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「~へ」・「~に」・「~まで」を正しく使い分けましょう
今回も文書作成におけるポイントについてご紹介させていただきます.
「~へ」・「~に」・「~まで」って行き先を表す時に使用することが多いと思いますが,けっこう使い分けが難しかったりします.
理学療法士が情報提供書や学会抄録・論文を作成する際にも,「~へ」・「~に」・「~まで」といった行き先を表現する助詞を使用する機会は多いと思います.
今回は「~へ」・「~に」・「~まで」を正しく使い分ける方法をご紹介させていただきます.
「~へ」は方向を,「~に」は目的地を,「~まで」は過程を表す
「~へ」・「~に」・「~まで」は大きく分類すると,移動先を示す助詞である「~へ」・「~に」と,移動のプロセスを表す「~まで」に分類できます.
「~へ」と「~に」の大きな相違ですが,基本的には「~へ」は移動の方向を表し,・「~に」は移動先(帰着点・目的地点)を表します.
イメージ的にはこんな感じです.
文章で考えると下のようになります.
「~へ」 :理学療法士が訪問先へ出発した.
「~に」 :理学療法士が訪問先に到着した.
「~まで」 :理学療法士が訪問先まで車で移動した.
こんな感じで同じような文章でも「~へ」・「~に」・「~まで」と使用すべき助詞が異なるわけです.
「~へ」・「~に」・「~まで」の違いによって印象が違う
1階のリハビリテーション室からから5階の病棟へ階段を使って上がる理学療法士を想像してみてください.
「~へ」 :5階病棟へ上がるのは疲れる.
これだと理学療法士はまだ1階にいることを想像させます.
「~に」 :5階病棟に上がるのは疲れた.
これだと理学療法士はもう5階へ上がっていることを想像させます.
「~まで」 :5階病棟まで上がるのは疲れる.
これだと理学療法士が5階へ上がっている途中の状況を想像させます.
このように「~へ」・「~に」・「~まで」といった助詞の違いによって与える印象が違います.
立場によって「~へ」・「~に」を使い分ける
理学療法士がクライアントの下肢に向かって手を伸ばしている状況を想像してみてください.
「~へ」 :理学療法士がクライアントAの下肢へ手を伸ばした.
これは理学療法士の立場,つまり手を伸ばす立場からの表現になります.
「~に」 :理学療法士が私の下肢に手を伸ばした.
これはクライアントの立場,つまり手を伸ばして触れられるクライアントの立場からの表現になります.
起点(始点)を考えよう
「~へ」を使って方向を示すときには,起点(始点)が自分のところだという前提があります.
一方で「~に」は帰着点・目的地を示しますので,起点(始点)についての前提条件はないわけです.
したがってこちらから目標地点に到達する場合だけでなく,あちらから自分のいるところに到達する場合にも使われます.
例えば,「リハビリテーション科長が私の机へ向かって歩いてきた」というのは起点(始点)が自分ではありませんので間違いで,「リハビリテーション科長が私の机に向かって歩いてきた」といった表現が正しいわけです.
ミニクイズ
次の文章は正しいでしょうか?正しくないとすればどこをどう修正すべきでしょうか?
オークションで注文した商品が自宅へ届いた.
これは「オークションで注文した商品が自宅に届いた」というのが正しい表現でしょうね.
「へ」の場合には,方向を示すときに起点(始点)が自分のところだという前提がありますので,「~へ」ではなく,「~に」を使用するのが正しいわけです.
なかなか難しい内容だったと思いますが,うまく使い分けられれば,細かいニュアンスを表現する上では役立ちそうですね.
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