第9回日本運動器理学療法士学会開催前にチェックしておきたい演題紹介①

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第9回日本運動器理学療法士学会開催前にチェックしておきたい演題紹介①

第8回日本運動器理学療法学会は残念ながら中止となってしまいましたので,2年ぶりの学会開催となります.

第9回日本運動器理学療法学会はオンラインでの開催となります.

今回はこの第9回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から興味深い研究をいくつかご紹介させていただきます.

greyscale photography of skeleton

 

 

 

 

 

 

本邦における人工膝関節全置換術後の術後慢性仏痛の発症率の検討―多施設共同研究

 

研究の目的

人工膝関節全置換術(以下:TKA)の実施件数は,世界中で急速に増加しているが,術後患者の15~30%は術後慢性疼痛(ChronicPost-SurgicalPain:CPSP)を発症する.

しかし,本邦のCPSPに関する研究は単一機関のデータやサンプルサイズも小さいことから,TKA患者のCPSPの発症率は不明確である.

そのため,各医療機関からデータを収集し,多施設共同にてCPSP発症率を調査する必要性がある.

さらに,近年,術後患者の早期退院により,疼痛管理が不十分に陥りやすいため,術後1週間の疼痛強度からpain trajectoryを算出し,予後予測が行われている.

そこで,本研究では多施設共同研究として,TKA術後患者のCPSPの発症率とpain trajectoryとの関連性を検討した.

 

研究の方法

TKA術後患者650名のうち72名で欠損値があったため,578名(73.6±7.7,女性481名)を解析対象とした.

疼痛強度の評価は,Visual Analogue Scale(VAS),または,Numera lRating Scale(NRS)を用いた.

疼痛強度の評価は,術後1日,3日,5日,7日,1年後とした.

術後1日目から7日目までの仏痛強度を一次関数に近似させ,得られた近似式の傾き(=疼痛強度の改善程度)と切片(=術直後の疼痛強度)を算出した.

先行研究に従い,術後1年後の疼痛をVAS30以上,またはNRS3以上の場合をCPSPと定義した.

その後,CPSP群とCPSPなし(正常群)の2群の違いを対応のないt検定,またはマンホイットニーU検定を用いて実施した.

さらに,CPSPと各評価日の疼痛強度やpain trajectory(傾き,切片)との関連性をStructural Equation Modeling(SEM)を用いて重回帰分析を実施した.

モデル適合度は,Akaikes information criterion(AIC),Bayesian information criterion(BIC),Root mean square error of approximation(RMSEA)用いた.

有意水準は5%とした.

 

研究の結果

術後1年後に疼痛を有するCPSP患者は,56名(9.5%)であった.

正常群のpain trajectoryは,傾き-8.8±8.4,切片74.2±26,6.CPSP群は,傾き-1.8±7.2,切片63.7±28.0であった.

2群比較の結果,CPSP群の傾きは,正常群と比較して有意に小さかったが(p<0.05),切片に有意な差が認められなかった.

SEMを用いた重回帰分析の結果,pain trajectory(傾き,切片)が,術後1年後の疼痛強度を予測するモデルとして良好であった(AIC2051.09,BIC2072.587,RMSEA;p<0.05).

 

研究の結論

欧米を中心とした諸外国で示されているCPSP発症率は15~30%である一方で,本邦の発症率は9.5%と低値であった.

これらの違いは,退院日数や外来リハビリテーションの違いだと推測されるが,今後,検討が必要である.

Pain trajectoryにおいて,これまでに傾きが小さいほどCPSPが発症しやすいことが明らかになっており,本研究も同様に,CPSP患者は傾きが小さく,術後早期から遷延化していた可能性がある.

そのため,術後早期に評価し,疼痛マネジメントなどの早期介入が求められる.

 

感想

Pain trajectory(傾き,切片)という概念は初めて耳にしましたが,疼痛の程度よりも疼痛軽減の傾向が慢性疼痛へ移行するかどうかを考えるうえで重要だということを示唆する結果ですね.

これは理学療法士がTKA症例の疼痛評価を行ううえで知っておきたいポイントになりそうですね.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内側広筋に対する機能的電気刺激治療はvarus thrustを抑制するか?

 

【研究の目的】

Varus thrustは変形性膝関節症の発症や進行に影響を与えることが知られているが,これに対する理学療法介入に関する報告は我々の渉猟する限り見当たらない.

Varus thrustの要因の一つに内側広筋(以下,VM)の歩行時活動タイミングの遅延が報告されている.

一方,機能的電気刺激(以下、FES)は学習性不用状態の筋に対する機能改善効果が認められていることから,FESによりVMの活動タイミングを修正することでvarus thrustを抑制できる可能性がある.

そこで本研究の目的はFESの使用がVMの活動遅延を修正しvarus thrustを抑制するかについて検討することとした.

 

【方法】

対象は当院整形外科にて変形性膝関節症と診断された7名(Kellgren-LaurencegradeI:2名、II:5名)とした.

介入は,VMが踵接地前に収縮するよう設定されたFESを装着した状態での10分間の歩行練習とした.

介入前後にvarus thrustとVM活動開始点の評価を行なった.

Varus thrustの評価には,Vicon Nexus(Vicon Motion Systems社,Oxford,UK)を使用し,サンプリング周波数100Hzにて計測した.

赤外線反射マーカーはPlug-InGaitモデルに即し全身の35点に貼付した.

得られたデータよりvarus thrustとして,荷重応答期における膝関節最大内反角から最小内反角を減じた値と,膝関節伸展角度を算出した.

VM活動開始点の評価には,ワイヤレス筋電計DELSYS(DELSYS社,MA,USA)を使用し,サンプリング周波数1kHzにてVicon Nexusと同期して使用した.

被検筋はVMとし,床反力計から得られた踵接地点に対するVM活動開始点を算出した.

対象者は歩行速度を規定しない自由歩行とし,介入前後で測定した.

それぞれ3施行の中央値を採用し,各課題間で比較検討した.

なお症例数の不足により統計学的検討は実施しなかった.

 

【結果】

varus thrustは,自由歩行で3.7°から介入後2.2°と1.4°の減少を7例中6例に認めた.

膝関節伸展角度は自由歩行-9.0°から介入後-7.9°と2.1°の伸展角度の増加を7例中6例に認めた.

VM活動開始点は踵接地に対して,自由歩行で0.05秒前から,介入後0.24秒前で,全例に早期の活動を認めた.

 

【結論】

内側広筋は膝関節伸展運動と膝蓋骨を内側に牽引することで膝関節を安定させる機能を持つ.

膝関節は軽度屈曲位で内・外側側副靭帯が弛緩し膝関節が内・外反方向に動揺する.

本研究の結果より,FES装着によりVMが踵接地に対してより早く活動したことにより膝関節伸展角度が改善し,varus thrustが抑制された可能性がある.

 

 

 

 

 

 

 

感想

これまでにthrustを軽減するための方策として内側広筋のトレーニングの重要性は報告されておりましたが,こういった介入研究はありませんでした.

この結果から考えると内側広筋の筋力向上のみならず,活動のタイミングを改善させることが一つのポイントになりそうですね.

 

今回は第9回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から興味深い研究をいくつかご紹介させていただきます.

明日からもしばらく第9回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から興味深い研究をご紹介させていただきます.

 

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