足関節外傷後の足関節前方部痛について -長母趾屈筋と距骨の運動に着目して-

足関節周囲外傷
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 足関節外傷後の足関節前方部痛について 

足関節背屈運動時に足関節前方部に疼痛を訴える症例は少なくありません.

今回はみんなの理学療法から足関節外傷後の足関節前方部痛について,長母趾屈筋と距骨の運動に着目した報告を紹介したいと思います.

 

 

 

 研究の要旨 

この研究では,足関節外傷後にしゃがみ動作や階段降段動作などの足関節背屈運動を強制される動作時に,足関節前方部痛が残存した 2 症例に関して報告しております.

2 症例ともに理学所見では足関節背屈可動域に左右差はないものの,足関節背屈最終域において母趾の伸展制限と健側に比べ患側足部の前方変位がみられるといった特徴がありました.

これらの所見から長母趾屈筋の伸張性低下が,足関節背屈運動に伴う距骨の後方移動を制限したことで,背屈運動時に足関節前方部でのインピンジメントを引き起こしているのではないかと推察した上で,介入を行っております.

この視点は,足関節背屈角度に問題がなくても,足関節背屈運動が正常に行われているかを評価する上で重要であると考えられます.

 

 

 

 足関節外傷後の足関節前方部痛 

足関節外傷後にしゃがみ動作や階段降段動作など足関節背屈運動を強制される動作時に,足関節前面の痛みや圧迫感を訴える症例を臨床上も経験することが多いです.

このような症状について,長母趾屈筋の伸張性低下が足関節前方でのインピンジメントを惹起させているとする報告は散見されるものの,臨床的な所見を提示している文献は多くありません.

今回の報告では,足関節外傷後に階段降段時としゃがみ動作時にわずかな疼痛が残存した症例に関して考察がなされております.

 

 

 

 症例 1 

この症例は40 歳代の女性でビーチバレーボール中に右アキレス腱断裂を受傷し保存療法が施行された症例です.

4 週後にギプス固定抜去され理学療法を施行しております.

理学療法終了時の理学所見としては疼痛無く,独歩も可能であったようですが,歩行時の足部は外転位を呈しております.

階段降段時としゃがみ動作時に右足関節前方部に若干の疼痛が残存しているのが大きな特徴でありました.

背屈可動域は 10 度で左右差は無かったようですが,足底面から観察すると,背屈運動に伴い足部が前方に偏位しているといった特徴がありました.

さらに足関節背屈最終域にて母趾の伸展が健側に比べ制限されておりました.

 

 

 

 症例 2 

60 歳代の男性で魚釣り中の転倒により,右足関節内外果骨折を受傷し,骨接合術を施行された症例です.

理学療法終了時の理学所見としては,症例 1 と同様,疼痛は無く,独歩可能でありましたが,歩行時の右下腿は外旋している上京でありました.

階段降段時や右足関節背屈を強制させる動作時において右足関節前方部にNRS1 ~ 2 程度の疼痛が残存しておりました.

背屈可動域は 10 度で左右差はありませんでしたが,足底面から観察すると,背屈運動に伴い足部が前方に偏位しておりました.

さらに足関節背屈時に足部の外転と母趾,第 2 趾が屈曲位を呈しておりました.

 

 

 

 この研究報告からわかること 

今回の2 症例は歩行時の疼痛は無いものの,階段降段時やしゃがみ動作など背屈運動を強制される動作において足関節前方部に軽度の疼痛が残存しておりました.

2 症例の特徴的な所見としては,日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会が制定した,腓骨への垂直線と第 5 中足骨がなす足関節背屈角度に左右差が無かったこと,背屈動作時の足部を足底から観察すると健側に比べ患側足部が前方へ変位し,母趾の伸展制限を認めたこと,また歩行時に下腿,足部は外旋,外転位を呈していた点が挙げられます.

足関節背屈運動は脛骨,腓骨から構成される関節に距骨が後方へ入り込む運動です.

距骨の後面には長母趾屈筋腱溝が存在し長母趾屈筋が走行しております.

長母趾屈筋は足関節周囲の外傷後は筋損傷を合併し,筋自体の線維化や骨との間の癒着も生じやすく拘縮の原因になりやすく,長母趾屈筋の腱線維が他趾へ分枝しているため拘縮した際は母趾のみではなく他趾も屈曲位を呈することが知られております.

長母趾屈筋の伸張性低下は,足関節背屈運動に伴う距骨の後方移動を制動するばかりではなく,距骨を前方へと押し出し足関節前面痛にも関与するため足関節前面痛を有する患者に対しては,長母趾屈筋の伸張性改善が重要であるとカンガエラレマス。

今回の症例では,長母趾屈筋の伸張性低下が,足関節背屈運動に伴う距骨の後方移動を制動し,足関節前方部でのインピンジメントを惹起させた可能性が考えられます.

またこういった疼痛を回避するために足部を外転させていた可能性も考えられます.

足関節背屈可動域は計測上,問題がなくても,関節運動が正常に行われているか,またそのための十分な軟部組織の柔軟性を有しているかを評価することが重要であると考えられます.

足関節背屈可動域を評価するうえで注意する点として,背屈時に足底から観察し足部が前方へ変位していないか.背屈位で母趾の伸展制限がないかを確認する必要性があると考えられます.

 

 

 

足関節背屈時に距腿関節前方部に疼痛を訴える症例は少なくありませんので,こういった視点は非常に重要だと思います.

背屈運動時には長母趾屈筋の伸張性と距骨の後方移動に着目して評価を行う必要があると考えられます.

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