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Physiological Cost lndex(PCI)
歩行を評価する場合にはいろいろな視点があると思います.歩行速度を測定するとか,歩行のパラメーターとして歩幅・歩行率を測定するとか,6分間歩行テストのように持久性を評価する場合もあるでしょう.
われわれ理学療法士の役割の1つとして歩行能力の向上させることが挙げられますが,歩行の効率って大切ですよね?
例えば同じ10m歩行をしても,かなりの疲労感でなんとか10mの歩行を遂行するのと,まったく疲労感なく10mの歩行を遂行するのでは,同じ歩行速度であっても意味合いが全く異なると思います.
こういった歩行の効率って議論されることが少ないのですが,臨床的には非常に重要だと思います.
今回は歩行効率の評価について考えてみたいと思います.
エネルギー消費量の評価
一般的には歩行の効率を評価するためには,同一距離を歩行した際の酸素摂取量が用いられます.
測定機器の特性上,測定にはトレッドミルや自転車エルゴメータなどが用いられますが,こういった評価法では測定は機器を備えた環境に限られます.
そのため歩行障害を有するクライアントの場合には測定が困難な場合が多く,日常生活に準じた場面で測定することは難しいわけです.
また臨床的な視点で考えても簡便性といった面ではとても酸素摂取量を測定して歩行の効率を評価するなんていうのは現実的ではありません.
そこで日常生活に準じた状態で身体活動に伴う生理的なコストを測定する方法としてPCIが提唱されております.
PCIとは?
PCIというのは,一定時間継続して歩行した時のエネルギー効率を間接的に測定する指標であり,歩行速度,安静時および歩行時の心拍数より算出することができます.
PCI(拍/m)=(歩行後心拍数(拍/分)一安静時心拍数(拍/分))÷歩行速度(m/分)
こんな感じの数式を使えば簡単にPCIを算出することが可能なわけです.
PCIの基準値・信頼性・妥当性・臨床的有用性は?
PCIについて明確な基準値は示されておりません.
PCIはクライアント自身が選択した好ましいと感じる歩行速度において最小になることから,健常成人の場合には0.11~0.51 (beats/m)が標準値とされており,異なる年齢層でもほぼ同様の値が示されていおります.
検者内信頼性も検討されておりますが,良好な検者内信頼性が報告されております.
また検者間信頼性についても検討がなされておりますが,一定の信頼性が明らかにされております.検者間における変動については検査者の違いによる変動よりも,測定環境やプロトコールの違いなどによる変動のほうが大きいとされております.
PCI測定というのは,ストップウォッチとテレメータ式心電計,それにl周25~30mの歩行路があれば実施可能ですので,比較的簡便に測定が可能であり,臨床的な有用性も高いと考えられます.
さらに妥当性についても検討がなされており,PCIと酸素摂取量,METsとの間に高い相関関係が認められたと報告されており,持久性や歩行の効率の評価法としての妥当性も高いと考えられます.
PCIの測定方法は?
一般的には歩行路には1周25~30mの8の字や長方形,楕円形などが用いられます.
測定機器は,ストップウォッチとテレメータ式心電計です.
測定における注意点
①心拍数は自律神経系の影響を受けるので,精神的な緊張や室温・投与薬剤など種々の因子に留意する必要があります.
②初めての歩行路では, あらかじめ練習をして歩行路や測定環境に慣れることが必要です.
測定手順
①心電計の電極を装着し,安静を保った後,設定した距離または時間内で歩行します.
②安静時の心拍数,歩行終了前の心拍数,歩行速度から前述の式を用いてPCIを算出します.
PCIは古くからある評価法ですが,意外に評価方法を知らない方も多いと思います.
比較的簡単に実施できますので,歩行効率を評価したい場合にはぜひ使用したい評価の1つですね.
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