ガムを噛むとウォーキングの運動効果が向上する?

運動療法・物理療法
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 ガムを噛むとウォーキングの運動効果が向上する? 

健康志向の高まりにより,最近は早朝から,仕事終わりにとウォーキングに精を出されてる方って多いですよね.

高齢女性が集団でウォーキングに取り組んでいるのを見ると,カー●スのように高いお金をかけなくても,運動っていくらでもできるなと思うわけです.

今回はウォーキングを行う際のちょっとした工夫で,運動効果が高まるといった報告をご紹介いたします.

 

 

 

 ガムの咀嚼がわれわれの体に及ぼす効果 

ガムの咀嚼は顎の発達満腹中枢の賦活による肥満の予防味覚の発達など様々な効果が報告されております.

さらに近年ではガムの咀嚼が認知症予防にも有効であることが明らかにされております.

昔に比較して現代人の咀嚼回数は減少しておりますので,咀嚼回数の減少を補う上でもガムの咀嚼というのには非常に意味があるわけです.

 

 

 

 ガムの咀嚼が運動中の心拍数・エネルギー消費量を向上させる 

ガムの咀嚼は呼吸循環器系にも及ぼします.

ガムの咀嚼によって交感神経活動が高まり,心拍数やエネルギー消費量が増加することについては以前から多くの報告があります.

今回ご紹介いたします研究では,ガムを噛みながら歩くと噛まなかった場合と比べて心拍数が増えエネルギー消費量が増加する可能性があることが明らかにされております.

 

この研究では21~69歳の健康な男女46人を対象に,安静に1時間過ごしてもらった後に,①ガムを噛みながらウォーキングを行う条件と,②ガムベースのみを除いてガムと同じ成分の粉末を摂取後に何も噛まない状態でウォーキングを行った状態で,その際の心拍数・歩行距離・ケイデンス(歩行率)を計測し,歩行速度・歩数・歩幅・エネルギー消費量を算出しております.

 

その結果,ウォーキング中の心拍数はガムを噛みながら歩行すると,噛まなかった場合と比べて有意に3%増加することが明らかにされております.

この心拍数の増加に男女者は無く,特に40歳以上の男性において歩行距離・歩行速度の増加率が顕著でありました.

 

これらの結果から,「ウォーキング中におけるガムの咀嚼は,健康や体力づくりを目的とした歩行効果を高める可能性が示唆された」と結論づけられております.

これまでの報告ではガムの咀嚼によって心拍数やエネルギー消費量が増加することが報告されていたわけですが,心拍数やエネルギー消費量のみならず,歩数・歩幅・歩行速度が増加したといった点がこの研究の新規性になります.

著者らはガムの咀嚼によって心拍数が増大し,心拍リズムと運動リズムが同期する現象(Cardiac locomotor synchronization)が生じ,歩行距離・歩行速度・歩数といった身体機能が増大した可能性が考えられると考察しております.

このCardiac locomotor synchronizationは活動筋への最大血流量の増加,心臓後負荷の軽減,静脈還流の増加に伴う1回拍出量の増加といった循環生理的な変化をも引き起こします.

さらに面白いのは心拍と運動のテンポが同期する現象は,若年者よりも高齢者で起こりやすく,高齢者の健康維持に歩行中の咀嚼運動を活用することが期待されるわけです.

 

ガムを咀嚼しながらの運動というと,日本ではしつけがなってないとか,みっともないといったような印象を持たれることもありませんが,今回ご紹介したようにガムをかむといった簡単な工夫で高い運動効果を得ることができます.

われわれもクライアントへのウォーキング指導の際のちょっとした小ネタとしてガムの咀嚼に関する知識を持っておくと役に立つこと間違いなしです.この論文って理学療法科学会の英文誌Journal of Physical Therapy Scienceに掲載されておりますので,われわれとしても身近に感じられる論文ではないかと思います.

 

 

 

 

文献

1)Yuka Hamada, et al:The effects of gum chewing while walking on physical and physiological functions. Journal of Physical Therapy Science. 2018;30(4)625-629.

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