変形性股関節症例の歩行の特徴~正常歩行に近づけることが全てではない~

投稿者: | 2018年7月21日

前回までは変形性股関節所例における脚長差の特徴脚長差の補正に関して紹介させていただきました.今回は変形性股関節症例に見られる歩行時の跛行について変形性股関節症の進行と合わせて考えてみたいと思います.

変形性股関節症の跛行には逃避性跛行・硬性墜下性跛行・軟性墜下性跛行(Trendelenburg跛行)・Duchenne跛行等が挙げられます.まずは各跛行の特徴について紹介いたします.

逃避性跛行

逃避性跛行は変形性股関節症に限らず下肢有痛性疾患を有する方に生じやすい跛行の一つですが,荷重時の疼痛により立脚期が短縮してしまうことで生じる跛行です.罹患側の立脚期が短縮するので,当然ながら対側下肢の歩幅がせまくなってしまうのが特徴です.対側下肢を振り出すための時間的余裕が無くなるので,歩幅だけでなくfoot clearanceも小さくなってしまい,つまづきによる転倒の危険性も高くなってしまいます.

硬性墜下性跛行

墜下性跛行には軟性墜下性跛行と硬性墜下性跛行の2種類がありますが,脚短縮によって遊脚終期から立脚初期にかけて骨盤が降下してしまう跛行です.脚短縮といった骨の構造的な変化により生じる跛行なので,「硬性」墜下性跛行といった名称がつけられております.

軟性墜下性跛行(Trendelenburg)

軟性墜下性跛行は左右の脚長は同等にもかかわらず,中殿筋の筋力低下や筋機能低下によって,立脚初期~立脚中期に立脚側と反対側へ骨盤が傾斜してしまう跛行です.Trendelenburg跛行とも呼ばれますが,この跛行を呈すると,立脚期に股関節が内転してしまいますので,股関節内転モーメントが増大し変形性股関節症の病期進行を助長してしまうことになります.軟性墜下性跛行を改善する上では,中殿筋の筋力を向上させることに加えて,筋機能を改善(速筋線維の機能を向上させ,瞬間的な筋出力を向上させること)させることが重要です.

Duchenne跛行

Duchenne跛行は患側立脚期に罹患側へ体幹が傾斜する跛行です.原因は様々ですが,臼蓋形成不全を有する症例で臼蓋被覆を高め,股関節内転モーメントを軽減させるための代償運動として出現することが多いです.またDuchenne跛行はTrendelenburg跛行に伴う骨盤対側傾斜を代償するために出現することもあります.Trendelenbrg跛行とDuchenne跛行は間違えられることが多いのですが,Trendelenburg跛行が骨盤の反応である一方で,Duchenne跛行は体幹の反応である点に注意が必要です.

したがってDuchenne跛行とTrendelenburg跛行が同時に出現することもあります.Duchenne跛行が大きくなると体幹を罹患側へ傾斜すると同時に,骨盤も罹患側へ傾斜しますが,このような反応を逆Trendelenburg跛行と呼ぶこともあります.Duchenne跛行に限らず,長期間に渡って学習された歩行パターンは改善にもかなりの時間を要することが多く,人工股関節全置換術後も改善に苦労する場合が多いです(人工股関節全置換術後には内転モーメントを軽減する必要がなくなるにもかかわらず,跛行の改善に時間を要することが多いです).

跛行と変形性股関節症の進行との関連

前述したようにTrendelenburg跛行は股関節内転モーメントを増大させるため,変形性股関節症の病期進行を助長してしまいます.一方でDuchenne跛行による代償運動は,股関節内転モーメントを軽減させますので,変形性股関節症の進行予防には有効だと考えられます.

理学療法士にありがちなことですが,正常歩行に近づけることが重要だと考えがちですが,代償的なDuchenne跛行を正常歩行に近づけようと,体幹の罹患側傾斜を軽減してしまうと,股関節内転モーメントが増大し,変形性股関節症による疼痛が増悪してしまう可能性もあります.
生じている跛行がどういった意味をもつものなのかを十分に考えた上で,歩容の改善を図る必要があります.

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