変形性股関節症例におけるX線の診方②

変形性股関節症
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前回は変形性股関節症例におけるX線の診方について,股関節正面像から脚長差・②骨盤前後傾の程度・③大腿骨の回旋・④股関節の求心性・⑤症例の活動性を把握できることをご紹介いたしました.今回は引き続き変形性股関節症例におけるX線の診方についてご紹介させていただきます.

目次

変形性股関節症例におけるX線読影のポイント

Point1. 骨頭の外上方偏位

変形性股関節症例(特に二次性股関節症例)では大腿骨頭が外上方偏位している場合が少なくありません.骨頭の外上方偏位の程度を評価する方法としてはCrowe分類が有名で,CroweⅠ~Ⅳの4段階で高位脱臼の程度を評価しますが,一般的にはCroweⅢ~Ⅳを高位脱臼として扱います.

Point2. 関節裂隙の狭小化

関節裂隙を測定すると関節軟骨の厚さを推定することができます.一般的には関節裂隙が3mm未満になると狭小買いが著しいと判断します.

Point3. 軟骨下骨の骨硬化像

変形性関節症が進行すると軟骨下骨が骨硬化を起こし,X線上の輝度が増します.大腿骨頭と寛骨臼が接触している部分が白っぽく映っているのがわかると思います.

Point4. 骨頭の扁平化

変形性関節症が進行すると大腿骨頭の圧潰が進み,丸みを帯びた大腿骨頭が扁平化してしまいます.大腿骨頭の扁平化は脚長の短縮にも繋がります.

Point5. 骨頭の骨嚢胞

変形性関節症が進行し末期をむかえると骨嚢胞が見られるようになります.骨嚢胞は循環障害によって起こるとされておりますが,骨が空洞化してしまい,X線上でも黒く穴が空いたような像が見られます.

Point6. 骨棘形成

骨棘については変形性股関節症の進行の中でも比較的早期から形成が見られます.寛骨臼蓋外側に見られるものはOsteoroofと呼ばれ,大腿骨頭の外上方偏位を防ぐうえで非常に重要な役割を果たす骨棘です.また大腿骨側に見られるCapital dropと呼ばれる骨棘も頻繁に見られます.骨棘というと「良くないもの」,「尖っていて痛そう」等といった印象を持たれる方が多いのですが,軟骨摩耗・喪失に対する代償的な反応としては非常に重要です.骨棘がうまく機能すれば関節症があまり進まなくて済む症例や,関節の不安定性が軽減され荷重時の関節痛が緩和されている症例も少なくありません.

 

寛骨臼(臼蓋)形成不全の評価

本邦では寛骨臼(臼蓋)形成不全を基盤とする二次性股関節症が圧倒的に多いので,X線上で寛骨臼形成不全を評価することも非常に重要です.寛骨臼形成不全の評価法としては様々な方法が報告されておりますが,使用されることが多いのがSharp角とCE(Center-edge)角です.

Sharp角

Sharp角は涙痕下縁と臼蓋側縁を結ぶ線と左右の涙痕下縁を結ぶ線とのなす角度を測定します.男性で38~42°,女性で43~45°が正常とされますが,40°以上になると寛骨臼形成不全と判断されます.世界的に使用されてきた寛骨臼形成不全の診断基準であるSharp角ですが,最近,診断価値があまり高くないことが明らかにされております.実はSharp角というのは骨盤の前後傾によって容易に変わってしまうのです.今後はSharp角が用いられることは少なくなるかもしれませんね.

CE角

CE角は骨頭中心を通る垂線と骨頭中心と臼蓋外側縁を結んだ線とのなす角度を測定します.20°以下であれば寛骨臼形成不全,20°~25°であれば境界型,25°以上であれば正常と判断します.

 

今回は変形性股関節症例におけるX線に味方についてご紹介いたしました.X線の読影についての能力を上げるにはとにかく今回ご紹介した視点に基づいて多くのX線を読影することでしょうね.

 

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