大腿骨近位部骨折例の歩行能力評価

投稿者: | 2018年12月27日

 大腿骨近位部骨折例の歩行能力評価 

大腿骨近位部骨折例の多くは観血的治療の適応となるわけですが,高齢者に多い本骨折では術後に適切な理学療法を行っても受傷前の歩行能力まで十分に改善が得られないことも少なくありません.

歩行能力低下というのは大腿骨近位部骨折例の多くに見られる能力低下の1つであり,われわれ理学療法士・作業療法士もクライアントの歩行能力低下を適切に評価する必要があります.

今回は大腿骨近位部骨折例に対する歩行能力評価について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 定性的な評価と定量的な評価 

大腿骨近位部骨折例の歩行能力を評価する上では,定性的な評価定量的な評価の療法を行う必要があります.

定性的な評価というのはいわゆるわれわれが行う動作分析であると考えると分かりやすいと思います.

初期接地期に踵接地が出現していないとか,荷重応答期に骨盤が対側傾斜するとかそういった歩行の特徴を明らかにしていく作業になります.

歩行能力低下の原因を考える上では,このような定性的な評価を行い,異常歩行がなぜ起こっているのかを考えることが重要となります.

歩行速度測定のポイント~まさか秒数だけ記録してないですよね?~

定量的な評価の代表的なものとしては,歩行速度の計測が挙げられます.

最近では3軸加速度計を用いて歩行中の身体重心の動揺性を評価する方法も用いられるようになってきております.

近年使用が増えている3軸加速度計とは?

 

3軸加速度計による評価については以前もご紹介させていただきましたので,そちらの記事をご参照いただければと思います.

定量的な評価の利点として,クライアントに変化を客観的に示しやすいといった点が挙げられます.

また過去の報告における標準値やカットオフ値を比較を行うことで,現在クライアントがどのような状況にあるのかを判断することができます.

 

 

 

 

 定性的な評価(動作分析) 

大腿骨近位部骨折例における異常歩行で最も多く見られるのが,立脚相でのトレンデレンブルグ兆候やデュシェンヌ兆候です.

変形性股関節症例の歩行の特徴~正常歩行に近づけることが全てではない~

トレンデレンブルグ兆候やデュシェンヌ兆候については以前の記事でもご紹介いたしましたが,股関節伸展・外転筋力の低下や股関節内転の関節可動域制限,痛みによる荷重時の安定性不良が原因となるっていることが多いです.

 

その他にも抗重力活動の低下や屈筋反射の亢進が原因と考えられる股関節・膝関節の屈曲姿勢や,腸腰筋の機能低下によって起こる立脚期における骨盤後傾,股関節伸展可動域制限によって起こる代償的な骨盤の後方回旋や足関節底屈等,さまざまな異常歩行を呈します.

 

大腿骨近位部骨折後の膝痛ってなぜ起こるの?

 

また高齢者に多い本骨折例では変形性膝関節症を合併しているクライアントが多く,術後に骨盤の動揺性が増大すると膝関節内反モーメントが増大し膝痛が増悪するケースも少なくありません.

 

大腿骨近位部骨折例の歩行能力を定性的に評価するためには,歩行能力評価の際の歩行補助具についても考慮する必要があります.

歩行補助具を使用している状況ですと,さまざまな機能低下による異常歩行がマスクされる場合も少なくありません.

したがって大腿骨近位部骨折例の歩行能力を評価するためには,見守り~最小介助レベルで可能な移動レベルで評価を行うことが重要となります.

 

 

 

 

 定量的な評価 

定量的な評価では歩行速度を測定することが多いです.

歩行速度は標準値やカットオフ値が示されておりますので,測定値が一般的に速いのか遅いのかを考える上でも役立ちます.

 

歩行速度の評価については以前もご紹介いたしましたが,歩行速度を評価した場合には,合わせて歩幅・歩行率を評価しておくとよいでしょう.

大腿骨近位部骨折例に限ったことではありませんが,歩行速度が低下している場合には,歩幅の狭小化によって歩行速度が低下している場合もあれば,歩行率の低下によって歩行速度が低下している場合もあります.

当然ながら歩幅の狭小化,歩行率の低下の両方の要素によって歩行速度が低下している症例も少なくないわけですが…

 

 

 歩幅の減少 

歩幅が減少する原因としては,荷重痛や股関節・膝関節伸展筋力低下により立脚時間が短縮することが挙げられます.

また股関節伸展可動域制限も歩幅の減少につながります.

さらに腸腰筋の機能低下によって立脚終期に骨盤の前傾運動が起こらないと股関節を十分に伸展できないため,歩幅は減少します.

歩幅を簡易的に測定する方法としては,歩行距離(10m)を歩数で除する方法があります.

この方法を用いれば,簡単に歩幅を算出できますが健側と患側の歩幅を計測できない点が大きな欠点です.

健側と患側の歩幅を計測するには,矢状面で歩行中のビデオを撮影して目印との距離の比から歩幅を計測するか,歩行中にマーキングして測定する方法が考えられます.

 

 

 

 歩行率の低下 

歩行率が低下する原因としては,両脚支持期が延長することが挙げられます.

両脚支持期が延長する原因としては片脚にて姿勢を保持する能力が低下することが考えられます.

単純に言えばバランスが悪くなると,両脚支持期が延長し,歩行率が減少し,歩行速度が低下するということです.

 

 

 

今回は大腿骨近位部骨折例の歩行能力評価について考えてみました.

大腿骨近位部骨折例の歩行能力を評価する際には,定性的な視点(動作分析)と定量的な視点が必要です.

定性的な評価にしても定量的な評価にしても異常歩行や歩行速度低下の原因を考えた上でアプローチを行うことが重要だと思います.

 

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