人工股関節全置換術例の疼痛の特徴~手術したのになぜ痛いの?~

投稿者: | 2018年8月5日

以前に変形性股関節症例の疼痛の特徴について,ご紹介いたしましたが,今回は変形性股関節症による人工股関節全置換術後の疼痛の特徴について考えてみたいと思います.

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変形性股関節症例の疼痛の特徴

変形性股関節症例の疼痛の中で最も多いのは鼠径部の疼痛ですが,大腿前面・膝・腰部など股関節以外の疼痛が多いというのも特徴的です.これは変形性股関節症が股関節だけでなく隣接関節へ与える影響が非常に大きいことを物語る結果だと思います.Hip spine syndromeとかCoxitis kneeと呼ばれるような病態は股関節にとどまらず隣接関節へ悪影響を与えることがわかります.

人工股関節全置換術例の疼痛の特徴

人工股関節全置換術後の疼痛の特徴ですが,術後早期には術創部(後方アプローチであれば殿部外方,前方アプローチであれば鼠径部)に疼痛を訴えられることが多いですが,これらの疼痛は術後1~2週もすればほぼ消失します.人工股関節全置換術後には股関節が人工物に置換されたわけですから,術前に訴えられていた関節由来の鼠径部の疼痛についても改善が得られますので,術後に鼠径部の疼痛を訴えられる方はほとんどいません.一方で新たに出現する疼痛が大きく分けて2種類あります.

①軟部組織の伸張による疼痛

人工股関節全置換術では外上方に亜脱臼していた大腿骨頭を臼蓋の位置まで引き下げます.そのため短縮していた股関節の周囲筋が伸張されることとなります.特に高位脱臼例では骨頭の引き下げ距離が大きくなりますので,軟部組織が過度に伸張され,わずかな股関節運動でも股関節周囲筋の伸張痛を訴えられるようになります.

こういった伸張痛は股関節周囲筋の伸張性の改善が得られるとともに改善が得られますが,短縮した筋を丁寧に伸張していくことが重要となります.

特に上の図のような高位脱臼の分類(Crowe分類)でⅢ・Ⅳの症例に関しては,軟部組織の伸張に伴う疼痛が強い傾向にありますので注意が必要です.

 

②代償パターンによって生じた隣接関節の二次的な疼痛

2つ目は術前の代償パターンによって生じた腰部・膝関節といった隣接関節の二次的な疼痛です.

術前には罹患関節由来の疼痛が強く,こういった隣接関節の疼痛はマスクされていることも多いのですが,強い股関節痛が消失するととともに,こういった術前の代償的姿勢・動作パターンによって生じた隣接関節への機械的ストレスに伴う疼痛が顕在化することが少なくありません.痛みが2か所以上存在する場合には程度の強いばかりが表出され,2番手・3番手の疼痛には注意が向けられない傾向にありますが,1番手の疼痛が強くなると2番手の疼痛が顕在化してくることが多いです.

こういった隣接関節の疼痛を軽減させるためには,代償的な姿勢や動作パターンに修正を図っていく必要があります.こういった姿勢・動作パターンの修正というのは手術だけで改善が得られるものではありませんので,こういったパターン修正こそが術後理学療法の大きな役割であり,理学療法士としての腕の見せ所だと思います.

今回は人工股関節全置換術例の疼痛の特徴について紹介させていただきました.人工股関節置換術全置換術例に限ったことではありませんが,疼痛の原因をリーズニングした上でアプローチを行うことが重要だと思います.

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