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気象条件(気温・日照時間)が大腿骨近位部骨折発生率に影響を与える?
本邦では高齢化に伴い経年的に大腿骨近位部骨折は増加しております.
大腿骨近位部骨折って冬に多い印象があります.
冬というのは着物をたくさん来ていて身体が動きにくい場合が多いですし,寒さのために体が動きにくく転倒しやすい方も多いのでしょう.
でも気温や日照条件といった気象条件が大腿骨近位部骨折の発生率に関連しているのでしょうか?
今回は気象条件(気温・日照時間)が大腿骨近位部骨折発生率に影響を与えるかどうかを明らかにした研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Sci Total Environ. 2021 Oct 4;150774. doi: 10.1016/j.scitotenv.2021.150774. Online ahead of print.
Association of ambient temperature and sun exposure with hip fractures in Japan: A time-series analysis using nationwide inpatient database
Hisaaki Nishimura 1, Nobutoshi Nawa 2, Takahisa Ogawa 3, Kiyohide Fushimi 4, Takeo Fujiwara 5
Affiliations expand
PMID: 34619189 DOI: 10.1016/j.scitotenv.2021.150774
今回ご紹介する論文は2021年に掲載された論文です.
研究の背景・目的
Background: Evidence on whether meteorological conditions affect hip fractures (HFs) is limited. This study aimed to clarify the associations between ambient temperature and sun exposure and HFs in Japan.
気象条件が大腿骨近位部骨折の発生率に影響を与えるかどうかのエビデンスは限られております.
この研究では本邦における気温や日照時間と骨折との関連性を明らかにすることを目的としております.
研究の方法
Methods: Record of daily hospital admissions for HFs between 2015 and 2018 were extracted from a Japanese nationwide inpatient database. We conducted a time-series quasi-Poisson regression analysis using a distributed lag non-linear model with lag 0-39 days to estimate prefecture-specific relative risks (RRs) of HFs. We also estimated pooled RRs using random-effects meta-analysis.
2015年から2018年の大腿骨近位部骨折の入院記録を日本全国の入院患者データベースから抽出しております.
ラグ非線形モデルを用いて時系列の準ポアソン回帰分析を行い,大腿骨近位部骨折の都道府県別相対リスク(RR)を推定しております.
またランダム効果メタアナリシスを用いてプールされた相対リスクRRを推定しております.
研究の結果
Results: We identified 355,563 HFs. For mean temperature, immediate RRs (lag 0-2 days) were 1.349 (95% confidence interval (CI): 1.305, 1.395) and 0.754 (95% CI: 0.727, 0.782) for low (mean of the 2.5th percentile) and high (mean of the 97.5th percentile) mean temperature, respectively, relative to the reference (mean of medians). For sunshine duration, immediate RRs were 0.929 (95% CI: 0.913, 0.946) and 1.056 (95% CI: 1.029, 1.085) for short (mean of the 2.5th percentile) and long (mean of the 97.5th percentile) sunshine duration, respectively, and delayed RRs (lag 3-39 days) was 0.770 (95% CI: 0.696, 0.851) for long sunshine duration relative to the reference (mean of medians). Immediate RRs were larger for both exposures in patients admitted from home than in those from care facilities.
最終的に大腿骨近位部骨折例355,563例を解析対象としております.
平均気温については,基準値(中央値の平均)と比較して,平均気温が低い(2.5パーセンタイルの平均)と高い(97.5パーセンタイルの平均)場合の即時相対リスク(ラグ0-2日)は,それぞれ1.349(95%信頼区間(CI):1.305,1.395),0.754(95%CI:0.727,0.782)でありました.
日照時間については短い日照時間(2.5パーセンタイルの平均値)と長い日照時間(97.5パーセンタイルの平均値)では,基準値(中央値の平均値)に対して即時相対リスクがそれぞれ0.929(95%CI:0.913,0.946),1.056(95%CI:1.029,1.085),長い日照時間では基準値(中央値の平均値)に対して相対リスクが0.770(95%CI:0.696,0.851)でありました.
自宅から入院した症例では,介護施設から入院した患者に比べて,両曝露量の即時RRが大きい結果でした.
研究の結論
Conclusions: Lower mean temperature and longer sunshine duration were associated with immediate higher HF risks. Higher mean temperature and shorter sunshine duration were associated with immediate lower HF risks. These associations were modified by admission routes. Longer sunshine duration was also associated with delayed lower HF risks.
平均気温が低いことと日照時間が長いことは,直ちに大腿骨近位部骨折リスクを高めることと関連しておりました.
平均気温が高く,日照時間が短い場合は,即時的に大腿骨近位部骨折リスクが低いことと関連しておりました.
この関連性は入院経路によって相違がありました.
また日照時間が長いことも,低大腿骨近位部骨折発生リスクと関連しておりました.
今回は気象条件(気温・日照時間)が大腿骨近位部骨折発生率に影響を与えるかどうかを明らかにした研究論文をご紹介させていただきました.
やはり気温が低いと大腿骨近位部骨折が発生しやすいということですね.
日照時間については長い方がリスクが高いということでしたが,結局のところ明るい時間が長いと外出時間も長くなるので屋外での転倒リスクが増えるということでしょうか?