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梨状筋を効果的に伸張するにはどういった肢位が良い?
変形性股関節症例や人工股関節全置換術後例では梨状筋の柔軟性低下が問題となることが多いです.
梨状筋は股関節屈曲角度によって股関節回旋作用が変化するためストレッチングを行う際の適切な肢位がわかりにくい筋でもあります.
実際のところ梨状筋を効果的に伸張するにはどういった肢位が良いのでしょうか?
今回は梨状筋を効果的に伸張するにはどういった肢位が良いのかを考えるうえで参考になる論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
J Sport Rehabil. 2024 Apr 9:1-7. doi: 10.1123/jsr.2023-0240. Online ahead of print.
Effective Stretching Positions of the Piriformis Muscle Evaluated Using Shear Wave Elastography
Hikari Itsuda 1 2, Masahide Yagi 1, Ko Yanase 1 3, Jun Umehara 1 4, Hiyu Mukai 1, Noriaki Ichihashi 1
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PMID: 38593993 DOI: 10.1123/jsr.2023-0240
今回ご紹介する論文は2024年に掲載された論文です.
研究の背景
Context: Piriformis syndrome is often associated with muscle spasms and shortening of the piriformis muscle (PM). Physical therapy, including static stretching of the PM, is one of the treatments for this syndrome. However, the effective stretching position of the PM is unclear in vivo. This study aimed to determine the effective stretching positions of the PM using ultrasonic shear wave elastography.
梨状筋症候群は筋痙攣や梨状筋(PM)の短縮を伴うことが多いです.
梨状筋の静的ストレッチを含む理学療法はこの症候群に対する治療法のひとつであります.
しかしながら生体内での梨状筋の効果的なストレッチの肢位については不明であります.
この研究では超音波剪断波エラストグラフィーを用いて,梨状筋の効果的なストレッチ肢位を決定することを目的としております.
研究デザイン
Design: Observational study.
研究デザインは観察研究です.
研究の方法
Methods: Twenty-one healthy young men (22.7 [2.4] y) participated in this study. The shear elastic modulus of the PM was measured at 12 stretching positions using shear wave elastography. Three of the 12 positions were tested with maximum internal rotation at 0°, 20°, or 40° hip adduction in 90° hip flexion. Nine of the 12 positions were tested with maximum external rotation at positions combined with 3 hip-flexion angles (70°, 90°, and 110°) and 3 hip-adduction angles (0°, 20°, and 40°).
21例の健常若年男性(22.7 [2.4]歳)を研究対象としております.
剪断波エラストグラフィーを用いて,12の伸張肢位における梨状筋の剪断弾性率を測定しております.
12肢位のうち3肢位は,股関節屈曲90°で股関節内転0°・20°・40°の最大内旋位でストレッチングを行っております.
12肢位のうち9肢位は3つの股関節屈曲角度(70°・90°・110°)と3つの股関節内転角度(0°・20°・40°)を組み合わせたポジションで最大外旋をテストしております.
研究の結果
Results: The shear elastic modulus of the PM was significantly higher in the order of 40°, 20°, and 0° of adduction and higher in external rotation than in internal rotation. The shear elastic modulus of the PM was significantly greater in combined 110° hip flexion and 40° adduction with maximum external rotation than in all other positions.
梨状筋の剪断弾性率は内転40°,内転20°,内転0°の順に有意に高く,内旋よりも外旋の方が高い結果でありました.
梨状筋の剪断弾性率は股関節屈曲110°,内転40°,最大外旋の組み合わせで,他のすべての体位よりも有意に大きい結果でありました.
研究の結論
Conclusion: This study revealed that the position in which the PM was most stretched was maximum external rotation with 110° hip flexion and 40° hip adduction.
この研究結果から梨状筋が最も伸張される肢位は,股関節屈曲110°,股関節内転40°の最大外旋位であることが明らかになりました.
今回は梨状筋を効果的に伸張するにはどういった肢位が良いのかを考えるうえで参考になる論文をご紹介させていただきました.
股関節を最大屈曲,股関節を最大内転させた肢位でさらに股関節を最大外旋させることが梨状筋に対する効果的なストレッチングにつながりそうですね.