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算定期限越えになってリハビリを継続するにはどうしたらいい?
理学療法士・作業療法士であればご存じのとおり,医療保険の疾患別リハビリテーションには算定期限があります.
年々,算定期限越えのリハビリテーションに対する扱いというのは厳しくなっていますよね.
ただクライアントの状況を専門的な立場から評価したうえで算定期限を超えて,リハビリテーションを提供したいといった場合も少なくないと思います.
今回は理学療法士・作業療法士も知っておきたい,算定期限越えになった場合にリハビリテーションを継続するにはどうすればよいかについて考えてみたいと思います.
疾患別リハビリテーションにおける算定期限
ご存じのとおり,疾患別リハビリテーションには以下のような算定期限が存在します.
脳血管疾患(180日)
運動器疾患(150日)
心大血管疾患(150日)
廃用症候群(120日)
呼吸器疾患(90日)
起算日は受傷日,または手術日が開始日となります.
この起算日から数えると90~180日しかリハビリテーションを実施することができないわけです.
例えば8月1日に転倒して,「大腿骨転子部骨折」と診断され,保存療法が選択されれば起算日は8月1日となります.
大腿骨転子部骨折の場合には,その多くが手術適応となりますので,その後に手術療法が選択され,8月4日に骨接合術を施行されたとします.
この場合には手術を行った8月4日が起算日となる訳です。
運動器疾患であればこの手術を行った8月4日から150日間は,原則として1日6単位の単位取得が認められますわけです.
ただし回復期リハビリテーション病棟入院料の算定患者,脳血管疾患等の患者のうちで発症後60日以内の患者,入院患者で病棟等において早期歩行・ADLの自立等を目的としてリハビリを行った(施設基準Ⅰ)の患者上記に当てはまる患者は1日9単位まで算定が可能となっております.
疾患別リハビリテーションの算定期限を超えたらどうなるの?
例えば先ほどの大腿骨転子部骨折でリハビリテーションを提供している場合に,手術から150日が経過したらどうなるのでしょうか?
基本的にはリハビリテーションの提供自体が困難になるわけですが,特例措置が設けられており,さらに継続してリハビリテーションを提供しようとすれば,1月に13単位までであればリハビリテーションを提供することが可能となります.
つまり,今までは毎日6単位介入していたのに,算定期限を超えた途端に週に1時間程度しかリハビリテーションを提供できなくなってしまうわけです.
期限を超えるまでは最大で週42単位の帝京が可能であったところが,3単位に減ってしまうわけですので,量としては10分の1以下のリハビリテーションの提供量になってしまうということになります.
こんな場合にはどうすればよいでしょうか?
実はいくつか対処法が考えられます.
疾患別リハビリテーションの算定期限を超えた場合の対処法
疾患別リハビリテーションの算定期限を超えた場合の対処法としてまず考えられるのは疾患名を変更するといった方法です.
先ほどの例で考えると大腿骨転子部骨折の手術から150日が経過したクライアントの場合には,医師に依頼し手疾患名を変更することでリハビリの期間を延長させることができます.
よくあるパターンとしては,
大腿骨転子部骨折→運動器不安定症
大腿骨転子部骨折→変形性膝関節症の増悪
大腿骨転子部骨折→廃用症候群
このように疾患名を変更することで,また150日間のリハビリ算定が可能となるわけです.
急性期から回復期と長期間にわたってリハビリテーションを継続してきた場合には,生活期や外来でリハビリをする際には算定期限を超えてしまうケースというのは少なくありませんので,こういった対処でリハビリテーションを継続するといったケースが多いです.
場合によっては,新たな診断の根拠となるX線・MRI・CT等の画像を残しておく必要があるでしょう.
また廃用症候群の場合には,「急性疾患等に伴う安静(治療の有無を問わない)による廃用症候群」であるため,運動器疾患や脳血管疾患による廃用として算定が可能です.
その際には治療開始時においてFIM115以下,BI85以下の状態である必要がありますので,算定が切れる前にしっかりとADL評価をしておくことが重要となります.
今回は理学療法士・作業療法士も知っておきたい,算定期限越えになった場合にリハビリテーションを継続するにはどうすればよいかについて考えてみました.
今回ご紹介したような抜け道についても,最近はレセプト算定でカットされることも少なくありませんので,理学療法士・作業療法士にとっても厳しい状況になっているのは間違いありませんね.