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運動を実践できない理由に関する興味深い調査結果紹介
理学療法士・作業療法士がクライアントに対して運動指導を行う機会は多いと思います.
しかしながら指導した運動ってなかなか実践してもらえないことが多くありませんか?
なぜクライアントは指導された運動を実践できないのでしょうか?
今回は運動を実践できない理由に関する興味深い調査結果をご紹介させていただきます.
運動指導を行ううえで1つのヒントになりそうな内容です.
今回ご紹介する論文
Scand J Prim Health Care
. 2011 Dec;29(4):234-40. doi: 10.3109/02813432.2011.628238.
Who is not adhering to physical activity referrals, and why?
Matti E Leijon 1, Johan Faskunger, PrebenBendtsen, Karin Festin, Per Nilsen
Affiliations expand
PMID: 22126223 PMCID: PMC3308466 DOI: 10.3109/02813432.2011.628238
今回ご紹介する論文は2011年に掲載された論文です.
研究の目的
Objective: To analyse patients’ self-reported reasons for not adhering to physical activity referrals (PARs).
この研究では症例が身体活動目標(PAR)を遵守できない理由を分析することを目的としております.
研究デザインおよび研究セッティング
Design and setting: Data on 1358 patients who did not adhere to PARs were collected at 38 primary health care (PHC) centres in Sweden.
スウェーデンの38のプライマリーヘルスケア(PHC)センターにおいて,身体活動目標を遵守できなかった1358例のデータを収集しております.
介入
Intervention: PHC providers issued formal physical activity prescriptions for home-based activities or referrals for facility-based activities.
プライマリーヘルスケア提供者は,家庭での活動に対しては正式な身体活動処方箋を,施設での活動に対しては紹介状を発行しております.
研究の対象
Subjects: Ordinary PHC patients whom regular staff believed would benefit from increased physical activity.
一般のプライマリーヘルスケアセンターを利用したクライアントで,身体活動の増加が有益であると考えられる者を対象としております.
メインアウトカム
Main outcome measure: Reasons for non-adherence to PARs: “sickness”, “pain”, “low motivation”, “no time”, “economic factors”, and “other”.
身体活動目標を遵守できなかった理由として,「疾病」,「疼痛」,「意欲低下」,「時間がない」,「経済的要因」,「その他」が挙げられました.
研究の結果
Results: Sickness and pain were the most common motives for non-adherence among older patients. The youngest patients blamed economic factors and lack of time more frequently than those in the oldest age group. Economic factors was a more common reason for non-adherence among those referred for facility-based activities compared with those prescribed home-based activities. Low motivation was a more frequent cause of non-adherence among those prescribed home-based activities compared with those referred for facility-based activities. Furthermore, lack of time was a more common reason for non-adherence among patients issued with PARs due to high blood pressure than other patients, while low motivation was a more common reason among patients issued with PARs because of a BMI of > 25.
高齢者では「疾病」と「疼痛」が身体活動目標を遵守できない理由として最も多い結果でありました.
また若い対象では,高齢の対象よりも経済的要因と時間がないこと身体活動目標を遵守できない理由として挙げておりました.
施設での活動を推奨された症例は,自宅での活動を推奨された症例と比較して,経済的要因がより身体活動目標を遵守できない理由として多い結果でした.
また意欲低下は,施設での活動を推奨された人に比べて,自宅での活動を推奨された人でより多く見られました.
さらに高血圧で身体活動量の増加を推奨された症例では,時間がないことが他の症例よりも多く,BMIが25以上で身体活動量の増加を推奨された症例では,意欲が低いことがより多くの理由となっておりました.
研究の結論
Conclusion: The reasons for non-adherence differ between patients prescribed home-based activities and referred for facility-based activities, as well as between patients with different specific characteristics. The information obtained may be valuable not only for the professionals working in PHC, but also for those who work to develop PARs for use in different contexts.
アドヒアランスが低下する理由は、自宅での活動を推奨された症例と施設での活動を推奨された症例の間で異なり,異なる特徴を持つ症例間でも異なることが明らかとなりました.
今回得られた情報は,プライマリヘルスケアで働く専門家だけでなく,さまざまな状況で使用するための身体活動量の増加を図ろうとしている指導者にとっても有益なものであると考えられます.
今回は運動を実践できない理由に関する興味深い調査結果をご紹介させていただきました.
やはり年代や症例毎の特徴によって運動を実践できない理由は異なるというのが興味深いですね.
こう考えるとわれわれ理学療法士・作業療法士もクライアントの個別性を考慮したうえで運動指導を行う必要がありそうですね.
運動指導を行ううえで1つのヒントになりそうな内容ですね.