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ダイエット(減量)に効果的なウォーキングを行うためには履物が重要
理学療法士であればクライアントの歩行に関して様々な指導を行う機会が多いと思います.
ウォーキングに関してもさまざまな指導をされると思いますが,皆様はウォーキング中の履物に関してどのように指導をされていますか?
長期間,継続的にウォーキングを行うためにも障害予防の視点は非常に重要となります.
今回は理学療法士の視点でダイエット(減量)に効果的なウォーキングを行うためには履物について考えてみたいと思います.
つま先に10mm程度の余裕
まず重要なのが靴のサイズです.
歩行中には足は靴の中で5mm前後動くと言われております.
したがって5mm程度の余裕を持った靴を選択することが重要です.
10mm程度がちょうど良い捨て寸とされることもありますが,あまり靴が大きくなるとつまづきの原因にもなりますので,適切なサイズを選択することをお勧めします.
また普段から厚手の靴下を履くことが多い方は,靴下の厚みを考慮して15mm程度の余裕を持たせる場合もあります.
甲の部分で調整できる
靴が常にピッタリとあなたの足にあっている状態であれば,紐の無い靴でも問題ありません.
しかしながら靴下の厚みや体重の増減など常に足の状態というのは変化しますので,足の前後の動きを極力小さく抑えるためにも紐やマジックテープなどで調整できる靴を選びとよいでしょう.
しっかりとしたカウンター
歩行中に踵の骨は外側に倒れたり,もとに戻ったりを繰り返します.
専門用語で言うと踵骨が回外したり回内したりということになります.
動きの程度は人によってさまざまですが,外側への傾斜が大きい場合をオーバープロネーション,内側へ傾斜が大きい場合をオーバーサピネーションと呼びます.
この踵骨の動きが大きくなると,足部の障害が出現する原因になるわけです.
そのため靴には靴底やカウンターが施されているのが普通です.
靴の踵の部分が硬く作られているのはそのためです.
履物が歩行時のエネルギー代謝に及ぼす影響
履物によってエネルギー代謝も変わりますので,ウォーキングを行って効果的にダイエット(減量)を図るためには,履物の種類を考慮することも重要です.
履物が歩行時のエネルギー代謝に及ぼす影響を明らかにした研究をご紹介させていただきます.
この研究では,健常な女性10名を対象に裸足・靴・パンプスの条件下において,トレッドミルを使用して15分間の歩行を行い,呼気ガス分析装置によるbreath by breathにより運動直前・運動中の分時換気量・呼吸数・1回換気量・酸素摂取量を測定しております.
結果ですが酸素需要量はパンプス条件・靴条件・裸足条件の順に有意な高値を示しております.
これは履物の重さによるものであると考察されておりますが,履物の着用は歩行時のエネルギー代謝を増大させると考えられます.
消費エネルギー量だけを考えればパンプスを履いた方が,消費エネルギー量が増えて効果的にダイエット(減量)を行うことができるといった考え方もできますが,当然ながらパンプスを履いて長い距離を歩行すればさまざまな下肢の障害を発生させる可能性がありますので,適切な靴を履くのがダイエット(減量)効果を考える上では良いと思います.
また非常に履きつぶした靴,中等度に履きつぶした靴,新しい靴を履かせこの際の酸素摂取量を比較した研究によると,履き古した靴を履いた場合には距骨下関節の回外運動と下肢の外反が増加し,酸素摂取量は履き古した靴を履いた場合で新しい靴に比べて有意に大きいことが明らかにされております.
これはおそらく履きつぶしたつぶした靴は靴のカウンター部分がやわらかくなってしまっているので踵骨の運動をおさえられないためと考えられます.
これだけ考えると履きつぶした靴を履いた方が消費エネルギー量が増えて,ダイエット(減量)に効果的であるとも考えられますが,先ほどのパンプスと同様に距骨下関節の回外運動等のマルアライメントが強くなることを考えれば,カウンターがしっかりとした新しい靴を履いてウォーキングを行うことが勧められます.
参考文献
1)杉浦弘通,酒向俊治,太田清人,南谷さつき,小久保晃:履物が歩行時のエネルギー代謝に及ぼす影響.靴の医学23:25-28,2010
2)阿部薫,江原義弘,石黒圭応,小松聡子:運動負荷が効果的に増加するウォーキング用サンダルの開発.新潟医療福祉学会誌8:49,2008
3)Saito Seiji,Muraki Satoshi,Tochihara Yutaka:Effects of Worn-Out Soles on Lower Limb Stability, Shock Absorption and Energy Cost during Prolonged Walking.Journal of Physiological Anthropology26:521-526,2007
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