容について考察がなされております.

 

 

 

 

 糖尿病による関節可動域制限 

この研究では糖尿病の有無による母趾MP関節,足関節の他動的可動域を比較しておりますが,母趾MP関節底屈は糖尿病群23.0±9.8°に対し,対照群では32.8±9.4°,MP関節背屈は糖尿病群61.4± 12.2°に対し,対照群では71.9±7.8°と有意に糖尿病群の関節可動域は低下しております.

さらに足関節背屈は糖尿病群14.8±5.8°に対し,対照群では 19.0±4.6°であり,足関節底屈は糖尿病群44.8±9.9°に対し,対照群では46.0±9.7°と有意に糖尿病群の関節可動域は低下していた.

母趾MP関節・足関節いずれも可動域が制限されていることがわかります.

 

 

 

 

 神経障害の有無と足関節・母趾MP関節の他動的可動域の比較 

神経障害の有無と関節可動域の連関を3群で検討しております.

その結果,母趾MP関節底屈は糖尿病神経障害有群22.2±10.9°,糖尿病神経障害無群24.1±10.8°,対照群32.8±9.5°で,糖尿病神経障害有群が最も制限されていた.

母趾MP関節背屈は糖尿病神経障害有群61.0±12.9°,糖尿病神経障害無群61.4±11.4°,対照群71.4±10.0°で,屈曲と同様に糖尿病神経障害有群が制限されております.

足関節底屈は糖尿病神経障害有群44.7±9.3°,糖尿病神経障害無群46.0±9.4°,対照群 50.5±8.7°で,糖尿病神経障害有群が制限されております.

足関節背屈は糖尿病神経障害有群13.5±5.4°,糖尿病神経障害無群17.1±5.9°, 対照群 19.2±4.3°で,糖尿病神経障害有群が有意に制限されております.

 

 

 

 

 この研究からわかること 

今回の調査から,健常者に比較して糖尿病患者において足部および母趾関節可動域制限が顕著であることが明らかにされております.

また神経障害を有する群の足関節背屈可動域は,糖尿病群および対照群に比較して有意に低下しておりました.

しかしほかの関節では,神経障害を有する群は糖尿病群に比較し,関節可動域が制限されている傾向がみられたが,有意な差は認められておりません.

糖尿病による関節可動域制限の成因として,関節周囲の軟部組織の糖化現象が挙げられております.

糖化により結合組織のコラーゲン架橋が増加し,これが関節の可動性を低下させると考えられており,長期にわたる高血糖に直接的な原因があると考えらます.

また糖尿病神経障害の有無で足底圧の相違を比較した研究では,神経障害をもつ症例に有意に足底圧が高く,さらに可動域と足底圧の有意な関連が認められ,神経障害をもつ症例の多くに足潰瘍の既往があることが報告されております.

つまり関節可動域制限に伴う足圧異常は,腓砥発生との関連で潰瘍形成の直接的な危険因子と考えられているわけです.

円滑な歩行のためには,下肢関節のスムーズなはたらきが重要となります.

足関節・母趾MP関節の関節可動域制限が,足底圧の上昇や足底圧の分布異常を引き起こすメカニズムについては,歩行中足底が接地後,からだが前方へ移動する際足関節の背屈が必要となりますが,背屈制限が存在することにより,重心の前方への移動が不十分で,荷重の中心が前足部に残った状態で踏み切りを余儀なくされます.

さらに地面を踏み切る直前,母趾MP関節の背屈が必要となりますが,背屈が制限されることにより,踵を持ち上げる力が母趾MP関節に集中し,足趾部の圧が上昇することを挙げられます.

このような圧の上昇や,靴と皮膚の異常なずれ(勇断力)は腓砥形成の促進因子となり,潰瘍形成の直接的な原因になることから,十分な関節可動域の維持や改善を目的とした治療が必須と言えます.

可動域改善に関する介入研究もいくつか行われておりますが,週2回の頻度で10週間の理学療法を行い,関節可動域が改善し,足底圧の減少も同時に得られたと報告されております.

糖尿病に起因する足部の問題は,皮膚の外傷などにとどまらず,関節可動域異常や筋力の低下,足部軟部組織の柔軟性の低下にまでおよび歩行に際して歩容や足部への荷重位置荷重量などに直接影響を及ぼすことから,皮膚や爪などの外表面の観察と同様足部および足趾の関節可動域や筋力などに注目したフットケアの重要性が示唆されます.

 

糖尿病というと内分泌系の障害といった捉え方や内部障害といった捉え方が一般的ですが,日本糖尿病理学療法学会が提唱するように,糖尿病を運動器疾患として捉える必要性を痛感する報告だと思います.

この研究から糖尿病患者に高頻度で足部・足趾の関節可動域制限が認められ特に足関節背屈制限は神経障害を有するクライアントにおいてはより可動域制限が大きいことがわかります.

通常のフットケアでは,皮膚や爪の観察に比較して,関節可動域制限や筋力に関して,十分な注意が払われているとは言い難く,糖尿病の病期にかかわらず,初期から足部の関節可動域の維持ならびに筋力の維持向上も,フットケアの重要な目的と考えられます.

 

 

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