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肥満を合併する変形性膝関節症例に対する理学療法介入を考える
肥満と変形性膝関節症の関係については以前の記事でもご紹介させていただきましたが,変形性膝関節症の予防・症状改善を図るためには肥満を解消する必要があります.
しかしながら膝痛を有する変形性膝関節症例が減量をするのは簡単ではありません.
今回は理学療法士の視点で肥満を合併する変形性膝関節症例に対する理学療法介入について考えてみたいと思います.
変形性膝関節症例における体重コントロール
膝には体重の2~4倍の負担がかかるといわれており,体重が多ければ,当然ながらその分,床反力も大きくなってしまいます.
また, BMIと痛みとの関係や体重と膝内反モーメントとの関係をそれぞれ検討した結果,両者に有意な関係が認められていることから,ありきたりのことではありますがが体重をコントロールすることが重要になるわけです.
さらに変形性膝関節症例に対する歩行運動と大腿四頭筋の筋力増強効果に関する複数の論文のデータを統合・比鮫した結果,痙痛と身体機能において同程度の治療効果があったと報告されております.
そこで,体重コントロールには歩行運動などの有酸素運動だけでなく,代謝機能や身体機能を向上させるために,筋力を増強させ,身体を大きく動かしながら有酸素運動を行い,効率良くエネルギーを消費していく必要があります.
また膝に疼痛が出現しないような運動方法の工夫も必要です.
連動で効率良く減量するためには,消費エネルギー量と摂取エネルギー量のバランスが必要であり,確実に減量するためには消費エネルギー量が摂取エネルギー量を上回る状態を3週間以上保つ必要があります.
介護予防事業で高齢者に対して運動指導を行っていると,膝痛を合併した方というのは少なくありません.
膝痛をコントロールしながら運動を指導することが,われわれ理学療法士に求められるわけです.
やっぱり有酸素運動
歩行運動では長い距離を歩行すると膝が痛くなるから歩かないではなく,痛くならない範囲での距離を設定することや,T字杖またはロフストランド杖,ノルディックウォーキングのポールを使用して,膝への負担を軽減してでも身体活動量を維持・向上をさせることが重要となります.
適切な歩行補助具を選択して,身体活動量を維持・増加させるような指導を行うことがわれわれ理学療法士に求められるわけです.
また,天気や気候の関係で屋外での運動が困難な場合は,椅子に座って行う酸素運動も有効です.
実際にChair walkingでも運動速度を速くすればウォーキングに近い運動強度を負荷することができるわけです.
さらに膝関節の可動域に問題がなければ,エルゴメータでの運動も有効です.
自転車エルゴメータを使用する場合には,サドルとペダルの位置関係にもよりますが,おおよそ120°程度膝関節屈曲可動域が保たれていることが理想です.
運動強度は?
運動の強度に関しては,心血管疾患などを合併する場合があるため,肥満者の有酸素運動時はリスク管理に十分注意する必要があります.
運動強度の目安としては,最大酸素摂取量の40~60%程度で軽く息が弾むくらいの中等度運動(有酸素運動)を指導します.
または,予測最大心拍数を“220-年齢”で求め,運動強度を最大運動能力の50~60%に設定します.
目標心拍数の算出方法は,[(220-年齢)-(安静時心拍数)]×運動強度(50~60%)+安静時心拍数で求めます(Karvonenの式).
目標心拍数は年齢によって異なりますが, 50歳代では115±10拍前後が至適運動強度といえるでしょう.
運動習慣がなく,これから運動を習慣化させていく人に対しては,運動強度の簡易的な指標として自覚的運動強度で,楽であると感じる程度から始め,個々に応じた運動強度を設定していきます.
変形性膝関節症例に対し,在宅運動(毎日)と歩行運動(3回/週)を3カ月行った効果の比較では,疼痛と主観的運動機能に差はありませんでしたが, QOLについては在宅運動よりも歩行運動のほうが改善したという報告があります.
まとまった運動の時間を確保することが困難な場合は, 5分×3回/日の歩行運動やストレッチ運動,またはテレビのCMの間にストレッチなどの体操やスクワットなどの筋力増強運動を工夫して取り入れることも有効な方法である.
特に最近の研究では細切れ運動であっても,運動の合計時間が同等であれば,ほぼ同程度の効果が得られることが明らかにされております.
水中運動は?
前述した歩行運動などの有酸素運動は,筋力の増強以外にバランス機能の向上,心理的効果,体重減少などに有効です.
特に水中での運動は,膝関節への負担が少なく運動量を維持でき,疼痛があるときでも運動が可能であるといった利点があります.
水中または地上での運動の比較において,瘻痛の減少,歩行速度の改善が得られ,歩行時の瘡痛の軽減に関しては,水中運動のほうが改善したと報告されております.
水中運動では,水深と水圧の関係から,水の抵抗を感じながらできるだけ大きく身体を動かすことにより,バランス機能やエネルギー消費量の効果に有効です.
また筋力増強を目的とするのであれば,運動の速度を上げることにより,水の抵抗が強く感じられ有効です.
筋力トレーニングは?
筋力トレーニングを行って筋量を増やすと体内での基礎代謝が高くなりますので,安静時における消費エネルギー量を増やすことができます.
有酸素運動と合わせて大胸筋・腹筋・背筋・大腿四頭筋・大殿筋といった大きな筋群にターゲットを当てて,筋力トレーニングを指導するとよいでしょう.
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