膝関節屈曲可動域制限は変形性膝関節症例に頻繁に見られる機能障害の1つです.
膝関節屈曲可動域が制限されると,起立-着座動作,階段昇降動作など様々な日常生活動作が制限されるため,変形性膝関節症例の理学療法においては膝関節屈曲可動域を維持・改善させることが重要となります.
今回は変形性膝関節症例における膝関節屈曲可動域制限の原因について考えてみたいと思います.
極める変形性膝関節症の理学療法 保存的および術後理学療法の評価とそのアプローチ (臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス) [ 斉藤秀之 ]
目次
変形性膝関節症例における膝関節屈曲可動域制限の原因
変形性膝関節症例の膝関節屈曲可動域制限の原因として最も多い原因として,大腿前面の組織である大腿四頭筋が挙げられます.
加えて屈曲時には側方に位置する大腿筋膜張筋や縫工筋・薄筋の伸張性低下も膝関節屈曲可動域制限の原因となる可能性があります.
大腿筋膜張筋や縫工筋・薄筋といった側方の筋群が膝関節屈曲可動域制限の原因として考えられる場合には,股関節を内外転してから膝関節を屈曲させると側方の筋群がどの程度膝関節屈曲可動域制限の原因になっているかを推測することができます.
股関節を外転位として膝関節屈曲可動域が拡大すれば,大腿筋膜張筋の関与が疑われますし,股関節を内転位として膝関節屈曲可動域が拡大すれば薄筋や縫工筋の関与が疑われます.
さらに大腿後方の組織も膝関節屈曲可動域制限の原因になる可能性があります.
例えば膝関節屈曲時にハムストリングスが近位方向にうまく滑走しないと短縮痛が生じ,膝関節の屈曲運動が困難となります.
また筋以外に関節可動域を制限する組織として皮膚・筋膜などが挙げられますが,膝関節に特徴的な組織としては膝蓋上嚢や膝蓋下脂肪体が挙げられます.
これらの組織が癒着しているような場合には膝関節屈曲可動域制限が大きくなってしまいます.
膝関節屈曲可動域制限の原因を特定する
背臥位よりも腹臥位姿勢で膝関節屈曲可動域制限が顕著となる場合には,大腿直筋の短縮が疑われます.
背臥位・腹臥位ともに膝関節屈曲可動域が制限されている場合には,広筋群や膝蓋上嚢・膝蓋下脂肪体等の関与が疑わしいと考えられます.
さらに膝蓋骨の可動性を評価することで膝関節屈曲可動域制限の原因を特定しやすくなります.
膝関節屈曲時には膝蓋骨が尾側へ滑走する必要がありますが,膝蓋上嚢に短縮があると膝関節屈曲制限が生じやすいので注意が必要です.
また膝蓋上嚢や膝蓋下脂肪体のみならず膝蓋支帯や膝蓋大腿靭帯も膝関節屈曲可動域制限の原因になり得るので注意が必要です.
機能解剖に基づいた変形性膝関節症の治療〜3タイプ8パターンの痛みと動作の治し方〜[理学療法 ME200-S 全2巻]
今回は変形性膝関節症例における膝関節屈曲可動域制限の原因について考えてみました.
変形性膝関節症例における膝関節屈曲可動域制限の原因というと大腿四頭筋の短縮を想像されると思いますが,膝関節屈曲可動域制限の原因になり得る組織は大腿四頭筋以外にも多くありますので,これらの組織が可動域制限の原因になることを考慮した入れた上で可動域制限の原因を特定することが重要となります.
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