股関節応力を考えた理学療法を行ってますか?

変形性股関節症
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 股関節応力を考えた理学療法を行ってますか? 

運動器疾患に限ったことではありませんが,われわれが理学療法をはじめとする運動療法を提供する際には,関節応力というのが生じます.

この関節応力は時には,クライアントに対して過負荷となることもありますので,クライアントの状況や,この関節応力を考慮した上で,運動療法を行うことが重要となります.

今回は股関節応力に着目した運動療法について考えてみたいと思います.

 

 

 

 身体運動と股関節応力 

身体にはさまざまな力が作用します.

一般的には,重力あるいは身体外部からの負荷で生じる力を外力,さらには筋収縮力や軟部組織の弾性力による力を内力と呼びますが,この外力や内力の影響により関節に作用する力を,関節応力と呼びます.

ここでいう応力は変形に抵抗する力を意味しますので,関節応力は関節反力とも称されます.

 

 

 

股関節の人工骨頭に圧センサーを設置して最大圧力を計測した研究によれば,歩行(歩行補助具非使用)による圧力が5.5MPaであるのに対して,昇段動作では10.2MPaとかなり関節応力が高くなることが分かります.

一方で,自転車エルゴメータをこぐ動作では,1.6MPaと非常に関節応力は低くなります.

関節痛の強いクライアントに自転車エルゴメータを使用して運動療法を行うというのは,この関節応力を考慮してということになります.

この研究では,座面の高さが異なる椅子からの立ち上がりに作用する力も計測されておりますが,38cm高では15.0MPa,45cm高では13.1MPa,56cm高では9.2MPaという結果であり,座面の高さが低いほど股関節に作用する圧力が大きくなることがわかります.

 

さらにわれわれ理学療法士が実践することの多い筋力トレーニングに関しても股関節応力が計測されております.

最近は用いられることが少なくなってきているかもしれませんが,下肢の運動器疾患の運動療法として昔から用いられることの多い,背臥位で下肢を伸展させたまま持ち上げる下肢伸展挙上(SLR:Straight Leg Raising)は,股関節への荷重が禁止されている時期にも実施されることがありますが,荷重負荷がかかっていないからといって,関節応力が作用していないわけではありません.

3次元剛体バネモデルにより関節応力を算出した研究よると,股関節屈曲0°の開始肢位でも体重以上の力が作用しており,軽度挙上するとその力は体重の3倍近くにも達するとされております.

しかしそれ以上に挙上運動を続けると関節応力は漸減します.

つまりSLRを行う場合には,運動の初期に最も大きな力が股関節に作用することになります.

股関節屈曲の主動作筋である腸骨筋・大腰筋は小転子に付着しますので,股関節を屈曲させたほうが起始部に向けて停止部が直線的となり筋力が発揮しやすくなります.

したがって関節応力を減じた上で,腸骨筋や大腰筋のトレーニングを実施したければ,深屈曲位で股関節屈曲運動を行う方法が有用であると考えられます.

 

 

 

 

 立位・歩行時に作用する股関節応力 

立位時における股関節応力を考える場合には,Pauwelsの理論がその基礎となります.

 

この図は右片脚立位をして骨盤を平衡に保っている際の模式図です.

仮に下肢の重量が体重の1/5であるとすると,股関節に作用する外力は体重の5/6となります.

この場合の主たる内力は中殿筋を中心とした股関節外転筋力です.

骨頭中心から外力の作用線までの距離をa,骨頭中心から内力の作用線までの距離をbとすると,a : b=2 : 1ですので,内力である股関節外転筋力は外力の2倍が必要となります.

仮に体重が60kgであれば,股関節外転筋力は100kgwの力が求められるわけです.

この模式図では,股関節を第1のてこと考えることができますので,股関節応力は外力と内力の和,つまり150kgw(体重の2.5倍)の力が作用することになります.

 

同様の条件で左手に杖を持った場合には,股関節外転筋力は少なく済み,股関節応力も減少します.

骨頭中心から杖の力の作用線までの距離(c)を仮に40cm,杖を押す力を5kgwとすると,杖の先端が床面と接触した部分から5kgwの反力(床反力)が生じます.

計算上では杖を使用しない条件では150kgwの負荷が加わるわけですが,杖を使用することでこの負荷を125kgwまで軽減することができます.

 

 

 

今回は股関節応力に着目した運動療法について考えてみました.

こういった知識は基本的な知識としておさえた上で,適切な運動療法を選択できるようにしたいものです.

 

参考文献

1)Hodge WA ,et al : Contact pressures from an instrumented hip endoprosthesis. J Bone Joint Surg Am71(9) :1378-1386,  1989.

2)元田英一:筋骨格コンピュータモデルと三次元剛体バネモデルによる股関節の解析.関節外科22(2): 147-158, 2003.

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