前回は脊椎圧迫骨折例に対するADL指導に関して紹介させていただきました.
今回は理学療法士が実施することが多い筋力トレーニングについて考えてみたいと思います.
目次
脊椎伸展運動
脊椎伸展筋群のトレーニングのひとつとして推奨されるのがチューブを用いたエクササイズです.
脊椎伸展運動というとMMTにおける背筋群のテストのように腹臥位姿勢でトレーニングを想像される方も多いと思います.
しかしながら骨癒合が十分でない状況で,腹臥位でのトレーニングを行うと、噛み込んだ骨梁が離解して骨癒合を遷延させる可能性があります.
チューブエクササイズが簡便にかつ安全に実施できることから非常に有用です.
この運動では肩関節屈曲運動に対するチューブの抵抗を利用して上肢運動の固定筋として脊椎伸展筋群を強化することが可能です.
①両上肢で把持したチューブを引っ張るようにして肩関節屈曲90°まで挙上します(求心性収縮)
②3秒かけてゆっくりとさらに挙上し肩関節屈曲120°で3秒間静止させます(等尺性収縮)
③3秒かけてゆっくりと肩関節屈曲90° まで戻します(遠心性収縮)
脊椎圧迫骨折例を対象とした研究によると,立位での脊柱起立群を主体とした体幹筋力強化を継続することで脊椎圧潰率が減少したと報告されております.
単純な運動ですが,非常に有効な運動ですね.
チューブトレーニングでは運動負荷が強すぎるといった場合には,両手で壁を伝うようにしながら上肢を挙上する運動も勧められます.
肩甲骨内転運動
肩甲骨を内転することで胸椎レベルの伸展運動を促通することができます.
上位~中位胸椎圧迫骨折例に対しては特に勧められる運動です.
運動がわかりにくい場合には,両手で棒を持ってもらって自分の胸の前まで引き込むようにすると運動がわかりやすいです.
骨盤前傾運動
骨盤を前傾させながら腰椎を伸展させる運動です.
この運動は立ち上がりや前屈動作時の胸腰椎伸展位での骨盤前傾運動を獲得する上で,非常に有効です.
骨折部位に負担をかけない理想的な座位姿勢は腸腰筋を活動させて骨盤前傾・腰椎前彎位の姿勢です.
腸腰筋を活動させて座位姿勢を改善させることが重要です.
骨盤前傾運動
ある程度,骨癒合が進めば抗重力位での脊椎伸展運動へ移行していきますが,腹臥位姿勢は多くの高齢者が困難な姿勢の一つですので,四つ這い肢位での運動が導入しやすいです.
一側上肢・下肢挙上から開始し,可能になれば対側上下肢を挙上する運動へ移行します.
脊椎圧迫骨折に対するWilliams体操
腰痛体操として昔から行われるWilliams体操ですが,この運動を圧迫骨折例に適応するのは基本的に間違いです.
そもそもWilliams体操は過度な腰椎前彎を少なくすることが主な目的となっております.
脊椎圧迫骨折例では胸腰椎の後彎を減じるために,むしろ腰椎の適度な前彎を作っていく必要があります.
逆に考えればWilliams体操と逆の運動を行うと圧迫骨折例においては胸腰椎後彎を減少させることに繋がると思います.
Ex1:腹筋運動⇒背筋運動
Ex2:Pelvic tilt(骨盤後傾)⇒Pelvic tilt(骨盤前傾)
Ex3:背筋群のストレッチ⇒腹筋群のストレッチ
Ex5:腸腰筋のストレッチ⇒殿筋・ハムストリングスのストレッチ
Ex6:殿筋群の強化⇒腸腰筋の強化
少し無理矢理なところもありましたが,こんな感じです.
今回は脊椎圧迫骨折例の筋力トレーニングについて考えてみました.
前回の記事でもご紹介いたしましたが,脊椎を伸展させるためには,膝関節を伸展させることも重要です.
全身を評価した上でどうすれば胸腰椎の後彎を減少させることができるかを考えることも重要です.
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骨粗鬆症を原因とした脊椎圧迫骨折の病態理解と運動療法 [ 赤羽根良和 ]
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参考文献
1)赤羽根良和, 他: 骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に対する運動療法の意義 椎体圧潰変形の抑止効果について. 理学療法ジャーナル44: 527-533, 2010
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