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漢字と平仮名を使い分けましょう -「ください」と「下さい」の違いをご存知ですか?-
理学療法士の仕事の1つとして,サマリー(情報提供書)の作成を通じて,クライアントの情報を他の医療機関や施設の理学療法士に提供するといった仕事が挙げられます.サマリー(情報提供書)の作成については以前もご紹介させていただきました.
また論文作成に当たっても文章力は必須のスキルとなります.
私自身もこのブログ記事を作成しながら自分の文章力の低さをもう少しどうにかできないかと思い,ここ最近は文章の書き方に関する書籍を数冊読破いたしました.
数冊の書籍を読む中でわかったのですが,日本語には漢字と平仮名で意味が変わってくる言葉があるということです.
今回は理学療法からは少し外れた話になりますが,漢字と平仮名で意味が変わってくる言葉をご紹介したいと思います.
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平仮名と漢字では印象が違う
意味が異なる例をお示しする前に,平仮名と漢字では見る人に与える印象というのも結構違います.
なんとなく漢字をたくさん使えば,立派な文章が書けたような感覚に陥りますが,場合によっては漢字が少ない方が相手に難しい,堅苦しいといた印象を持たれずに済みます.
最近の文書というのは基本的にコンピューターの文書作成ソフトを使用して作ることが多いので,なんとなく変換してしまいがちですが,あえて漢字を使わず平仮名を使うというのも読み手にやさしい文章を作成する上で重要なコツなのかもしれませんね.
平仮名と漢字では意味が異なる場合
「いただく」と「頂く」
漢字で「頂く」と書き表すのは,「食べる・飲む」の謙譲語と,「もらう」の謙譲語として使用する場合です.
ひらがなの「いただく」の場合には,「ご覧いただく」「お越しいただく」などの補助動詞としての役割のときに使用します.
メールでも補助動詞の「いただく」を使うことって多いと思いますが,間違って漢字にしてはいけないわけですね.
「こと」と「事」
「こと」は形式名詞と呼ばれます.
形式名詞というのは,その言葉自体に実質的な意味はほとんど無く,具体的な内容を示さない名詞のことを指します.
例を挙げますと「あの理学療法士のことが嫌い」,「思ったことを言った」と言った場合,「こと」には具体性はなく,「こと」のまえに修飾語が入るのが特徴です.
逆に言えば前方の修飾語を除いた場合に,元の意味から大きく離れるような場合には,形式名詞である「こと」を使うのが正しいわけです.
一方で「事」は普通名詞の代わりに使用されます.
事柄・事態・事件という名詞に置き換えられるのが特徴です.
例えば「大変な事になる」,「どんな事が起こっても」というような場合です.
ちょっとわかりにくいかもしれませんが,わからない時は「こと」を使っておけば間違いがありません.
「ください」と「下さい」
「ください」と「下さい」の違いは,「いただく」と「頂く」の違いに似た特徴があります.
通常は,「ください」というのは補助動詞として使用されます.
例えば「お越しください」,「ご覧ください」といったように,お願いごとをする場合や,相手に対して敬意を表す尊敬語・丁寧語として使用する場合に使用します.
一方で「下さい」には 英語でいうところの「give」の意味が含まれます.
例えば「実施計画書を下さい」,「ホットパックを下さい」などといった使い多です.
「ください」もメールや情報提供書作成で使用頻度が高いと思いますので,間違っても丁寧語として使用する場合に,漢字にしてはいけません.
「ところ」と「所」
「ところ」は動作の状態を表します.
例えば「ご多用のところ,恐れ入りますが」とか「私が訪室したところ,クライアントが転倒していた」などといった使われ方をします.
一方で「所」は場所・地点・箇所を表す時に用いられます.
例えば「私が勤務する○○病院は○○市という所にあります」とか,「あの椅子の所まで歩きましょう」といった使い方が正しいわけです.
「とき」と「時」
「とき」は、仮定的な状況を表現する場合に使用されます.
「場合」といった表現に置き換えられるときには,「とき」を使えばよいということになります.
例えば,「私が休んだときには,代理の理学療法士が対応します」とか「痛いときにはすぐにおっしゃってください」などといった場合です.
一方で「時」は,時点や時刻を強調する場合に用いられます.
例えば,「私が訪問にうかがった時には既に外出されてました」といったように使われます.
「もの」と「物」
「もの」と「物」の違いは「こと」と「事」の違いに類似した特徴があります.
「もの」は形式名詞であり,抽象的な事柄を指す場合に使います.
例えば,「理学療法士として必要なものが備わっている」とか,「膝関節可動域制限に原因となるものをいくつか挙げてみてください」といったような場合です.
一方で「物」は,普通名詞として目に見える物質を指す場合に使います.
例えば,「あそこにある物をこっちに持ってきてください」などといった場合です.
「いう」と「言う」
これはなんとなくわかりやすいと思います.
「いう」は喋る・話すといった意味を含まないときに使用します.
例えば,「理学療法士という職種の特性上」とか,「そういえば」などといったように用いられることが多いです.
一方で「言う」というのは,思ったことを言葉で表わしたり,述べたりする場合に使います.すなわち喋る・話すといった意味を含む場合には,「言う」を使います.
「主治医の言う通りに全荷重を開始した」とか,「言うまでもなく」といったように使用されます.
「いたします」と「致します」
「いたします」と「致します」の違いは,「いただく」と「頂く」の違いに類似した特徴があります.
「いたします(=いたす)」は「補助動詞」であり,他の動詞と合わせて自分を謙って表現する場合に用いられます.いわゆる謙譲語の一種です.
例えば,「ご迷惑をおかけいたしますが,よろしくお願いいたします」とか,「昨日はお休みをいただきありがとうございました.明日から出勤いたします」といったように使います.
一方で「致します(=致す)」は,通常の動詞でありますので,「至らせる」といった意味や「する」を丁寧にした意味が含まれます.
例えば,「その件に関しては私が準備を致します」,「今後もさらなる知識・技術の向上に努力を致す所存です」などといった使い方ができます.
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最後に
特に学会発表の抄録を作成する際によくありがちなことですが,抄録の文字数の上限が決められておりますので,平仮名を漢字に変換して,文字数を削るといった対応をすることがよくあります.
今回ご紹介したように,言葉によっては平仮名と漢字で意味が変わる場合がありますので,安易に平仮名を漢字にして文字数を減らすといった対応は間違っているわけです.
私のブログにも誤用がたくさんありますが,ご容赦ください.
どちらか悩む場合には,とりあえず平仮名で表記しておいた方が間違いありません.
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