理学療法士から見た心拍数・脈拍数,心拍数=脈拍数?

理学療法評価
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近年,ますます高齢化が進み,循環器疾患や代謝疾患など複数の疾患を有する高齢者が増加しております.

理学療法士・作業療法士も専門分野を問わずリスク管理に努める必要がありますが,リスク管理の指標として最も多く用いられるのは血圧と心拍数(脈拍数)ではないでしょうか?

血圧については以前にご紹介させていただきました.

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今回は心拍数・脈拍数について整理してみたいと思います.

 

 

目次

 心拍数の制御機構 

心拍数は洞結節の自動興奮を心臓交感神経と副交感神経である迷走神経が調整することとで決定されます.

心臓交感神経はノルアドレナリンの分泌に関与し,心拍数を増加させます.

一方で迷走神経はアセチルコリンの分泌に関わり,心拍数を減少させます.

通常は洞結節がぺースメーカーの役割を担い,洞結節がきちんと機能している際の安静時心拍数は70~80回/分というのが一般的です.

刺激伝導系はどの部位であっても自発的に興奮する性質を持ち合わせておりますので,洞結節が何らかの障害によって機能しなくなると,房結節がペースメーカーの役割を代行します.

この場合の安静時心拍数は50~60回/分となります.

さらに房結節も機能しなくなると心筋全体がペースメーカーの役割を果たしますが,その心拍数は約30回/分となります.

このように心拍数の制御には代償機構が備わっており,1か所が機能しなくなっても他の機能が代償できるような機構となっておりますが,徐々に心拍数が減少するといった点に注意が必要です.

 

 

 

 心拍数=脈拍数ではない 

一般的に心拍数と脈拍数といった言葉は同義のように扱われる傾向にありますが,不整脈を合併するクライアントでは数値に差が生じることを理解しておくことが重要です.

心拍数とは心筋が収縮して身体に血液を送り出す際の電気的興奮の回数を指し,臨床では心電図上のQRSをカウントするのが一般的です.

一方で脈拍数とは心臓から拍出された血液が血管壁を押し広げる際に生じる拍動数を指し,橈骨動脈をはじめとする動脈にて触知することが多いです.

 

心拍数と脈拍数の関係性ですが,「心拍数≧脈拍数」となることに注意が必要です.

心拍数よりも脈拍数が少なくなる例としては不整脈が挙げられます.

例えば洞調律ペースで心室性期外収縮が散発している症例の場合には,洞調律ベースでの心収縮も心室性期外収縮による心収縮も心拍数としてカウントされるわけですが,一方で脈拍数に関しては心室性期外収縮ではカウントすることができません

したがって期外収縮が生じている場合には,脈拍数は少なくなってしまうわけです.心室性期外収縮ではなぜ脈拍数が検知できないかという話ですが,心室性期外収縮では刺激伝導系から逸脱して心室の一部が先行して収縮を起こしておりますので,十分な心収縮力が得られず1回拍出量が極端に減少するため,脈拍が極めて小さくなるか消失してしまうわけです.

心室性期外収縮は脈拍が欠如する一例ですが,この他にも心房細動,心室頻拍などの不整脈でも脈拍が欠如してしまうといった点に注意が必要です.

 

 

 理学療法を行う上での脈拍数の測定方法 

心拍数の測定には心電図を用いるのが一般的ですが,脈拍数の測定は検脈によって行うのが一般的です.

検脈は非常に簡便でありながら,不整脈の有無やおおよその血圧まで測定できる非常の有用な検査法ですので,理学療法・作業療法を行う上でも,非常に重要となります.

検脈を行う場合には母指ではなく,示指・中指・環指の指腹を動脈に沿わせて並べるようにして行うのが一般的です.母指を使うと自身の脈波を感じてしまい脈拍と混同してしまうことがありますので注意が必要です.

以下に検脈の触診部位についてご紹介いたします.

 

 

 検脈における触診部位 

総頚動脈
持続的に強く圧迫すると貧血症状を引き起こすことがあるため注意が必要です.総頚動脈を触れれば収縮期血圧が60mmHg以上であることを判定可能です.

上腕動脈
通常の血圧測定で用いられる.検脈で利用する際には示指・中指・環指を上腕二頭筋内側から潜らせるようにあてます.

橈骨動脈
橈骨動脈は母指延長線上の内側に示指・中指・環指を当てて測定します.橈骨動脈を触れれば収縮期血圧が80mmHg以上であることを判定可能です.

大腿動脈
大腿動脈は鼠径靭帯の下側深部で触知可能です.大腿動脈を触れれば収縮期血圧が70mmHg以上であることを判定可能です.

膝窩動脈
膝窩動脈は深部を走行しているため触知の難易度が高いのが特徴です.

後脛骨動脈
後脛骨動脈は足関節内果の後方~アキレス腱のあたりで触知可能です.

 

このおように橈骨動脈の他にも脈拍を触知できる部位は多く,脈拍を触知できる部位を把握しておくと緊急時に血圧計が無い場合でも,部位別に脈拍を触れるか否かでおおよその収縮期血圧を判定できますので,非常に有用です.

 

今回は理学療法・作業療法を行う上で必要な心拍数・脈拍数についてご紹介させていただきました.

理学療法士・作業療法士がリスク管理を行う上では,心拍数=脈拍数ではないこと,検脈の知識が緊急時に役立つといった点が非常に重要だと思います.

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