糖尿病足病変発症のメカニズム

足関節周囲外傷
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 糖尿病足病変発症のメカニズム 

糖尿病患者は経年的に増加しており,理学療法・作業療法対象者の中にも,糖尿病を合併した症例というのは少なくありません.

糖尿病合併例の中でも足病変を合併している症例を担当すると,廃用症候群を防ぐうえでも身体活動量を減少させたくないと考える一方で,活動量の増加が足病変を増悪させる可能性も危惧されます.

理学療法士・作業療法士もまた糖尿病足病変の発症メカニズムについて知っておくことが重要となります.

今回は糖尿病足病変の発症メカニズムについて理学療法士の視点で考えてみたいと思います.

 

 

 

 創傷の発症要因 

創傷の発生要因は,大きく分類すると2つのパターンがあります.

第1の要因は動脈疾患,静脈疾患膠原病などに起因する循環障害です.

循環障害は虚血による潰瘍を惹起するため,身体活動と関連せずに創傷を引き起こす場合もあります.

つまり身体活動量を抑制しようが増やそうが創傷を発症するということです.

第2の要因は糖尿病神経障害です.

糖尿病神経障害はさまざまな症状を引き起こしますが,足病変の発生においては,下肢,特に足部の感覚障害が問題となります.

神経障害による感覚障害は脱失レベルにまで至ってしまうため,重症例では皮層の損傷のみでなく,骨折などでも痛みを感知しなくなるほどです.

この感覚障害は当然ながら,創傷の発生を繰り返す要因となります.

このような防御機構が消失した症例においては,熱傷・外傷・爪周囲炎・靴ずれなどの外的な損傷を容易に引き起こす可能性が高い状態にあるといえます.

糖尿病神経障害による自律神経障害は,皮膚の発汗を障害し,皮膚乾燥による亀裂の発生を引き起こします.

これらも創傷発生のトリガーとなります.

このように循環障害による虚血,神経障害による防御機構の消失が創傷発生の主要因となります..

 

 

 

 足底圧上昇による足病変の進行 

感覚障害によって防御機構が失われた足部においては,外的な要因により損傷が発生します.

これらの外的な要因の1つに,足底負荷量の上昇という因子が挙げられます.

防御機構が消失した足部に対して何らかの要因による力学的ストレスが加わることで胼胝形成を引き起こし,皮下潰瘍が形成されてしまいます.

足底負荷量上昇や胼胝形成は潰瘍形成の独立した危険因子であるとされており,創傷の発症・再発予防や治癒のためには負荷量の軽減が重要となります.

足底負荷量と創傷の再発を検討した方向によると,6kg/cm2,10kg/cm2以上の圧力が再発の独立した危険因子であるとされております.

一方で創傷治癒のための軽減目標値に関しては結論が得られていないため,最大限の除圧を目指すことが重要となります.

足底負荷量の上昇には,さまざまな因子が関与します.

糖尿病患者に固有に発生する運動機能障害としては,関節可動域制限,足部変形,小切断,足底皮膚の硬化,足底皮下軟部組織厚の減少などが危険因子として報告されております.関節可動域制限,足部変形,小切断は特に理学療法とかかわりの深い障害でありますので,理学療法士の介入も重要となります.

 

 

 

 関節可動域制限と足底圧 

糖尿病患者では,足関節背屈可動域や第1中足趾節関節伸展可動域が制限されます.

背屈可動域制限はアンクルロッカーを阻害し,母趾への重心移動を制限するため,前足部(中足骨頭部)への荷重を増やす要因となります.

他動的背屈可動域が何度に制限されると足底負荷量が増えるのかは明らかにされておりませんが,第1中足趾節関節の伸展制限は,フォアフットロッカーを制限する要因となります.

このためヒールオフ時のモーメントが母趾足底へと加わることとなり,同部位の足底負荷量が上昇します.

第1中足趾節関節の伸展制限に関しては,非荷重時に制限がみられなくとも,荷重時や歩行時に機能的に伸展運動が阻害されるfunctional hallux limitation(FHL)という病態が存在します.

主に荷重時の中足骨頭の挙上によって機能的に伸展運動が阻害される病態です.

この場合,第1列への荷重が困難となるため,第2~4中足骨頭部へと荷重が移動します.

 

 

 

 足部変形と足底圧 

足部変形も足底負荷量の上昇には大きな影響を与えます.

糖尿病患者ではハンマートゥ・クロウトゥが多く認められます.

その発生原因は,運動神経障害による足部のintrinsic muscleの萎縮により引き起こされると推測されます.

ハンマートゥ・クロウトゥ,中足骨頭部の足底負荷量を上昇させることが明らかにされております.

そのメカニズムは,中足趾節関節の過伸展により中足骨頭下の脂肪組織が前方へ移動するためであると推測されております.

 

また糖尿病による自律神経障害は足底の動静脈シャントを障害し皮膚の毛細血管循環量を減少させます.

動静脈シャント障害は,骨の血液循環量を過剰にするため骨代謝が冗進しシャルコー関節症を引き起こします.

シャルコー関節症は,激しい骨破壊と変形を引き起こし,最終的にはロッカーボトム変形を呈します.

この場合,通常では荷重がなされない立方骨や舟状骨が足底に突出し,足底負荷量上昇の要因となります.

また距骨下関節を中心とした後足部の回内・回外変形,内側縦アーチにおける凹足,扁平足,前足部の回内・回外変形なども足底負荷量の偏位に影響を及ぼします.

 

 

 

 歩行の影響 

足底負荷量は,歩行の影響も強く受けます.

どのような歩行を行うかにより,負荷量は敏感に変化します.

足底負荷量に影響する一般的な因子として,歩行速度や歩幅が挙げられます.

歩行速度が上昇するに従い,垂直成分の負荷量が上昇するとされております.

歩幅に関しても,拡大すればするほど垂直成分の負荷量が上昇します.

一方で,歩き方も足底負荷量に強い影響を及ぼします.

例えば,糖尿病神経障害患者では,そろえ型歩行においては,先行する足部の前足部足底負荷量は前型歩行と比較して87%減少し,踵部の足底負荷量は46%増加することが明らかにされております.

 

 

 

今回は理学療法士の視点で糖尿病足病変について考えてみました.

われわれ理学療法士が糖尿病足病変を進行させないように介入するためには,関節可動域制限,足部変形,歩き方に着目する必要があります.

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