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新型コロナのワクチン接種後に運動をすると副反応が増強させることなく抗体反応を増加させる?
理学療法士・作業療法士であれば既に3回目の新型コロナウイルスのワクチン接種を終えられている方も多いと思います.
ワクチン接種後の副反応も程度は個人間で様々ですが,できれば副反応が大きくない方が良いですよね?
副反応って身体運動で増強するようなイメージがありますので,なんとなくワクチン接種後は安静にと考えがちですが実際のところはどうなのでしょうか?
今回は新型コロナのワクチン接種後に運動をすると副反応が増強させることなく抗体反応を増加させることを示唆する研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Brain Behav Immun. 2022 Feb 5;102:1-10. doi: 10.1016/j.bbi.2022.02.005. Online ahead of print.
Exercise after influenza or COVID-19 vaccination increases serum antibody without an increase in side effects
Justus Hallam 1, Tyanez Jones 2, Jessica Alley 1, Marian L Kohut 3
Affiliations expand
PMID: 35131444 PMCID: PMC8816799 DOI: 10.1016/j.bbi.2022.02.005
今回ご紹介する論文は2022年に掲載された論文です。
研究の目的・方法
Vaccination is an effective public health measure, yet vaccine efficacy varies across different populations. Adjuvants improve vaccine efficacy but often increase reactogenicity. An unconventional behavioral “adjuvant” is physical exercise at the time of vaccination. Here, in separate experiments, we examined the effect of 90-minute light- to moderate-intensity cycle ergometer or outdoor walk/jog aerobic exercise performed once after immunization on serum antibody response to three different vaccines (2009 pandemic influenza H1N1, seasonal influenza, and COVID-19).
ワクチン接種は公衆衛生対策として有効でありますが,ワクチンの有効性は集団によって異なります.
アジュバントはワクチンの有効性を高めることが知られております.
従来にない行動的な「アジュバント」は,ワクチン接種時の身体運動であります.
ここでは3種類のワクチン(2009年パンデミックインフルエンザH1N1,季節性インフルエンザ,COVID-19)に対する血清抗体反応に対す90分間の軽度から中強度のサイクルエルゴメーターまたは屋外でのウォーク/ジョグの有酸素運動の効果を,別々の実験で免疫後に1回実施し検討しております.
研究の方法・結果
Exercise took place after influenza vaccination or after the first dose of Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine. A mouse model of influenza A immunization was used to examine the effect of exercise on antibody response and the role of IFNα as a potential mechanism by treating mice with anti-IFNα antibody. The results show that 90 min of exercise consistently increased serum antibody to each vaccine four weeks post-immunization, and IFNα may partially contribute to the exercise-related benefit.
運動はインフルエンザワクチン接種後,またはPfizer-BioNTech COVID-19ワクチンの初回投与後に行われました.
A型インフルエンザ免疫モデルマウスを用い,抗IFNα抗体を投与することによって抗体反応に対する運動の影響と潜在的なメカニズムとしてのIFNαの役割を検討しております.
その結果,90分の運動は接種後4週間で各ワクチンに対する血清抗体を一貫して増加させ,IFNαが運動による効果に部分的に寄与している可能性があることが示されました.
研究の結論
Exercise did not increase side effects after the COVID-19 vaccination. These findings suggest that adults who exercise regularly may increase antibody response to influenza or COVID-19 vaccine by performing a single session of light- to moderate-intensity exercise post-immunization.
運動はCOVID-19ワクチン接種後の副作用を増加させませんでした.
これらの知見は定期的に運動している成人が,ワクチン接種後に軽度から中程度の強度の運動を1回行うことでインフルエンザまたはCOVID-19ワクチンに対する抗体反応を増加させる可能性が示唆されます.
今回は新型コロナのワクチン接種後に運動をすると副反応が増強させることなく抗体反応を増加させることを示唆する研究論文をご紹介させていただきました.
あくまで動物実験の結果ではありますが,軽度~中等度の運動を90分間行うことで副反応を伴わずに摂取後4週間での抗体反応を増加させることが示唆されるといった結果ですね.
これが本当であれば運動を制限するというよりはむしろ運動を推奨する必要があるということになりますね.