変形性股関節症例における股関節可動域制限の特徴

変形性股関節症
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目次

 変形性股関節症例における股関節可動域制限の特徴 

変形性股関節症の理学療法を実践する上で,関節可動域の獲得は1つの課題となります.

病期によっても関節可動域制限の原因はさまざまですが,どういった機序で関節可動域制限が生じるかを理解しておくことは,関節可動域改善を図る上でも非常に重要です.

今回は変形性股関節症例における股関節可動域制限の特徴について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 変形性股関節症の単純X線画像と股関節の可動域の関連性 

変形性股関節症の病期の進行によって,関節の軟骨が広い範囲で変性・摩耗し,関節裂隙狭小化が起きることで徐々に疼痛が悪化します.

変形性股関節症は,臼蓋形成不全や関節裂隙などの所見から前期・初期・進行期・末期の4期に分類され,病期の進行にしたがって,疼痛の増悪とともに股関節の可動域制限がを呈するようになります.

変形性股関節症診療ガイドラインによると,関節裂隙の狭小化は股関節症による疼痛に関連する因子であることと,臼蓋形成不全においてCE角は疼痛に関連する因子であることが示されており,関節裂隙と臼蓋形成不全は非常に重要な臨床所見となります.

さらに前期から初期の股関節症の最小関節裂隙は股関節屈曲可動域と有意な相関関係を認めており,関節裂隙は股関節の可動域を予測するために有用な画像所見の一つであるといえます.

 

 

 

 骨形態異常と股関節可動性の特徴 

変形性股関節症に罹患することで股関節の可動域制限が出現する原因としては,関節裂隙の狭小化腰椎・骨盤アライメント異常寛骨臼の前捻大腿骨の形態異常等が考えられます.

関節裂隙の狭小化は,変形性股関節症による臼蓋形成不全や大腿骨頭の扁平化などによって起こります.

変形性股関節症の病期が進行すると,股関節の可動域が生じやすくなります.

また腰椎・骨盤アライメント異常が生じると,骨盤の前後傾が過度になります.骨盤の前後傾に関しては,単純X線における股関節正面像から骨盤腔の縦径を測定すると判断ができます.

骨盤前後傾角度が過大になると,股関節屈曲・伸展方向への可動域制限が生じやすくなります

さらに寛骨臼の前捻が強くなったり,大腿骨の形態異常が生じると,大腿骨寛骨臼インピンジメントによって,関節可動域制限が生じやすくなります.

加えて大腿骨の前捻角が増大すると,股関節の内旋可動域が増大する一方で,股関節の外旋可動域が低下してしまいます.

 

 

 

 前期から初期の股関節症の股関節可動域の特徴 

関節裂隙が比較的保たれている前期から初期の股関節症では,関節包内での大腿骨頭の動きが得られやすく,股関節運動によって疼痛を訴えることが少ないことから,可動域制限は軽度な場合が多いです.

前期から初期の股関節症で顕著な臼蓋形成不全を認める症例では,骨構造的に大腿骨頭と臼蓋が不安定となることに加えて,大腿骨頭と臼蓋の安定性にかかわる関節包,関節唇深部の股関節周囲筋などの軟部組織が機能不全をきたしており,機能的な面からも股関節の安定性が得られにくいために股関節外旋・内旋の可動域が大きくなる症例が多いといった特徴があります.

臼蓋形成不全があると寛骨臼被覆を代償するように関節唇は大きくなるとともに肥厚することもあるため,日常生活で無理な肢位を繰り返し強いられると,関節唇の損傷や断裂を引き起こし,これが疼痛の原因となることがある.

 

 進行期から末期の股関節症の股関節可動域の特徴 

関節裂隙の狭小化に伴い軟骨が変性する進行期から末期の股関節症患者では関節包内での大腿骨頭の動きが十分に得られにくく,さらに疼痛を伴うことで股関節の可動域が低下し,日常生活動作に支障をきたすようになります。

進行期から末期の股関節症の股関節の可動性障害の特徴を示している報告によると,すべての運動方向に可動域の低下を認めます.

 

 

 

 股関節症の腰椎・骨盤アライメント異常による股関節の可動域への影響 

臼蓋形成不全を伴う2次性の股関節症の多くは,骨盤前傾により大腿骨頭に対する寛骨臼蓋の相対的被覆が増すことで股関節を安定させることから,胸腰椎前彎・骨盤前傾位での立位姿勢となることが多いです.

この腰椎・骨盤アライメントは股関節屈曲拘縮(股関節伸展可動域制限)を招きます.

一方で,腰椎後弩・骨盤後傾位での立位姿勢では,寛骨臼蓋の前方被覆不全を起こすことで構造的に股関節は不安定となり,股関節症を発症することもあります.

こういった腰椎後彎・骨盤後傾アライメントでは,股関節伸展の最終域で股関節前面に疼痛を生じることがあります.

 

 

 

今回は変形性股関節症例における股関節可動域制限の特徴について考えてみました.

病期によっても関節可動域制限の原因はさまざまです.

どういった機序で関節可動域制限が生じるかを理解しておけば,X線画像からもどういった可動域制限が生じやすいかを予測することができます.

また関節可動域制限の原因が骨構造的なものか軟部組織の伸張性低下によるものかを見極めることができれば,介入によって可動域が改善し得るかどうかを判断する材料にもなります.

 

 

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