ICU-acquired weakness(ICU-AW)って?

投稿者: | 2018年11月1日

内部障害領域の理学療法分野ではICU-acquired weakness(ICU-AW)という言葉が使用されることが増えてきました.私自身もこの概念を知ったのは数カ月前ありますが,単なる廃用性の機序ではなく筋力低下が起こるというものです.内部障害領域で勤務する理学療法士はもちろんですが,そうでなくともこれから一般的になってくる概念だと思いますので,今回はICU-AWについてご紹介させていただきます.

 

 ICU-acquired weaknessICU-AW)の定義 

はじめにICU-AWの臨床的特徴についてご紹介したいと思います.

以前に比較すると,集中治療管理の発展によって重症患者の生存率は劇的に改善しております.

一方で集中治療室(intensive care unit;ICU)を退室したクライアントには,特異的な機能障害や筋力低下・息切れ・抑うつ・不安が残り,健康関連QOLや長期的な予後に影響することが多数報告されております.

このうち重症患者に併発する神経・筋の機能障害は,ICU-AWとして着目され,ここ最近は集中治療に関する学会でも多く取り上げられるようになってきております.

ICU-AWというのは,敗血症・多臓器不全・長期人工呼吸管理のいずれかに該当する重症患者のうち約半数に発生するとされており,その発生には全身性炎症を背景にさまざまな医原性リスク因子が関連することから,対策として集中治療における早期リハビリテーションの役割は以前にも増して大きくなってきております.

ICU-AWはcritical illness myopathy(CIM)とcritical illness polyneuropathy(CIP),そして 2つの特徴を併せ持ったcritical illness neuromyopathy(CINM)の3つに分類することができます.

 

CIPというのは,脱髄を認めず感覚神経より運動神経に有意な軸索変性を特徴とした病態で,電気生理学的所見では伝導速度に異常はなく,筋や感覚神経の活動電位に振幅減少を認めます.

病態生理として敗血症等の全身性炎症反応による末梢神経の微小血管障害が示されております.

 

CIMはというのは,全身的な筋力低下と感覚機能の残存が主な特徴となります.

発生機序としては,骨格筋の崩壊を伴う異化作用がよく認められることから,全身的な炎症から引き起こされた筋障害や,臥床による不活動が原因と考えられております.

CIMの場合には,筋電図や筋生検では筋原性変化を呈します.いずれにしてもCIM・CIPとも電気生理学的検査では複合筋活動電位の振幅は低下し,神経電導速度は正常であり,実際のところはICU-AW をCIPかCIMに判別するのは難しいと考えられております.

また病態の把握には侵襲的な評価が必要となるわけですが,実際の一般臨床の現場ではクライアントへの負担や感染管理の面からも判別のために詳細な検査が行わることは少ない状況です.

 

 

 ICU-AWの予防 

現在のところICU-AWに対する明確なアプローチは確立されておりません.

基本的には医原性リスクの逓減が重要であり,過鎮静の回避,血糖管理,早期リハビリテーションが推奨されております.

鎮静管理に関しては,プロトコルを用いて適切に管理をすることが重要です.

Over sedationはICU-AWの原因となるばかりでなく,積極的な早期リハビリテーションの妨げともなります.鎮静深度の評価には,一般的にRichmond Agitation Sedation Scale(RASS)がよく用いられます.

早期リハビリテーション時のRASSスコアは一2から+1程度が適当と考えられます.

 

 

高血糖もまたミトコンドリアを障害し病態を悪化させるため,血糖値を適正に管理することも重要です.

われわれ理学療法士もクライアントの血糖値をモニタリングしながら介入することが重要です.

 

 

ICUにおける早期リハビリテーションの効果に関しては,現在のところ人工呼吸器離脱や在院日数短縮等には有効であるとされておりますが,残念ながら早期リハビリテーションによるICU-AW予防効果については明確にされておりません.今後の介入報告がまた裂ところです.

 

 

 

 早期リハビリテーションにおける多職種連携 

前述したようにICU-AWのリスク因子は多様でありますので,早期リハビリテーション介入に当たっては理学療法士のみならず多職種参画による一体感を持った介入必須となります.

職種間で治療方針やリスクを共有し,機器等の仕組みや操作手順を理解することも重要です.また医師や看護師と連携し,鎮静レベルのコントロールや,理学療法士が介入する時間帯の調整も重要となります(ICUに入床されているクライアントというのは医療処置が多いので時間帯をケアや処置に合わせることも重要です).

最近は高機能なベッドを使用すれば離床や体位変換が以前よりも簡単に行えるようになってきておりますが,意識障害を合併した重症のクライアントやラインが多くついた人工呼吸管理中のクライアントの離床を図ることは容易ではありませんし,高いリスクを伴います.したがって離床に当たっては理学療法士+看護師で介入する等の協働も必要でしょう.

 

 

 早期リハビリテーションの効果 

前述したように早期リハビリテーションによるICU-AW低減効果というのは残念ながら明らかにされていないわけですが,ICUにおける早期リハビリテーションの効果に関しては,人工呼吸管理中における歩行練習や,自転車エルゴメータを用いた無作為化比較対照試験では,早期リハビリテーションによる運動機能や健康関連QOLの改善が報告されております.

また介入時期は早いほうが治療成績は良好であり,在宅復帰率も高いことが明らかにされております.さらに同等の鎮静方法であても,早期リハビリテーション介入を行ったクライアントにおいて,ICUにおけるせん妄期間が短縮したといった報告もあり,われわれ理学療法士に求められる役割も非常に大きいわけです.

早期リハビリテーションの安全性については,海外からの報告では積極的な運動療法により酸素飽和度低下と循環変動が数%に認められるのみで,有害事象はほとんどなく安全に行い得ることが示されております.しかしながらICUに入床中のクライアントは重篤な敗血症ショックや呼吸循環不全を合併していることも多く,病態が不安定であることを考慮しておく必要があるでしょう.

 

 

今回はICU-AWについてご紹介いたしました.新しい概念ですが,今後普及する概念だと思いますので,押さえておきたいところだと思います.

 

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