大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折の違い~同じ骨折だと思ったら大違い~

投稿者: | 2018年7月6日

 大腿骨近位部骨折の分類 

大腿骨近位部骨折の中でも大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折が多いといった話は前回の記事にも書かせていただきましたが,大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折ではその病態も全く異なります.

大腿骨近位部骨折の分類

わずか数cmの骨折部位の違いですが,理学療法を行う上ではこの違いを十分に理解しておくことが重要です.

 

 頸部骨折と転子部骨折の違い 

大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折の違いを表にまとめてみました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私もそうでしたが,実習でうちの施設へ来る学生に「頸部骨折と転子部骨折の理学療法はどちらが大変でしょうか?」と質問をすると,「頸部骨折です.骨癒合が得られにくいし,人工骨頭置換術が行われると脱臼の危険性も高いので…」といった回答をする学生が大部分です.

まずこの回答ですが残念ながら「No」なのです.

 

 頸部骨折と転子部骨折の血流の違い 

 

 

 

 

 

 

 

骨癒合を考える上では,大腿骨頭を栄養する血管の走行が重要となります.

大腿骨頭を栄養する内外側大腿回旋動脈・閉鎖動脈は頸部骨折で血流が阻害されやすく,そのために骨頭の栄養が阻害されてしまいます.一方で大腿骨転子部は血流が豊富な海綿骨組織から構成されるため,骨癒合には大変有利と言えます.

 

 

 頸部骨折と転子部骨折の骨膜性骨化の違い 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに骨癒合に関していうと転子部骨折の方が圧倒的に有利です.

骨が癒合するためには骨膜性の骨化が起こるかどうかが重要となりますが,関節包内の骨折の場合には関節内に骨膜が存在しないため骨膜性骨化が起こりにくいことが知られております.

一方で関節包外の転子部の骨折の場合,外骨膜による骨膜性骨化が起こりやすいのです.

 

 頸部骨折と転子部骨折の出血量の違い 

では大腿骨転子部骨折例の機能回復に不利な点は何でしょうか?

まず1つ目は骨折に伴う出血が多いといった点です.

大腿骨頸部骨折の場合には血流が乏しい部位ですのでそもそも骨折に伴う出血量が転子部骨折に比較して少ないわけです.

加えて関節包が損傷するようなGardenⅣ型の骨折を除いては骨折に伴う出血が関節包内でとどまりますので,大腿部への骨折に伴う出血成分の浸潤は少ないわけです.

一方で大腿骨転子部骨折の場合には,骨折に伴う出血量が多く(入院時に貧血により輸血が必要となるのも転子部骨折例の方が圧倒的に多いです),この出血の大腿部への浸潤が理学療法を考える上でも重要となります.

骨折直後は骨折に伴う出血成分は骨折周囲にとどまりますが,時間経過とともに大腿部へ浸潤します(下腿は弾性ストッキングを装着することがほとんどですので大腿部へ出血成分が貯留し大腿部が腫れた状況が起こります).

骨折後は臥位姿勢を強いられることがほとんどですので出血成分は大腿部の中でも後面へ浸潤していることがほとんどです.大腿骨転子部骨折例の骨折に伴う出血量を評価する上では大腿後面への皮下出血の浸潤状況を評価するとわかりやすいです.

この大腿部の腫れが可動域制限や筋力低下の原因になるだろうことは容易に想像できると思いますが,この点に関してはまた転子部骨折の記事で詳しくご紹介しますね!

大腿骨転子部骨折に対する手術療法と骨折型・術式別に見た起こりやすい機能低下

 頸部骨折と転子部骨折の骨膜由来の疼痛の違い 

2つ目は術後の疼痛です.

上述いたしましたが大腿骨頸部(関節包内)には骨膜が存在しませんので骨膜由来の疼痛が出現しにくいのですが,一方で転子部には骨膜がありますので骨膜由来の疼痛が出現しやすいといった特徴があります.

そのため術後の疼痛も圧倒的に転子部骨折例の方が強いことが多いです.

当然ながら術後の疼痛が強い転子部骨折の方が歩行獲得にも難渋することが多く,日本整形外科学会のまとめた大腿骨近位部骨折例の疫学調査でも頸部骨折に比較して転子部骨折例の在院期間が明らかに長期化しています.

ですので大腿骨転子部骨折例を担当した場合には痛みが強いかもな,大腿部が腫れていないかな,歩行獲得に時間がかかるかもしれないななどと考えるのが普通です.

 

 頸部骨折と転子部骨折の骨膜由来の年齢の違い 

加えて疫学のところでも書かせていただいたように,転子部骨折例の方が後期高齢者割合が高いので,当然術後の理学療法において歩行獲得に難渋することが多いわけです.

 

まとめると

 

①骨折に伴う出血量

②骨膜由来の疼痛

③年齢

 

この3つに大きな違いありますので,その辺りを十分に理解して理学療法を行う必要があります.

 

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参考文献

1) Wu JZ, Liu PC, et al.: A prospective study about the preoperative total blood loss in older people with hip fracture. ClinInterv Aging. 2016; 11: 1539-1543.

2)Smith GH, Tsang J, et al.: The hidden blood loss after hip fracture. Injury. 2011; 42: 133-135.

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