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圧迫骨折と破裂骨折
脊椎の骨折は大きく分類すると脊椎圧迫骨折と脊椎破裂骨折の2種類の骨折に分類されます.
一般的に前方支柱の骨折を圧迫骨折,中央~後方支柱の骨折を破裂骨折とよびます.
臨床では1983年にDenisが提唱したthree column theoryをもとに,脊柱を3つの構成要素に分類し,3つの構成要素のどこに損傷が及んでいるかによって,脊椎圧迫骨折と脊椎破裂骨折に分類します.
three column theoryの詳細ですが,以下のように分類されます
前方支柱(anterior column):前縦靭帯・椎体前1/2・椎間板前1/2
中央支柱(middle column):椎体後1/2・椎間板後1/2・後縦靭帯
後方支柱(posterior column):椎間関節・関節包・黄色靭帯・棘突起・棘上靱帯・棘間靭帯
圧迫骨折の特徴は?
圧迫骨折は骨粗鬆症を有する高齢者の軽微な転倒で起こることが多いのが特徴です.
椅子に座っただけ,物を持ち上げただけで骨折するといったことも少なくありません.
圧迫骨折の場合,通常は神経症状を伴いません.自覚症状(疼痛)が出現せず,徐々に骨折が進行する場合もあり(いつの間にか骨折),多椎間に骨折が及び,円背や亀背変形を呈するのも大きな特徴です.
破裂骨折の特徴は?
破裂骨折は墜落や交通事故などの強い外力によって生じることが多いのが特徴です.
破裂骨折は場合によっては脊髄の損傷をまねくことがあり,神経症状(運動麻痺・しびれ)が出現することもあります.
そのため安静期間が長く,強固な固定が必要となります.
骨折が脊髄や馬尾神経におよぶ破裂骨折の場合には前方固定術や後方固定術などの手術療法が必要になることも少なくありません.
当然ながら破裂骨折は圧迫骨折に比べて,治療に難渋することが多く,運動麻痺が出現していると入院期間も長くなるのが特徴です.
理学療法を行う上で注意することは(圧迫骨折)?
圧迫骨折例におけるリスク管理で最も重要なのは椎体へのストレスと再骨折への対策です.
以下に椎体に加わるストレスを示します.
理学療法を行う上では,骨癒合状況に合わせて,椎体に加わるストレスが最小限になるように細心の注意を払う必要があります.
基本的にはコルセットを装着し,骨折部を保護し疼痛の程度を確認しながら歩行プログラムを進行していく必要があります.
特に歩行器を使用して上肢支持を行うと椎体へのストレスをかなり軽減できますので,急性期には歩行器の使用は必須だと思います.
またコルセットの装着は脊椎の可動域を制限すること,脊椎の動きによる椎体へのストレスを減少させることが可能であり,コルセットの装着により疼痛の軽減や姿勢の改善が得られることが明らかにされております.
脊椎圧迫骨折の病態理解と運動療法 (骨粗鬆症を原因とした)[本/雑誌] / 赤羽根良和/著
また前屈動作時には股関節の屈曲(骨盤の前傾)を使って前屈動作を行うことが重要です.
左側の前屈動作では胸腰椎が屈曲位になっておりますので,こういった前屈姿勢は望ましくないわけですが,一方で右側のような前屈姿勢の場合には胸腰椎は伸展位ですので問題ありません.
したがって圧迫骨折例のADLを向上させる上では股関節屈曲可動域を拡大し,胸腰椎伸展位での股関節屈曲角度を増加させることが重要です.
姿勢については重心を脊柱に近づけた姿勢(顎を引いて脊椎を軽度伸展位とした姿勢)を保持すると椎体への負担が少なくなるため,座位・立位・歩行の際には意識的にストレスの少ない姿勢を保持させることが重要となります.
理学療法を行う上で注意することは(破裂骨折)?
破裂骨折例におけるリスク管理で最も重要なのは屈曲方向のみならず伸展・回旋方向の脊椎の運動を最小限にすることが重要です.
また遅発性神経麻痺が出現することもあるので,運動麻痺やしびれが出現していないかどうかを経時的に確認することが重要です.
参考文献
1)Rohlmann A, et al: Loads on a telemeterized vertebral body replacement measured in three patients within the first postoperative month. Clin Biomech23: 147-158, 2008
2)Rohlmann A, et al: Loads on a vertebral body replacement during locomotion measured in vivo. Gait Posture39: 750-755, 2014
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