介護予防領域における理学療法評価に関する最新理学療法研究紹介

介護予防
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昨年まで行われた日本理学療法士学会が,今年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

 

平成30年10月20-21日に福岡県で第5回日本予防理学療法士学会が開催されました.

 

今回はこの第5回日本予防理学療法士学会の一般演題の中から介護予防領域における理学療法評価に関する研究をいくつかご紹介いたします.

 

 1.5m 歩行時間計測の臨床的有用性の検討 

高齢者の転倒や虚弱高齢者における運動機能の評価方法の1つとして歩行速度の評価が挙げられます.

 

歩行速度測定のポイント~まさか秒数だけ記録してないですよね?~
歩行速度測定はリハビリテーションの効果判定のために,また移動能力を評価する目的で,さまざまな場面で用いられます.理学療法士が行う評価の中でも頻度が高いので,臨床実習においても測定機会の多い評価の1つだと思います.したがって測定方法についてきちんと整理しておくことが重要となります.今回は歩行速度を計測する上でのポイントについてご紹介いたします.

 

以前の記事でも歩行速度の評価についてはご紹介させていただきました.

従来,臨床場面における一般的な歩行評価としては10m歩行速度が用いられてきたわけですが,在宅はもちろんのこと地域における通いの場では10m歩行速度の測定が困難な場合が少なくありません.

先行研究によると,1.5m 歩行測定の有用性が報告されておりますが,測定方法について詳細に検討した報告はありません.

この研究では在宅で実施可能とされる1.5m歩行評価の妥当性が検討されております.

対象は通所サービスを利用中の高齢者20 名(平均83 歳)となっております.

測定項目として10m歩行時間(10m)・1.5m 歩行時間(1.5m)を2回ずつ測定しております.

測定にはストップウォッチとスマートフォンの動画(VD)を用い,動画解析にWindows ムービーメーカーを使用しております.

検討項目ですが,各測定の検者内再現性と検者間再現性,それぞれの最小可検変化量,1.5mにおけるカットオフ値について検討しております.

動画解析の検者内再現性(1.1)は,10m(0.99),1.5m(0.97)となっております.

1 回目-2 回目の検者内再現性(1.1)は,ストップウォッチ10m(0.94),動画解析10m(0.94),ストップウォッチ1.5m(0.94),動画解析1.5m(0.88)となっております.

検者間での動画解析の再現性(2.1)は,10m(0.99),1.5m(0.94)となっております.

いずれも高い検者内・検者間信頼性が確認されたわけです.

 

基準関連妥当性を検討するために1.5mと各々の相関関係も算出しておりますが,ストップウォッチ10mでr=0.84,動画解析10mでr=0.85であり,基準関連妥当性についても高いと言えるでしょう.

またBland‐Altman検定では,最小可検変化量がストップウォッチ1.5m(0.43 秒),動画解析1.5m(0.57 秒)であったとされております.

この研究の結果から,高齢者における1.5m 歩行評価は,最小可検変化量に差がないことからストップウォッチによる評価で問題なく,検者内・検者間ともに高い再現性を示す臨床上有用な評価法であると考えらます.

ある程度の歩行路が確保できれば,5mや10mでの歩行速度の計測が理想ですが,歩行路の確保が困難な場合には1.5mでの計測でも代用できそうですね.

 

 

 

 

 5 回椅子立ち上がりテストを用いた膝伸展筋力の推定式の作成 

介護予防事業の中で下肢筋力を測定する機会は少なくないと思います.

下肢筋力の中でも膝関節伸展筋力は下肢筋力の代表値となるため測定することが多いと思います.

等尺性膝伸展筋力の測定には一般的にHand Held Dynamometerが用いられることが多いです.

しかし地域や在宅ではHand Held Dynamometerを用いた測定は時間を要すること,測定に習熟を要することから,汎用性が高い評価方法とは言えません.

一方で特別な道具を使用せずに,測定可能な5 回椅子立ち上がりテスト(Five-time sit-to stand test:FTSST)は,等尺性膝伸展筋力と関連性が高いことが報告されており,測定も簡単に行えることから,介護予防の領域でも使用されることが多いです.

 

立ち上がり動作を使った筋力評価~筋力測定機器が無くてもOK~
今回は動作を使った筋力評価の中でも最も使用頻度が高い立ち上がり動作を使った脚伸展筋力の評価方法についてご紹介いたしました.これらの評価は標準値やカットオフ値が示されているので,評価を行った後の解釈もしやすいです.筋力評価の一つとしておさえておきたいですね.

私のブログでも以前の記事で立ち上がりを使用した筋力測定方法についてご紹介させていただきました.

この研究では,地域在住高齢者を対象に5回椅子立ち上がりテストの測定結果から,ハンドヘルドダイナモメーターを用いずに等尺性膝伸展筋力を評価できる推定式を作成し,さらに推定式による膝伸展筋力推定値の妥当性を検証しております.

対象は65 歳以上で要介護認定のない地域在住高齢者512 例となっております.

測定方法ですが,ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性膝伸展筋力,5回椅子立ち上がりテストt,生体インピーダンス法による四肢筋量となっております.

その他に,基本属性として年齢・性別・身長・体重・既往歴・服薬状況・疼痛・転倒歴・老研式活動能力指標を調査しております.等尺性膝伸展筋力を従属変数,5回立ち上がりテストおよびその他の交絡因子を独立変数としたステップワイズ法重回帰分析を行い,等尺性膝伸展筋力の推定式を作成しております.

さらに等尺性膝伸展筋力について,ハンドヘルドダイナモメーターによる測定値と推定式による推定値の両者における,筋量低下の有無に対する識別能力をReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用いて比較検討しております.

結果ですが,等尺性膝伸展筋力と5回立ち上がりテストの単相関係数は-0.274となっております.

5回立ち上がりテストに加えて,等尺性膝伸展筋力と有意な関連が認められた変数でステップワイズ法による重回帰分析を行った結果,最終的に5回立ち上がりテスト・年齢・性別・体重による推定式が完成しております (R2=0.342).

この研究結果から5回立ち上がりテストと年齢・性別・体重の情報からハンドヘルドダイナモメーターを使用せずに簡便に等尺性膝伸展筋力を推定する式を作成することが可能となります.

5回立ち上がりテストの結果をハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性膝伸展筋力値に変換する利点として,先行研究との比較や先行研究で報告されたカットオフ値を使用することが可能となります.

抄録内には具体的な推定式は示されておりませんが,こういった数式があれば非常に役に立ちそうですね.

 

 

 

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