筋力評価について見直す

理学療法評価
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 筋力評価について見直す 

筋力評価については以前の記事でもご紹介させていただきましたが,ハンドヘルドダイナモメーター(Hand Held Dynamometer:HHD)を使用した筋力評価が一般的に用いられるようになってきました.

徒手筋力計を使った筋力評価~使い方を間違うと…~
前回は筋力測定におけるMMTの問題点についてご紹介いたしました.前回の記事でもご紹介いたしましたが,MMT4以上の場合には徒手で抵抗を加える必要がありますので,絶対的な基準が存在せず,信頼性の高い量的評価が困難であるといった問題があります.そこで一般的にはMMT4以上の場合には,筋力測定機器を用いた筋力評価が勧められます.今回はHand Held Dynamometerを使用した筋力評価の利点や注意点について考えてみたいと思います.

臨床上も経験することですが,ハンドヘルドダイナモメーター(Hand Held Dynamometer:HHD)で測定した筋力は強いにもかかわらず,筋力が動作に反映されていない症例というのも少なくありません.

一方で筋力は弱いにもかかわらず,円滑に動作を遂行できる症例も存在するわけです.

このような現象は「からだの使い方,筋の使い方」などと表現されますが,今回はこういった視点で筋力評価について考えてみたいと思います.

 

 

 

 筋力とは 

一般的に臨床場面で使われている筋力評価としては,MMTやハンドヘルドダイナモメーター(Hand Held Dynamometer:HHD)を用いた方法があります.

これらの評価は関節中心を軸に回転する力(関節モーメント)を定量化したものです.

筋は筋線維が集まり,筋周膜によって束ねられ筋束となり,さらに多数の筋束が集まることで一つの筋となります.

筋は末梢になるにつれて細くなり,腱とつながり骨に付着しております.

よって関節モーメントが発生するまでには,筋線維レベルでの筋線維張力,筋束レベルでの筋張力,筋レベルでの腱張力,関節を動かすための関節モーメントといった一連のつながりにより発生しているといった認識が必要です.

そのためMMTで得られた結果を理解するうえで,筋張力や腱張力など関連要素についての理解が重要となります.

 

 

 

 

 

 収縮要素と直列弾性要素 

特に収縮要素と直列弾性要素の関係はおさえておく必要があります.

収縮要素とは筋のことであり,収縮することで張力が発生します.

一方で直列弾性要素とは腱のことであり,伸張されたエネルギーを蓄積することができます.

例えば反動をつけないジャンプ動作と反動をつけたジャンプ動作では,後者のほうがより高く跳躍することができます.

これは膝関節を急速に屈曲させることで,膝伸展筋を伸張させ,腱の直列弾性要素のエネルギーを増大させ,強い力を発揮することができます.

したがって力の発生源というのは筋張力だけではなく,腱張力も関与しているということになります.

 

 

 

 従来の筋力評価方法の問題点 

臨床場面における筋力評価の方法は,前述したようにMMTやハンドヘルドダイナモメーター(Hand Held Dynamometer:HHD)を用いたものが多く,これらは等尺性収縮での筋力評価となります.

さらに動かしている関節は一つであることから単関節運動においての関節モーメントを評価していることになります.

しかし実際の動作場面を考えると動作が成立するまでには,まず筋収縮が生じ,それに伴い関節運動が起き,さらに複数の関節が同時に作用することで身体動作が発現します.

つまり動作場面における筋の収縮様式は等張性収縮で,動かす関節は2つ以上の多関節運動である場合が多いわけです.

例えば立ち上がり動作においては,まず足関節,膝関節,股関節で各筋の収縮が生じ,その結果,足関節背屈,膝関節伸展,股関節伸展運動が起こります.

このように実際の動作においては,多関節で運動が同時に起き,動作が得られるわけです.

従来の単関節運動における筋力評価だけでは不十分だといえます.

また着座動作においては,膝関節伸展筋の遠心性収縮による筋力発揮が必要となります.

しかしMMTやハンドヘルドダイナモメーター(Hand Held Dynamometer:HHD)による筋力評価は,等尺性収縮での筋力評価であり,実際の動作場面に必要とされる収縮様式と異なることがわかります.

以上のことから,従来の量的な筋力評価だけではなく,単関節運動と多関節運動といった運動様式の違いや,収縮様式の違い,さらには疾患特異的な筋の組織学的変化も考慮した評価が必要であると考えられます.

 

 

 

 従来の筋力トレーニング方法の問題点 

従来の一般的な筋力トレーニングは,重錘負荷やエラスティックバンドを用いた単関節運動を中心に行われてきました.

これらの方法を用いて筋力トレーニングを行うことで,筋力は改善することを誰もが経験します.

しかし一方で筋力まで改善したにもかかわらず,片脚立位保持が困難となったり,歩行時にTrendelenburg徴候やDuchenne兆候といった跛行が改善しないなど,動作時における下肢帯や体幹の不安定性が残存する症例を経験することも少なくありません.

このことは,単関節運動を用いた筋力トレーニングだけでは不十分であることを示しているわけです.

つまり下肢周径やMMTの評価で筋肥大や筋力グレードの改善が得られたとしても,実際の動作中に筋力が十分発揮できるとは限らないということです.

変形性股関節症表面筋電図を用いた研究によると,股関節外転筋の筋力強化を単関節運動と多関節運動で行いその後,片脚立位時の筋活動(大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋)を比較すると,単関節運動群では筋活動量に変化を認めないものの,多関節運動群では筋活動量が増大したことが報告されております.

また別の剛体バネモデルを使用した研究によると,片脚立位姿勢における外転筋の筋張力は中殿筋,大殿筋,小殿筋の筋張力発揮の比率はそれぞれ46%,32%,22%であったと報告されております.

これは片脚立位保持は中殿筋単独の働きではなく外転筋群の筋出力のバランスが重要であることを示唆するものです.

これらの研究報告から考えると,従来のエラスティックバンドなどを用いた単関節連動中心の筋力強化だけでは,動作パフォーマンスを再獲得するには不十分であると考えられます.

われわれ理学療法士には.従来行われてきた量的側面の筋力トレーニングに加え,運動様式や収縮様式,また活動している筋線維タイプや筋出力のバランスなど質的側面の筋力トレーニングを実践し,動作パフォーマンスの向上を獲得させる治療戦略が求められます.

 

 

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