血液マーカーから見た低栄養の評価

理学療法評価
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リハビリテーション栄養の概念が広く普及して,年月が経ちますが,以前に比較して理学療法士が栄養に関連した学会発表を行う機会も増えてきております.

今回は血液マーカーからみた低栄養の評価について知識を整理してみたいと思います.

 

目次

 リハビリテーション栄養の重要性 

われわれ理学療法士が対象とするクライアントの多くは,疾患やその治療過程で筋肉量が減少し,体力が低下してしまうわけです.

こういったクライアントに対しては,運動を通じて,筋肉量を増加させ体力を向上させることが重要となります.

しかしながら,栄養状態が不良であると,運動そのものがさらなる栄養状態の悪化を招いてしまいます

一般的に筋の合成には,タンパク質とエネルギーが必要となりますので,低栄養状態で過度な運動を行ってしまうと,筋肉内のタンパク質やエネルギーを得ようとするため,結果的に筋肉量が減少してしまうわけです.

そのためわれわれ理学療法士もクライアントの栄養状態を評価しながら,リハビリテーションを行うことが重要となります.

 

 

 低栄養の原因・低栄養で出現する症状 

成人の低栄養の原因としては, 急性疾患,損傷(急性疾患・侵襲),慢性疾患(慢性炎症,悪液質),社会生活環境(飢餓)等に分類されます.

疲労感,気力低下,筋力低下,浮腫などが低栄養状態による代表的な症状です.

前述したように低栄養状態での運動療法は,エネルギー消費が増し,さらに栄養状態を悪化させる可能性があります.

特に飢餓や手術などの侵襲後の異化期などでは蛋白質(特に筋肉)や脂肪を分解しエネルギーを産生している状態です.

この状態でエネルギー消費量の高いレジスタンストレーニングを行ってしまうと,筋肉の蛋白質の分解を加速させてしまうため,低栄養状態における高強度のレジスタンストレーニングは禁忌となります.

 

 

 アルブミンによる栄養状態の評価 

アルブミンは栄養評価の代表的なマーカーです.

アルブミンは肝臓でアミノ酸から合成される蛋白質で,血漿総蛋白の60%を占め, 30~40%は血管内に,60~70%は血管外に存在します.

生理的な役割としては,膠質浸透圧の形成,栄養源やホルモン,薬物等の運搬とされております.

基準範囲は3.9~5.1g/dlです.またアルブミンは栄養のマーカーであるが,負の急性期蛋白でもあります.

例えば大腿骨近位部骨折の術後の患者の場合には,術創部に炎症症状が見られ,創傷治癒のために蛋白質が必要となりますので,アルブミンがそこで消費されることになり,結果的に急性炎症に伴いアルブミン値は低下します.

したがって炎症が出現している場合には,数日前のCRPを合わせて確認する必要があります.

また炎症により血管透過性も亢進するので,血管外へアルブミンが流出する影響もあり,アルブミン値が低下します.したがってアルブミン値を見る場合には,同時にCRPの値も確認することでより正確な判断が行うことができます.

 

 栄養状態不良による浮腫 

血管内のアルブミンは膠質浸透圧を形成し, 間質の水分を血管内に引き込もうとします.

低栄養や炎症などさまざまな原因によって,アルブミン値が低下すると,間質の水分を血管内に引き込めず,間質に水分が貯留するため浮腫が出現します.代表的な浮腫としては,末梢組織の中でも下肢の浮腫が顕著な場合が多く,加えて胸水や肺水腫など呼吸循環器系の異常をきたします.

 

 アルブミンはあてにならない? 

アルブミンというのは半減期が21日であり,急性期の栄養評価には不適です.

基本的にアルブミンというのは,採血日から約2~3週間前の栄養状態を反映していると考えた方がよいと思います.

したがって2~3週間前に何らかの原因で食事摂取量が低下しているような場合には,現在の栄養状態は良好であっても,アルブミン値は低値となります.

一方で入院前の栄養状態を推定する上でアルブミン値を使用するのは,とても有用なわけです.

また体内が脱水状態にある場合は、血液が濃縮されるため結果として単位量あたりのアルブミンの量は増加します.

検査結果としてはアルブミン値が高くなるわけです.

一方で水分過多の場合には,血液が希釈されますので,アルブミンの割合が減少し,アルブミン値は低くなります.

したがってアルブミン値をみる際には,脱水にも注意する必要があります.

Naなどの電解質も同時に確認することによって,脱水などの状態も把握できますので,アルブミン値と合わせて電解質の値を把握して,脱水の状況を確認することも重要です.

 

 RTP(ラピッドターンオーバープロテイン)って何? 

ラピッドターンオーバープロテインとは,半減期が短い蛋白質のことです.

急性期においては,半減期の短いRTPを用いるのが一般的です.

RTPを使用するとリアルタイムな栄養評価が可能となります.

代表的なRTPとしては,トランスサイレチン(プレアルブミン) ,ランスフェリン,レチノール結合蛋白等が挙げられます.

半減期はそれぞれ,トランスサイレチン(プレアルブミン) で2日,ランスフェリンで7日,,レチノール結合蛋白で0.5日となります.しかしながらトランスフェリンは貧血時,レチノール結合蛋白とプレアルフミンは腎不全の場合には高値となることもあるため解釈に注意が必要です.

 

 総蛋白(TP)にも着目しよう 

総蛋白(TP)というのは,血漿に存在する100種類を超えるすべての蛋白の総量を指します.

TPはアルブミンと同様に栄養の指標として用いられます.

基準範囲は6.3~8.1g/dlです.また総蛋白はアルブミンとグロブリンに分けられます.

そのため感染症や慢性肝炎など免疫グロブリンが増加する病態ではTPは上昇しますが,重症肝不全や炎症における肝臓でのアルブミンの合成が低下すると総蛋白は低下します.

このようにアルブミンのみならずTPも合わせてみておくことが重要です.

 

 血液検査以外の情報も重要 

前述したようにアルブミン値はリアルタイムの栄養状態を反映せず,採血日の2~3週間前の栄養状態を反映する数値となります.

したがってアルブミンの値と合わせて,食事摂取状況を把握することが重要です.

食事摂取状況について病棟看護師や栄養士と相談しながら栄養状態を把握し,運動負荷量を調整していくことも重要です.

 

 

 

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