前回は4つの尿失禁のタイプと理学療法における失禁改善へのアプローチについてご紹介いたしました.
ここからは尿失禁に対する第一選択となる骨盤底筋運動をご紹介いたしますが,その前にまずは骨盤底筋の機能について男女差も含めて考えてみたいと思います.
目次
膀胱機能の男女差
皆さんもご存じのとおり男性と女性の膀胱機能には性差があります.
男性の場合は尿道は長いのですが膀胱出口に前立腺があるので前立腺肥大症では排尿困難となります.
したがって男性は前立腺肥大を基盤とする溢流性尿失禁を引き起こしやすいということになります.
一方で女性の尿道は短く(男性20cm・女性3㎝),骨盤底筋も小さいということが明らかにされております.
したがって高齢女性の多くは排尿を我慢が出来ないことが多いので,骨盤底筋群の機能低下を基盤とする腹圧性尿失禁を合併しやすいのです.
通常は骨盤底筋が活躍していると腹圧がかかっても尿道が閉鎖されるわけですが,骨盤底筋群の機能が低下してしまうと,咳やくしゃみをした際や龍歩くといった動作の中で腹圧がかかると,そのまま尿が排出されてしまうのです.
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コアマッスルとしての骨盤底筋群
コアという概念はスポーツの世界やリハビリテーションの世界でも注目され始めて久しくなりますが,コアというのは上方は横隔膜,前面は腹横筋,後面は多裂筋,そして下方はこの骨盤底筋によって構成されております.
実は骨盤底筋群を強化するというのは尿失禁の予防にとどまらず,コアの機能を向上させることにもつながります.
コアの安定性が向上すれば,いろいろな動作を行う上で体幹が安定しますので,転倒予防にも寄与することができると考えられます.
骨盤底筋群の機能はなぜ低下するのか?
骨盤底筋群がなぜ機能低下を起こすかということですが妊娠・出産,肥満,更年期障害,加齢といろいろと原因があります.
介護予防で関わる方は加齢という要素は皆さんお持ちですのでこれに女性ホルモンの分泌量の減少や肥満といった要素が加わればますます骨盤底筋群の機能が低下するということは予想できます.
また女性に腹圧性尿失禁が多い原因には,妊娠や出産によるところも多いと考えられております.
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妊娠・出産
妊娠によって子宮が大きくなり骨盤底を圧迫することや,出産によって骨盤底に組織損傷が起こることが妊娠・出産による骨盤底筋群の機能低下の原因と考えられております.
肥満
内臓脂肪の増加によって骨盤底が圧迫されますので,骨盤底筋群の機能低下が低下しやすいわけです.
更年期障害
ホルモンバランスの変化によっても骨盤底筋群の機能が低下することが明らかにされております.
加齢
四肢の骨格筋が加齢に伴って機能低下を引き起こすのと同様に,骨盤底筋群にも加齢に伴って機能低下が起こります.
ちなみに骨盤底筋群というのは膀胱括約筋・肛門括約筋等の複数の筋群の総称であることもおさえておきたいところです.
今回は骨盤底筋群の機能低下について男女差も含めて考えてみました.次回は実際の骨盤底筋トレーニングについてご紹介いたします.
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