二関節筋を考慮した関節可動域の測定~足関節背屈可動域制限の原因を考える~

理学療法評価
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筋の短縮(伸張性の低下)を評価する場合に,一般的な関節可動域測定(二関節筋を緩めた肢位での測定)だけでなく二関節筋を伸張した肢位での測定を行うことによって,二関節筋の短縮を特定することが可能です.今回は足関節背屈可動域制限について考えてみたいと思います.

 

目次

足関節背屈可動域制限の原因

膝関節伸展位での足関節背屈角度と膝関節屈曲位での足関節背屈角度を測定して比較します.膝関節伸展位で背屈可動域制限が大きく,膝関節屈曲位で背屈可動域制限が小さければ,膝関節屈曲と足関節底屈作用を持つ二関節筋である腓腹筋または足底筋が短縮している可能性が高いと考えられます.

膝関節伸展位でも膝関節屈曲位でも足関節背屈角度が同じ程度制限されている場合には,逆に腓腹筋と足底筋の短縮は無いと考えることができます.この場合には,腓腹筋と足底筋以外の足関節底屈作用を有する筋(ヒラメ筋・後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋・長腓骨筋・短腓骨筋)といった全ての筋が足関節背屈可動域制限の原因である可能性があります.一般的にはヒラメ筋が原因であることが多いわけですが…

さらにこれらの筋の中からどの筋が原因かを調べるためには,足関節回内(外反)と回外(内反)位での足関節背屈角度を比較するとよいです.足関節回内位の方が足関節回外位よりも背屈が制限される場合には,足関節回外作用を持つ後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋が短縮している可能性が高いです.一方で足関節回外位の方が,足関節回内位よりも背屈制限が大きい場合には,足関節回内作用を持つ長腓骨筋・短腓骨筋が短縮している可能性が高いです.足関節回内・回外によって大きな足関節背屈制限の差がなければヒラメ筋の短縮によるものと考えることができます.

また長母趾屈筋の短縮の場合は背屈に伴い母趾の屈曲が,長趾屈筋の場合は背屈に伴い第2~5趾の屈曲が起こりますので,これで足関節背屈可動域制限の原因を特定することができます.膝関節屈曲位と伸展位で足関節背屈可動域が同程度制限されている場合には,筋の短縮だけではなく,関節包の短縮や関節内運動の障害,距骨と脛骨の衝突,浮腫や疼痛,皮膚の伸張性の低下などさまざまな原因が考えられます.

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足関節背屈可動域制限の原因を特定する

前述したように足関節背屈可動域を測定する場合には,必ず膝関節伸展位と膝関節屈曲位の2つの肢位で測定を行う必要があります.

症例①は膝屈曲位では35°と正常な足関節背屈可動域に近く,膝関節伸展位では背屈可動域が0°と著明な制限がみられました.end feelは軟部組織伸張性で足底屈位から背屈するに従って抵抗感が増しました.最終域での患者の訴えは下腿後面が突っ張るような感じでありました.このような測定結果を解釈すると,膝関節屈曲と足関節底屈の作用を有する二関節筋(腓腹筋または足底筋)の伸張性の低下であることは,end feelや患者の主観的な感覚からも明らかです.

症例②は膝関節を屈曲位にしても足関節背屈可動域制限に変化がないので,腓腹筋や足底筋の問題ではないと考えられます. もし足関節背屈可動域制限の原因が筋であるすれば,腓腹筋・足底筋以外の足部を底屈する作用を持つ筋であるヒラメ筋・後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋・長腓骨筋・短腓骨筋の伸張性低下の可能性が考えらます.end feelが軟部組織伸張性で,足回外にも可動域制限があることから考えると長短腓骨筋の短縮が足関節背屈可動域制限の原因と考えられる.

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症例③は同様に,膝関節の屈曲・伸展によって足関節背屈角度が変化せず,急に硬くなる軟部組織伸張性のエンドフィールから考えると関節包の短縮が足関節背屈可動域制限の原因と考えられます.

今回は足関節背屈可動域制限の原因について考えてみました.症例の可動域制限を考える上では,対象者の訴える疼痛部位や,end feel,解剖学や運動学的な特性をふまえて可動域制限の原因を考える必要があります.次回は膝関節屈曲可動域制限の原因について考えてみたいと思います.

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