地域在住高齢者におけるサルコペニアと閉じこもり発生の関連 年代によって閉じこもりの原因が異なる

介護予防
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 地域在住高齢者におけるサルコペニアと閉じこもり発生の関連 

一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,今年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

平成30年12月8-9日に神奈川県(パシフィコ横浜)で第5回日本地域理学療法学会学術大会が開催されました.

今回はこの第5回日本地域理学療法学会学術大会の一般演題の中から地域在住高齢者におけるサルコペニアと閉じこもり発生の関連について検討した研究をご紹介いたします.

 

 

 

 高齢者の閉じこもり予防 

高齢者の閉じこもり予防は,運動器の機能向上や認知機能低下予防とともに介護予防事業で取り組むべき課題の一つとして重要視されております.

現状ではすでに閉じこもり状態にある高齢者の特徴を報告する研究が多い一方で,縦断研究は少なく閉じこもり発生を予測する因子については不明な点が多いのが現状です.

つまりどういった高齢者が将来的に閉じこもりになりやすいかが不明なわけです.

特にサルコペニアは閉じこもり発生の強力な危険因子となることが予想されますが,閉じこもりとサルコペニアの関連性は明らかにされておりません.

今回ご紹介する研究では,高齢者のサルコペニアと閉じこもり発生の関連性を明らかにすることを目的としております.

将来的な閉じこもりの危険因子が明らかとなれば,閉じこもり予防のための理学療法介入の開発に寄与することが期待されます.

 

 

 

 

 研究の方法 

愛知県における高齢者機能健診に参加した 5,104 名のうち,要介護認定者,ベースラインで閉じこもり状態であった者を除いて,約 15か月後の追跡調査に回答の得られた 3,958 名(男性 1,980 名、平均年齢 71.8 歳)を最終的な分析対象としとしております.

かなり膨大なデータです.

閉じこもり状態の判定は,国内で広く使用される定義に倣い,「週に1回以上は外出していますか」の質問に,いいえと回答した場合と定義しております.

サルコペニアはAsian Working Group for Sarcopenia のアルゴリズムを用い,生体インピーダンス法 (TANITA , MC-980A) による筋量と身体機能(握力または歩行速度)の両方の低下を有するものとしております.

基本属性(年齢・性別・教育歴)に加えて,閉じこもり状態との関連が予想される因子として,身体的要因(1身体活動・2転倒経験・3下肢痛),精神的要因(1抑うつ症状 (Geriatric Depression Scale)・2認知機能 (Mini–Mental State Examination)・3転倒恐怖感)、社会的要因(1家族構成・2社会的役割・3友人との交流)の 9 項目を評価しております.

閉じこもりの発生の有無を従属変数,サルコペニアとその他の測定項目を独立因子とした多重ロジスティック回帰分析を全対象者,および年齢層別(前期高齢者/後期高齢者)に行っております.

 

 

 

 研究の結果 

3,958 名のうち83 名 (2.1%) で閉じこもり状態が新規発生しております.

多重ロジスティック回帰分析の結果,新規の閉じこもりと有意な関連を認めたのは,年齢 (OR[95%CI]=1.06 [1.02–1.10] ),サルコペニア (1.98 [1.04–3.77]),友人との交流の減少 (1.82 [1.03–3.23]) であったとされております.

また年齢層別分析の結果,前期高齢者では社会的役割の減少 (2.50 [1.06–5.91]) が,後期高齢者ではサルコペニア (2.80 [1.06–5.91]) と身体活動低下 (2.85 [1.28–6.37]) が新規の閉じこもり発生と関連していたとされております.

 

 

 この研究からわかること 

サルコペニアは身体活動低下とともに後期高齢者の閉じこもりの独立した危険因子であることが明らかになりました.

一方で前期高齢者では社会的役割の減少と閉じこもり発生に有意な関連がみられております.

この結果から考えると,閉じこもり予防のための理学療法介入を検討する際には,年齢層によってアプローチが異なることが推測されます.

前期高齢者では社会的役割を増やす介入が,後期高齢者ではサルコペニアの改善と身体活動量を増やす介入が有効であると考えられます

地域の通いの場なんかはまさにこれにぴったりだと思います.

通いの場の運営を前期高齢者に担っていただき前期高齢者の社会的役割を増やすとともに,前期高齢者が後期高齢者に運動指導を行うことで,後期高齢者の運動機能を改善させることができれば一石二鳥というわけです.

 

 

 

今回は第5回日本地域理学療法学会学術大会の一般演題の中から地域在住高齢者におけるサルコペニアと閉じこもり発生の関連について検討した研究をご紹介させていただきました.

年齢層別に閉じこもりに関連する因子が異なるというのはわれわれ理学療法士・作業療法士にとっても非常に有益な情報であると思います.

こういった情報を参考に閉じこもり予防に地域で活躍する理学療法士・作業療法士が増えるとよいですね.

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