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理学療法士・作業療法士も注意したいAir入り良好という表現
理学療法士・作業療法士であれば聴診してクライアントの呼吸機能を評価する機会も多いと思います.
聴診後の評価結果の記録としてしばしば用いられるのが「Air入り良好」や「Air entry良好」などといった表現です.
ただこの「Air入り良好」や「Air entry良好」ってどうなのでしょうか?
今回は「Air入り良好」や「Air entry良好」といった表記について考えてみたいと思います.
「Air入り良好」や「Air entry良好」は何を意味するのか?
「Air入り良好」や「Air entry良好」というのは,一言で以下のようなことを表現できる便利言葉として使用されていることが多いと思います.
・音の増減なし
・大小,高低,左右差変化もなし
・副雑音(ラ音)なし
「Air入り良好」や「Air entry良好」と書いておけばとりあえず問題ないみたいな風潮があります.
「Air入り良好」や「Air entry良好」というおかしな表現
「Air入り」という用語は日本語訳すると「空気入り」と直訳できます.
ただこれって肺に関して考えると適切な表現とは言えません.
元来,肺胞呼吸音は吸気にしか聞こえません.
しかも肺胞呼吸音は気管支音に比べて小さいので,経験的には呼気も吸気も聴こえない場合が多いです.
心不全や肺炎で真っ白な肺でもコースクラックルが聴取できるのはまれですよね?
呼吸機能の低下している高齢者で聴こえなくても不思議ではありません.
つまり「Air入り良好」と表現されますが,肺の状態が良好な場合には音がしないことが多いわけです.
肺の状態が悪い状況であればあるほど空気で満たされているはずの肺胞が滲出液などを含むようになり,胸壁へ音を伝えやすくなります.
教科書レベルでも「肺Air 入り」といった用語が使用されていますので,これは怖いです.
肺Air入り良好と表現して換気が良いと判断しているケースがありますが,そもそも呼吸音の大小で換気の評価は困難です.
結局のと呼吸音の大小からは換気があるか無いかについてしか言及できません.
肺胞呼吸音と表記するのが間違いないと思いますけどね…
謎な表現も…
「Air入り良好」以外にも謎な表現がさまざま存在します.
・Air入りノーマル
・Air入りまずまず
最近では電子カルテの観察項目に「Air入り」という項目が設けられている病院もあると聞きますから,間違った表現も使われ続けると一般化してしまうのだなと感じるわけです.
今回は「Air入り良好」や「Air entry良好」といった表記について考えてみました.
理学療法士・作業療法士の皆様も「Air入り良好」といった用語には注意しましょう.