前額面での股関節不安定性の評価

人工股関節全置換術
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 前額面での股関節不安定性の評価 

変形性股関節症例・人工股関節全置換術例・大腿骨近位部骨折例に見られる歩容として前額面上での股関節不安定性が挙げられます.

この前額面上における股関節不安定性は,Trendelenburg徴候やDuchenne徴候といった歩容として表出されることが多いのですが,このTrendelenburg徴候やDuchenne徴候の改善に難渋するケースも少なくありません.

今回は前額面における股関節不安定性の評価について考えてみたいと思います.

 

 

 

 Trendelenburg徴候とDuchenne徴候の解釈 

荷重位において関節安定性が高い状態というのは,大腿骨頭が関節窩に対して求心位を保つことができていることを意味します.

前額面における片脚立位において,股関節外転筋による関節モーメントを生み出すことが困難な場合には,荷重側骨盤が挙上するTrendelenburg徴候や,荷重側の骨盤が下制するDuchenne徴候が生じるわけです.

これらのTrendelenburg徴候やDuchenne徴候は,筋力低下による関節モーメント減少以外の要因でも起こることがあります.

例えばTrendelenburg徴候は股関節外転可動域制限, 足圧中心の外力化と関連し,Duchenne徴候は股関節内転可動域制限,足圧中心の内方化と関連することが報告されております.

股関節の安定性に着目すると,この2つの破行というのは実は対称的な跛行であることが分かります.

Trendelenburg徴候は股関節内転位での荷重となり.寛骨臼側の荷重面積が減少し大腿骨頭の外方への剪断力が生じやすくなります.

一方でDuchenne徴候は股関節中間位もしくは外転位での荷重となるため,寛骨臼の荷重面積は比較的維持されていると言えます.この2つの破行の前額面における関節安定性を比較すると,Duchenne徴候に比べてTrendelenburg徴候のほうが関節不安定性を招きやすい破行と言えます。

特に変形性股関節症例では大腿骨頭が外上方偏位しているケースが多く,Trendelenburg徴候に伴う関節不安定性によって変形性股関節症の進行を助長してしまう可能性が考えられます.

 

 

 

 前額面におけるアライメントの評価 

Trendelenburg徴候・Duchenne徴候といった2つの破行のタイプを判別する評価法として,片脚立位での骨盤側方傾斜を評価する方法が挙げられます.

歩行中の跛行を評価するのは結構難しいので,まずは静的に評価を行います.

このテストはTrendelenburg testとも呼ばれますが,方法としては片脚立位を下肢挙上90°で体幹の側方傾斜を伴わずに支持側骨盤を下制できるかどうかを評価します.

このテストでは,体幹の側方傾斜をさせずに挙上側の股関節を90°屈曲する必要がありますので,股関節外転筋のより強い収縮が要求され,通常の片脚立位よりも難易度は高いといえます.

上前腸骨棘をランドマークとして骨盤の側方傾斜を評価しますが,支持側骨盤が挙上してしまう場合や体幹の支持側への傾斜を伴う場合を陽性と判断します.

支持側骨盤が挙上する場合を支持側骨盤挙上タイプ(Trendelenburg徴候),体幹の支持側への傾斜を伴う場合を支持側骨盤下制タイプ(Duchenne徴候)に分類します.

前額面だけでなく水平面における回旋も観察することが重要です.

 

 

 Trendelenburg testにおける水平面の評価 

股関節不安定性に着目すると支持側骨盤挙上タイプ(Trendelenburg兆候)が問題となります.

また臨床的には骨盤の側方傾斜に伴い,骨盤の水平面上での回旋も生じるため,支持側骨盤の前方もしくは後方回旋の有無を評価することも重要となります.

支持側骨盤が前方回旋すると,股関節は相対的に伸展・外旋位となり,股関節の被覆度が低下し不安定となります.

一方で支持側骨盤が後方回旋すると,股関節の相対的に屈曲・内旋位となり,股関節の被覆度が高まり,安定性が増します

例えば右片脚立位に伴い骨盤の挙上・右回旋が生じる場合では,骨盤の挙上によって前額面における臼蓋被覆は低下し,荷重面積は減少しますが,水平面ではそれを補うように荷重面積が増大します.

 

 

 

 股関節外転筋の評価 

関節不安定性を有する寛骨臼形成不全股では中殿筋の著明な筋萎縮とモーメントアームの減少が生じることが報告されております.中殿筋の中でも特に後部線維が関節求心力を生み出すことが報告されております.

また関節角度特異性を考えると,Trendelenburg徴候を有する症例では患側骨盤を下制した肢位での中殿筋の筋力が低下しているケースが少なくありません.

そのため股関節外転の自動運動にて患側骨盤を下制させた肢位での外転筋力を評価することが重要となります.

さらに中殿筋だけでなく小殿筋も歩行においては重要となります.

股関節外転筋のうち作用ベクトルを考えると小殿筋は大腿骨頭を関節窩に押し付ける方向に作用することが知られております.

健常例では,小殿筋は片脚立位での筋活動が中殿筋よりも高いことが報告されておりますが,変形性股関節症例では小殿筋に筋萎縮が生じやすく脂肪変性も重度となることが報告されております.

これらのことから小股筋は股関節の安定性に寄与するものの,機能低下が生じやすい筋であると言えます.

したがって小殿筋の機能を評価することが重要となります.

小殿筋は股関節屈曲位での内旋運動にて収縮することが報告されております.

小殿筋の機能評価は股関節内旋の自動運動にて評価します.

小股筋は筋断面積が比較的小さい筋であるため,筋力を評価するというよりも自動運動の拙劣さや筋収縮-弛緩のスムーズさを観察

することで小殿筋の筋機能を評価する方法が勧められます.

 

 

 

 股関節以外からの影響 

Trendelenburg徴候・Duchenne徴候は股関節周囲の問題のみならず,他部位からの影響によって起こることも少なくありません.臨床的に片側の股関節疾患患者において上半身重心が健側に変位している症例をよく経験します.

これは患側下肢への荷重を避けるように,身体重心を健側に寄せる動作戦略によるものと考えられますが,このように上半身重心が健側に変位した症例での患側下肢での荷重において,股関節中心から重心線までの距離が長くなる(モーメントアーム長が大きくなる)ため,股関節に生じる内転方向の外部モーメントが大きくなり,それに相応する股関節外転筋による外転方向の関節モーメントがより必要となります.

そのため上半身重心が健側に変位した症例では,Trendelenburg徴候が生じやすくなります

上半身重心の変位の評価として座位での側方リーチにおける胸椎の側屈可動性を健側と患側で比較する方法が有用です.

観察してみるとわかるのですが,患側へのリーチにおいて患側凸の胸椎側屈可動域が減少している症例は少なくありません.

またTrendelenburg徴候は足圧中心の外方および後方化が関与するため,足関節の背屈可動域制限および距骨下関節の回内可動域制限の有無も確認する必要があります.

 

 

 

 

 

今回は前額面における股関節不安定性の評価について考えてみました.

前額面における股関節不安定性を考える上では,水平面の評価も欠かすことができません.

また股関節の筋機能の評価と合わせて,胸腰椎や足部といった他部位からの影響も考慮した上で,Trendelenburg徴候・Duchenne徴候の評価を行う必要があると思います.

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